1年ぶりに石垣島で迎える朝。今日は一日、雨と曇りを行ったり来たりの予報。どんな空が広がっているのだろう。そう思いカーテンを開けてみると、接近する台風の方角へと流れゆく厚い雲。

もともとこんな予報だったので、今のところ今日の予定は空っぽ。とりあえず、朝ごはんを食べにお隣のホテル棟へ。そう、ここThe BREAKFAST HOTEL PORTO石垣島は、その名のとおり朝食にかなり力を入れているお宿。
今年はいったいどんな品々が迎えてくれるのだろう。そう期待しつつレストランへと向かえば、やっぱりおいしそうな品々がずらりとたくさん。いろいろと目移りしますが、記念すべきこの旅一発目は王道のご飯とおかずの組み合わせに。
爽やかな苦味を活かすおだやかな味付けのゴーヤチャンプルー、白身はぷるぷる赤身は凝縮感ある旨さの皮つきのラフテー。豚みそ炒めはこく旨で、やんばる鶏の手羽元は夏野菜とともにほどよい甘辛さのチリソース煮に。
粒マスタードのきいた人参とパパイヤのラペや、ブロッコリーと卵のサラダといった副菜もどれも丁寧な味付け。そしてうれしいのが、石垣牛のローストビーフが毎朝並ぶこと。しっかりとサシの入ったお肉はやわらかく、脂の甘さと赤身の旨味が舌の体温でふわっと広がってゆく。
汁物はお味噌汁やスープもありますが、やっぱり石垣に来たら食べたい八重山そばを。しょうゆベースのおつゆにピィヤーシとコーレーグースの華やかさが加わり、やっぱりこの感覚なんだよなと1年ぶりのしあわせがこみ上げる。

ここのお茶碗は小丼ぶりサイズのため、1杯目でも結構満腹に。でも試してみたいという欲望には勝てず、つづいてチキンカレーを。去年は結構辛かった記憶がありますが、今年は食べやすいほどよい辛さに。ココナッツが適度に香るまろやかさで、これまたするするとさじが進んでしまう。

今年も安定の喰いすぎ確定だな。そう思いつつも、デザートは別腹。自家製という黒糖パンナコッタは、キャラメルのような香ばしさとほどよい甘さが美味。
そして沖縄といえばのブルーシールアイスは、今朝はシークヮーサーシャーベット。しっかりとした酸味、そこにほとばしる青い爽やかさ。口をさっぱりとさせてくれ、おいしい朝ごはんの〆にぴったり。

自室へ戻り、重たいお腹を抱えてベッドにごろり。うつらうつらと眠気に揺蕩いつつ、ぼんやり過ごす食後のひととき。こんな時間が流れていても、もったいないとすら思わなくなった。本当に、なんだか暮らす練習にでも来ているみたいだ。

ベッドでうだうだしつつお昼をどこで食べるかを決め、10時過ぎに出かけることに。曇天の港を眺め、その足で日本最南端のアーケード商店街であるユーグレナモールへ。明日の欠航が決まっているからか、近日中に帰る予定の人はもう島から離れたのかもしれない。こんなに人が少ないのは、あの夏以来かも。

ユーグレナモールやゆらてぃく市場でおみやげ候補を眺め、旧市役所前の道を新川方面へ。荒引橋と書いてあらぴけー橋という変わった読み方の橋の近くでは、霞みつつも海上に横たわる竹富島の姿が。

さらに先へと進んでゆくと、広々とした舟蔵公園へ。今日はあいにくの曇り空ですが、晴れた日には青い芝生と鮮烈な海の碧さの対比がとてもきれいな場所。

降りそうで降らない空模様を気にしつつ歩いてゆくと、葉擦れの音を奏でるさとうきび畑。この音を聴くと、十年前に初めて沖縄八重山と出逢ったあの旅を今でも思い出す。

市街地からのんびり歩くこと40分ちょっと、古民家で八重山の郷土料理が愉しめる『舟蔵の里』に到着。ここを訪れるのは4年ぶり。古き良き八重山の包み込むような雰囲気が、そんな歳月など忘れさせる。

一歩足を踏み入れれば、渋い色味に染まる空間。冷たいオリオンをのどへと流しつつこの世界観に揺蕩えば、ふるさとのようなぬくもりがふっとこころに満ちてゆく。

4㎞ちかく島ぞうりで歩いたごほうびを噛みしめていると、お待ちかねの八重山すばが到着。いろいろ食べたいものがありつつ、やっぱりお昼はこれになってしまうんだな。
そんな毎日でも食べたくなる八重山そば、まずは琥珀色のおつゆから。うわぁ、沁みる。胃へとたどり着く前に、五臓六腑へと吸収されてゆく。おだやかながらしっかりと厚みのある豚のだし、そこにさらに重なり溶けあうかつおの風味。やさしくも、濃くて深い。この味は、どうあがいても東京では出逢えない。
至福の味にふた口三口とおつゆを味わい、つづいて麺を。ほどよい弾力をもつ歯切れのよい麺はぷりぷりとワシワシ、両方の食感をあわせ持つ八重山独特なもの。おだやかなおつゆを邪魔することなく、なじみが良くも食べごたえもある。
きゅっと煮しめられた豚肉をときおりはさみつつ、麺とおつゆの反復が止まらない。でもちょっと待て、ほどよきところでピィヤーシを入れなければ。独特な風味が鼻をくすぐり、より一層南国感ある味わいに変化。
そして満を持して加える、コーレーグース。潔い辛さと泡盛の華やぎを与えるこの数滴が、八重山そばを完成させるといっても過言ではない。

いつもの僕ならここに大好物のじゅーしーを付けるところですが、今回は相方さんとふたりしてずっと気になっていたうなぎを食べることに。ランチメニューにうなぎまぶし丼があったので、それを注文し分け合います。
そもそも、石垣島のうなぎは関東風なのか関西風なのか。はじめてこのお店を訪れて以来、ずっと興味津々。運ばれてきた丼を見てみると、どうやら関西風のよう。
ぱりっと香ばしく焼かれたうなぎ、そこに染みこむ甘すぎずのすっきりめのたれ。のりや大葉の香りもいいアクセントとなり、これなら暑いこの島でもぱくぱくと食べ進められる納得の旨さ。

郷土料理もいいし、八重山すばの引力も凄まじいものがある。でも今度はうな重も食べてみたい。そんな再訪の口実を、満足感とともに抱えて歩く帰り道。ときおりぱらぱらとはきていたが、ロイヤルマリンパレスの前でやり過ごせないほどのスコールが。
これは傘を持ってくるべきだったか。そう思いつつ雨宿りすることしばし、雨は小降りになりついに雲の合間には青さも覗くように。
台風は、ただいま石垣島の東を北上中。思い返せば、この雨が僕らの夏を連れてきた。明日からあおい日々が繰り広げられるともつゆ知らず、覗いた陽射しに輝く南国の花を目を細めて見上げるのでした。



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