石垣島で迎える7回目の朝。今日は一日雨の予報。明け方に目が覚めたときには雨音が聞こえていましたが、いまは上がっているみたい。

雨が止んでいるうちにと、朝食をとるため隣のホテル棟へ。ここの朝ごはんを食べられるのも、あと2回。どんなメニューにしようかと悩みましたが、今朝は海鮮丼を愉しむことに。
もっちりと瑞々しいまぐろの赤身、そのまぐろから取ったとろりと旨味の詰まったねぎとろ。ねっとりとした甘いセーイカに、ほどよい脂のりと筋肉質な歯応えがうれしいひらまさ。どれも近海ものばかり、こんな贅沢が朝から許されるなんて旅先だからこそ。
そして今朝の汁物は、気分を変えて野菜たっぷりのミネストローネを。じんわり溶け出た具材の旨味をやさしい塩味がまとめ、おだやかな旨さがお腹にやさしく沁みてゆく。

本当に、ここのホテルは何を食べてもおいしいんだよな。そんな贅沢な時間の〆には、もちろんデザートを。ふるりとなめらかなパンナコッタを彩る、自家製の塩キャラメルソース。ほんのりと塩気のある甘味とほろ苦さが、食後の余韻を豊かにしてくれる。

ベッドでいっぱいになったお腹をごろごろと落ち着け、11時前に一旦外出。目指すはホテルから歩いて近くにあるサーターアンダギー専門店、『さよこの店』。実は昨日14時過ぎに行ったのですが、ちょうど目の前で売り切れたため再チャレンジ。

時間ごとに、順次5種類のフレーバーを揚げてゆくこのお店。訪れたときはプレーンと紅いもの2種類ができており、もちろんどちらも購入。
コンド棟のサーバーでコーヒーをもらい、自室に戻りいざ揚げたてを。まだ温かいサーターアンダギーは、外はさっくり中しっとり。やさしい甘さと小麦粉の香りが広がるプレーン、そこにほどよい芋感を香らせる紅いも。去年に続き2度目ですが、もっと早くに買ってみればよかった。

おいしいサーターアンダギーを味わい、ひと息ついたところで昼食を。市街地でお昼を食べられるのも今日が最後。どこにしようかと悩みましたが、ユーグレナモールの一画に佇む『真仁屋そば屋』にすることに。

渋い佇まいの店内でラジオを聞きつつ待つことしばし、お待ちかねの八重山そばとジューシーのセットが運ばれてきます。
良い香りが立ちのぼるどんぶりを持ちあげ、まずはおつゆから。その色味のとおり、しょう油を感じるしっかり目の味付け。その奥にはじんわりと深みのある旨味がどこまでも広がり、これが豚だけで取られたスープだというのだから驚き。
麺は八重山らしい、わしわしと食べごたえのある魅惑の食感。おつゆに絡みつつしっかりと風味を楽しめる存在感ある麺は、本当にこの地でしか味わえない特別なもの。
そんな滋味あふれる組み合わせを一層旨くしてくれるのが、たっぷりと載せられた具。ぎゅっと凝縮感ある豚の赤身、ほんのりとした甘さと魚の風味がうれしい八重山かまぼこ。どちらもしょう油で煮しめられ、噛むごとにじんわりとした味わいが染み出てくる。
ここのおそばは、やっぱり他とはちょっと違うんだよな。豊かな味に一気に平らげそうになりますが、一旦箸を止めてピィヤーシを。すると一気に薫る、南国の風。それを数口愉しみつづいてコーレーグースを加えれば、完成された旨さに思わずため息がもれてしまう。
そんな素朴ながら懐の深さを感じさせる八重山そばもさることながら、ジューシーもまた格別。
どうやったら、こんなにやさしくも深い味が出せるのだろう。そう考えてしまうほどの滋味に、南国の香りを添えるピィヤーシの葉。そこへおつゆで追いかければ、永遠に食べ続けていたいと思えるような幸せが口いっぱいに広がってゆく。
旨いよなぁ、本当に旨いよなぁ。大正時代から続くこのお店ならではの一杯に、何度もため息をもらしつつあっという間に完食。100年以上の歴史を最後の一滴まで味わい尽くし、お腹もこころもぬくもりで満たされお店を後にします。

