P-BLUE。何それ?と言われそうですが、その通り。僕の勝手な造語。
Pは、premium,precious,perfectなどのP。人生半ばにして、生まれて初めて目にした青の数々。この旅は、あおかった。ただそのひと言に尽きる。
ブログを始めてもうすぐ9年。その中で飛行機が登場したのは数えるほどしかありません。そんな飛行機の写真から、旅行記を始めたいと思います。
最後に飛行機に乗ったのは何年前だろう。その時はスキーで利用し、いつもJALだった。だからANAに乗るのなんて、10年以上振り。
そんな記憶の糸を辿りつつ羽田空港の搭乗口へと向かってみると、そこに駐機していたのは、僕の天敵767。新千歳からの帰り、何度こいつに肝を冷やされたことか。僕はてっきり最新鋭の787だと思い込んでいたので、すっかりテンションはがた落ちに。
でもやっぱりそこは乗り物好きの性。嫌だ嫌だも好きのうち。滑走路に辿り着き、キ~ン、ゴォ~、ふわっ!と飛び立てば、もう気分は最高潮。飛行機って、色々考えて乗るまでは嫌な乗り物。でもこうして空へと飛翔できるなんて、やっぱり浪漫の塊のような乗り物。
陰気な雲に覆われた羽田を離陸し、急旋回を交え急上昇する767。先程の写真では粒のように見えていた日本最高峰も、いつしか翼の真下に黒々とした裾野を広げています。
そしてその奥には、分厚い雲を蹴散らすように横たわる、日本アルプス。富士は日本一の山。その歌詞そのままの光景が今、肉眼に飛び込んでくる幸福。
雲海と顔を覗かせる峰々を見送り、飛行機は空気を蹴って更に速度を上げてゆきます。気が付けば広がる雲も消え、翼の下には伊勢湾と中部国際空港が。
海も青、陸も青く、空も青。地平線が薄い膜のように円弧を描き、空との境界を辛うじて区切ります。
トリトンとモヒカン、2つのブルーに彩られた全日空の飛行機は、紀伊半島でついに陸地に別れを告げ、ひたすら広がる海の上を快適飛行。
空の青さはいつしか成層圏、更には宇宙を感じさせる色に変わり、いつもの札幌までの短距離飛行では味わえない高度感に。やっぱり飛行機、大好きすぎる!!
というのも、今日のフライトは初めてと言ってもいいくらい、揺れの無い安定した快適な飛行。空に浮いていても、眼下に雲を眺めても、それすら嘘のように感じられる、平和な時間。
すっかり機嫌を良くした僕は、ここで朝の栄養補給。生まれて初めてコールボタンを押し(何故か緊張)、機内販売のビールを注文。今飛行機は九州の南を飛行中。こんなに飛んでもまだ半分。今日は存分に空の旅を楽しめそうです。
そう言えば、先程書いた全日空という言葉。もうすっかり使わなくなってしまったみたいですね。いつの間にか機体から消え、替わりに書かれたANA。僕は小さい頃は必ず全日空に乗り、大好きな航空会社でした。その頃は、ANAもエーエヌエーではなく、アナと呼んでいました。
その後JALばかり使うようになり、久々に乗ったANAの飛行機。飛行機自体久しぶりですが、JALとANAの感じの違いがあるのもまた、おもしろい。日本を代表するエアライン2社なので、どちらに乗っても大差はありません。でもきっとその小さな違いが、自分のお気に入りへと繋がってゆくのかもしれません。
な~んて、大した搭乗経験も無い癖にと、飛行機マニアに怒られそうな考えを巡らせているうちに、洋上に浮かぶ島影がちらほら。目指す石垣はまだまだ先ですが、奄美の島や沖縄の島が見えては流れ、見えては流れ、を繰り返します。
ここまで来ると海の名前も変わり、東シナ海とフィリピン海。ついこの前まで、僕には遠すぎると思われた名前の大海原。明らかに違う色をした海の上を飛んでいる不思議。自分が何故今ここに居るのか。生きてきた中で出会ったことの無い色彩に、すでに何が何だか判らなくなりつつあります。
いくつもの島を見送り、沖縄本島を過ぎて更に400km。飛行機は高度をぐんぐんと下げ、ひときわ大きな島と、それを取り巻くエメラルドグリーンの帯が見えてきました。
その帯がサンゴ礁だと気付いたのは、しばらく時間が経ってから。だって、特別なものだと思っていたサンゴ礁が、島をぐるっと囲んでいるなんて。
この眺めを見られただけでも、ここまで飛んできた甲斐があった。嘘ではなく、このまま羽田に引き返しても悔いが無い。そう思ってしまったほどの、感動の初対面。
唸っていたジェットの音も低くなり、ふわりふわりと明らかな着陸態勢へ。先ほど目にしたサンゴ礁の余韻が今でも続き、あの宝のような美しい帯に囲まれた島に降りるんだ、そう思うだけで夢見心地。
そんな僕の気持ちと同じく、飛行機はふらふらと地面へ近付いてゆきます。眼下の畑が大きくなるにつれ、サンゴ礁の帯は細くなってゆき、ついに飛行機は轟音と共に着陸。
羽田から3時間足らずの空の旅。車輪の振動もどこか他人事のように、未だ目に映るもの全てが夢のよう。僕にとって初めての沖縄。それがよりによってこんなに美しい島だなんて。
無事に着陸したことよりも、初めての世界に放り出される期待感に鳥肌が立ち、ベルトサインが消える瞬間を、今か今かと待ちわびるのでした。
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