今日も迎える、石垣島での穏やかな朝。明日も明後日も、こんな朝が続いてゆく。8泊も滞在するとそんな錯覚に襲われてしまいますが、残念ながら最後の朝がやってきました。
でも今年は、本当にのんびりできたな。新たな島に出会うという新鮮な感動もあり、島での暮らしを疑似体験するかのようなゆるりとした時間もあり。緩急あった旅の濃さに、あっという間に最終日を迎えてしまった。
そして快適な滞在を叶えてくれたホテルミヤヒラとも、もうすぐお別れ。今朝も麩チャンプルーや油味噌、近海のお刺身にあら汁と、おいしい八重山の味でお腹と心を満たします。
部屋へと戻り、いつもの通り海支度。その傍らで、全ての荷物をまとめる寂しさ。8泊も過ごした部屋に漂う終わりの気配に、この旅での記憶が走馬灯のように甦る。
具志堅さん、今年も本当に良い滞在をありがとうございました。大好きな竹富島だけでなく、小浜や黒島で出逢えたそれぞれのあおさを、僕は死ぬまで忘れない。そして来年、また会いましょう。
交通至便、島での滞在を支えてくれたホテルミヤヒラをチェックアウトし、荷物をフロントに預け離島ターミナルへ。感動の地への船出を見守ってくれた具志堅さんに別れを告げ、『八重山観光フェリー』に乗り込みます。
この旅最後に目指すのは、やっぱり愛する竹富島。新造船のやいまが充当され、今日は2階の展望デッキも開放中。いつもとは違う視座で迎える出港の瞬間に、最後まで八重山を満喫しようと心に決めます。
港を出て、竹富へと向け加速を始めるやいま。海原の先には、西へと舵を取り疾走するあやぱにの姿。5日前、あの船に乗って初めての小浜へと渡ったのがつい昨日のことのように感じられる。
風に吹かれ、波しぶきの音を聴きつつ駆ける海。深い色から温かさを感じる碧へと変われば、地上の楽園へと近づいた合図。空模様や潮の干満で、様々な表情を魅せてくれる八重山の海。この旅で、一体どれほどの豊かなあおに出逢えただろうか。
薄曇りの優しい顔をした海を愛でつつ、爽快な船旅を愉しむこと約10分。間もなく迎える、今年最後の竹富上陸。滞在中何度も訪れたこの島で、最後の最後まで八重山時間を愉しみます。
この旅で、幾度も通ったこの集落。1年ぶりとなる再会でもすっと馴染んでしまい、日を追うごとに自分の中へと沁み込んでゆく。この島に流れるゆるやかな空気とのふれあいが、毎年こうして僕を誘う。
自宅から、遠く離れて二千キロ。年に一度の逢瀬なのに、その距離も時間も感じさせることなく僕を受け入れてくれる竹富島。こうして歩いていると、やっぱりこんな日々が続いていきそうだという錯覚が。
35歳のときに、初めて訪れた沖縄県。それが八重山で、石垣島で、そしてこの竹富島で本当に良かった。羽田から飛び立ちたどり着いたこの島で出逢った感動は、間違いなくその後の僕を変えてしまった。
溶けゆくように過ごしてきた、八重山での豊かな日々。そんな感慨に耽りつつうつくしい集落を歩き、『そば処竹乃子』へと到着。初日からお休みしており途中でその期間も伸びていたので心配しましたが、ようやく旅の最終日に訪れることができました。
この日は土曜日、ずっと休業していたこともあり開店直後からすでに順番待ち。名前を書き待つこと20分ちょっと、思ったよりも早く席に着くことができました。
運よく空いたのは、僕の大好きなテラス席。大きな日傘に守られた日陰に吹き渡る、涼しい島の風。天然の清涼を感じつつ味わうオリオンビールは、それは旨くないはずがない。
そんな冷たい至極の供にと頼んだのは、もずくの天ぷら。外はカリっと、中はふわもち。沖縄ならではの存在感ある衣に抱かれたもずくからは、ほんのり漂う海の香りと旨味。魚の天ぷらとともに、すっかり大好物の仲間入り。
そしてお待ちかねの、この黄金コンビ。1年ぶりとなる再会に、思わず笑みがこぼれてくる。
まずは八重山そばの澄んだスープから。口に含んだ瞬間、じんわりと穏やかに広がるだしの旨味。どれかの風味が目立つことなく、全体の調和がとれた優しい味わい。その円い表情に、思わず胸の深い部分から吐息が出てしまう。
程よく食べごたえのある麺は平打ちで、ずるっと啜ればちょうど良い塩梅でおいしいおだしを連れてくる。乗せられた豚肉も濃すぎず薄すぎずの滋味深さで、穏やかな一杯の中良いアクセントに。
もはや、食べるポカリスエット。そう形容したくなるほどの浸透率の高さに酔いしれ、続いてじゅーしーを。素材の旨味が行き渡ったご飯に、南国の香りを添えるピィヤーシの葉。ピィヤーシやコーレーグースを加えたそばのおつゆとの相性は言わずもがな、幸せな往復が止まらない。
最終日にして、ようやく念願叶い再会を果たした竹乃子。生まれて初めて口にした本場の沖縄料理が、ここだった。僕にとってのかけがえのない想い出の味は、今年もこうして僕を優しく包んでくれるのでした。
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