お土産の買い忘れがないかとユーグレナモールを眺めたり、日本最南端のお店で沖スロ打って案の定負けたり。そんなことをしつつホテルに帰り、降る雨の音を聞きながら過ごす午後。
なんだか、この島で暮らしているみたいだな。そんな良からぬ感情に揺蕩いつつ怠惰に身を委ねていると、あっという間にもう夕方に。予約していた時間にあわせて部屋を出て、『本格炭火焼肉わたなべ』へと向かいます。

コースを頼んでからアラカルトをということなので、まずは新生わたなべコースを注文。シークヮーサーを絞ったオリオンの鮮やかな旨さに感嘆していると、本日の前菜サラダが運ばれてきます。
甘いミニトマトに、爽やかな苦味がうれしいゴーヤ。食感と風味の豊かなにんじんに玉ねぎと、新鮮野菜がたっぷり。そんな野菜や海ぶどうを彩るのは、特製パイン酵素ドレッシング。食を進めてくれる甘酸っぱさが、この旅で日焼けした心身をここちよく鎮めてくれる。

お肉のお供にと、カクテキを注文。カリサクっと噛んでみれば、思わず唸ってしまう旨さ。日本最南端のキムチ屋さんとして去年オープンしたという、宮良キムチというお店のものだそう。辛味と旨味、そして大根の味わいのバランスがとっても僕好み。

コースの序盤は、店員さんが焼いてくれるスタイル。まずはじめに焼かれた石垣産和牛上タンは、さっぱりとシークヮーサーぽん酢で。噛めば広がる牛らしい豊かな甘味に旨味、でもそれがしつこくないのが石垣牛のすごいところ。
つづいて、ミスジにトモ三角、赤身と薄切り肉をさっと焼きしゃぶ焼きすきに。黒糖を使った割り下と卵黄、塩にわさび、自家製のたれと店員さんのおすすめに従って味わうそれぞれの部位。どれもしっかりと石垣牛の良さが感じられ、普段自分では頼まないような食べ方ができるのも新たな発見があってまた楽しい。

後半は、焼肉用にカットされたお肉を自分で焼く形に。濃い赤身にほどよくサシの入ったロースは、その見た目通りしっかりとした肉の旨味が美味。

つづいては、ランプの上側の部位だというランボソ。しっかりとした霜降りのお肉は、噛めばじゅわっとあふれる肉汁と豊かな脂の甘味が堪らない。でもそこはやっぱり石垣牛。旨さの余韻を残しつつ、さっと上品に流れてゆく。

コースの最後にと運ばれてきたのは、石垣牛シマチョウ辛味噌和え。ぶりんぶりんに詰まった甘い脂、それを香ばしく華やげる味噌のコクと旨味。これはもういくしかないと、ビールを飲み干しご飯を注文。

コースでさまざまなお肉の味わい方を愉しみ、さらにこの2品をアラカルトで追加。
赤身のぶつ切りは、しっかりと凝縮された赤身の旨味と脂のバランスが絶妙。そしてやっぱり外せない、大好物のレバー。ほどよく火を通せば、ぶりんとした食感に込められた豊かな甘味。旨い牛は、肉のみならず内臓もやっぱり最高だ。

あらたなお肉の愉しみ方に大満足し、お腹も味覚も満たされお店を後にすることに。滞在中、何度も通った730交差点。その煌めきをこうして見られるのも、この旅ではこれが最後か。

7泊もしといて、バチが当たるぞ。自分でもそう思いつつ、最後の夜はどうしても切なさがこみ上げてくる。
でもいいんだ。この島は、僕らをいつでも迎えてくれる。はじめて訪れた十年前。あのときは、こんなに何度も帰ってこられるなんて思いもしなかった。遥か遠く感じた八重山も、いまでは次が必ずあると確信できる。
今年も本当に、善き夏でした。ありがとう八重山、来年また必ず帰ってきます。気を抜くとあふれ出そうになる感傷を、そんな想いと誓いでぐっと呑み込むのでした。



コメント