窓辺から零れる陽射しに起こされる静かな朝。昨夜のせんべろはどこへやら、今朝もすっきりとした心もちで目覚めます。今日はちょっとばかり雲が多め。もこもことした雲の上にはうろこ雲も広がり、昨日までとは空の表情が違うことを直感します。
今日は灼けた肌に優しい感じかな。去年出逢った八重山のパステルの記憶が甦り、そんなことを思いつつ朝食会場へと向かいます。
今朝もやっぱり、お気に入りの八重山の味を。にんじんしりやてびちのだしが染みたおでん、もずくのりにすっかりお気に入りとなったあら汁と、どれも白いご飯を誘う品ばかり。
案の定しっかりとご飯をおかわりし、〆にブルーシールとサーターアンダギーまで平らげ今日もやっぱり満腹に。ぱんぱんのお腹を落ち着けるため、恒例となった食後の散歩へ。今日はサザンゲートブリッジの少し先まで行ってみます。
橋を渡ると、南ぬ浜町と呼ばれる地区へ。トラックばかりが通る人工島ですが、橋のたもとには緑豊かな公園が整備されています。
言ってしまえば、周囲は殺風景な埋め立て地。ですが海辺へと近寄れば、そんなことすら忘れてしまうこの碧さ。珊瑚礁の織り成すあおの濃淡、遠くには薄っすら横たわるリーフをなぞる白い波。
そのすぐ隣には、市街地から一番近いとされる南ぬ浜ビーチ。人工ビーチですが真栄里同様きれいな白砂が敷かれ、2週間後の海開きを静かに待ちわびているかのよう。
何もない埋め立て地とうつくしい海という非日常の対比を愉しみ、踵を返してホテルへと戻ることに。風に吹かれてサザンゲートブリッジを渡っていると、橋上からはたった今波照間へと向け出港したフェリーはてるま2が。丸っこいかわいい顔してあの航路、凄いときにはやばいらしいんだよな・・・。
3年前に波照間島へ渡った時のことを懐かしく思い出しつつ、一旦ホテルへ戻り海支度。良き時間になったところで離島ターミナルへと向かい、『八重山観光フェリー』のちゅらさん2へと乗り込みます。
やっぱり竹富港路は穏やかだわ。大きな揺れもなくあっという間の約10分、2日ぶりの竹富島へと上陸。35歳のときに、僕が生まれて初めて知った離島の離島。この島へとやってくると、何故だか嬉しさとともに安堵感というものを覚えるように。
昨日は黒島で、そして今日は竹富で牛たちにご挨拶。渡る島ごとに牛と出会い、八重山がいかに畜産が盛んな地域なのかが伝わるよう。いつもは強烈な日射のもと佇む牛たちも、この柔らかな空色になんだかホッとしていそう。
やっぱり今日は、去年の前半のような空模様だ。全体的にうっすらと雲がかかり、鮮烈な青さではなく穏やかなパステルに。空の色が違うだけで、その下で揺れる草花たちの表情も変わってくる。
とはいえ、雲の切れ間から時折覗く力強さ。陽射しがぱっと世界を照らせば、それに呼応するかのように花の輝きは一層濃いものに。
一旦顔を出せば、一気に肌を灼く南国の熱射。汗を垂らしながら港目指して東の集落を進み、小中学校を過ぎると現れる大きな井戸。この仲筋井戸は、かつて島の貴重な水源として使われていたもの。底に溜まる僅かな水に、離島で真水を確保することの苦難に思いを馳せます。
山も川もなく、真水の確保が非常に難しい竹富島。海底を渡り石垣からこの島へと水道がやって来たのは、1976年のこと。半世紀近い風雨にさらされたタンクを建て替えるためか、すぐ隣では大掛かりな工事が実施されています。
海に囲まれた平たい島での暮らしの大変さに触れ、井戸を右折しはじめて行く道へ。右手に草むら、左手の高台には保育所。こんな場所あったんだと新たな景色に触れつつ歩いてゆくと、いつもは車を牽く水牛がひとときの休息を愉しむ姿が。
思いがけずオフの水牛さんに出会い、さらにその先目指して暑い暑いと言いつつ歩く道。それでもバスではなく徒歩でコンドイを目指すのは、道中を彩る竹富のうつくしさに少しでも多く触れていたいから。
道端に可憐に咲く、大輪のアマリリス。日々の暮らしでは「あぁ、きれいだな。」くらいにしか思わないけれど、この島では足を止めて近寄ってみたくなる。
それは旅先という気持ちの余裕からか、それともこの島を包む空気感がそうさせるのか。肌に感じる熱気や湿度、鼻をくすぐる南国の香り。南の島に満ちる世界観に身を委ね、海を目指す前から早くもこころを灼かれるのでした。
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