沖縄で過ごした3泊4日ももうまもなく終わり。濃厚かつ楽しい時間は、あっという間に過ぎてしまうもの。台風が行き去った後の湿った温い風を展望デッキで浴びていると、僕らを東京へと連れ戻す飛行機がスポットへとやってきました。
今回僕らを運ぶのは、最新のB787。運行前から色々と言われてはいるようですが、僕は密かにずっと乗ってみたかった飛行機。
その理由は単純、直感的にかっこいいから。というのも、曲線を描く翼や波型をしたエンジン後部など、これまでの飛行機には無いしなやかさのようなものを感じられるから。のりものって、直感的にかっこよくないといけないのです。僕の中では、の話しですが。
機内へと入ると、まず驚くのが空間の広さ。行きに乗った767と同じ中型機に分類されますが、狭さはあまり感じません。というより、ジャンボや777のような大型機よりも広く感じるかも。
それは壁が白や水色といった明るいトーンでまとめられているという理由もあるでしょうが、何より実感するのが天井の高さ、そして広さ。
これまでの飛行機は、荷物棚がいかにも天井にぶら下がっている感があり、そのでっぱりが圧迫感と不安定感を与えていました。頭上に重たそうなものがあれば、誰だって落ち着きません。
ところが787の荷物棚は、アーチを描く天井と連続したようなカーブを描くデザイン。これまでの飛行機には無い開放感があります。
777よりも新しい飛行機に乗ったのは初めてでしたが、僕の乗らないうちに飛行機のインテリアって、こんなに進化していたんですね。驚きです。
全日空787型機はエプロンを離れ、空港の端まで移動し、エンジンの出力を高めます。音と振動と共に始まる滑走。瞬間、地から足が離れる感触があり、ターミナルの奥に横たわる海が大きくなってゆきます。
787の翼は空へ浮くと写真の通りものすごくしなり、初めて見ると少し心配になりそうなほど。でもそのしなりこそが、この後のフライトの快適さに影響してくるのです。
帰りは終始雲の中の飛行。途中ベルトサインがしばらく点くこともあり、見るからに快適に飛ぶには向かなそうな天気。地上からの積乱雲がポコポコ顔を出していました。
確かに少しだけ揺れました。それはどんな飛行機でも気流が悪ければ仕方のないこと。荒い波の上の船に揺れるなといっているようなもの。
でもその揺れ方が違う。この飛行機、凄い!と、揺れたからこそ思ったのかもしれません。飛行機マニアではない僕が乗ってもその差は歴然。
姿勢制御や乱気流の予測などの技術進歩もあることでしょうが、この翼のしなやかさこそがこの飛行機の乗り心地をつくっているのです。
これまでの飛行機は見るからに堅い翼。窓際に乗り眺めていると、気流によってびりびりと小刻みに激しく振動する様子が見えます。その振動が機体にもダイレクトに伝わり、居心地の悪い振動につながります。僕はあれがきらい。
ところが787の翼は、ものすごくしなる、しなる、しなる。見ていて飽きないほど動くのです。つまり、その翼自体がサスペンションの役割を担っているということ。
車輪を持たない飛行機は、翼が走行装置であり、緩衝装置。車に例えると、堅い翼の飛行機は板バネ式で、この787はエアサス、といったところ。衝撃を程よく吸収し、やんわりと機体に伝えるのです。
終始天候の良くなかったフライトでしたが、緊張感は全くなく、僕以上に飛行機嫌いの相方さんも普通に乗っていました。ゆったりとした揺れのこの飛行機なら、また乗ってどこかに出かけられるね、なんて話しをしたほど。
なんだか787べた褒めの記事になってしまうところでした。それほど安心して乗れたということ。これならまた気兼ねなく沖縄に来られそうです。
飛行機は南ぬ島石垣空港を離陸し、急上昇を始めます。羽田を発ったときにはあれほど心躍った空への上昇も、今はただただ寂しいばかり。眼下には、僕の後ろ髪を思いっきり引っ張るつもりなのか、あの美しいエメラルドグリーンの帯が見え始めました。
出発時は丁度干潮の時間帯。石垣島の輪郭を描く珊瑚礁は、レースのような白い波で縁取られています。
その美しい島の姿がどんどんと下へと離れてゆくにつれ、この4日間は幻想、夢だったのではないか、そんなことすら感じます。それほど、これまでの僕の人生にはなかった、初体験だらけの4日間。
現実離れした、美しい島、沖縄。竹富島から石垣島へと、僕の初沖縄は完璧すぎる経験となりました。
P-BLUE。冒頭にも書いた通り、僕の勝手な造語です。プレミアムで、プレシャスで、パーフェクトな青さ。僕のこの4日間には、無限に広がるそんな青のグラデーションが思い切り詰まっていました。
そして沖縄から持ち帰ってきたお土産がもうひとつ。それは僕にしかわからない、僕の中のちょっとした変化。
沖縄で人生観が変わるよ。そんなことをたびたび耳にしたこともありました。でもまさかそんなはずがないと、実際にここへと降りたつまで、たかをくくっていました。
そんな僕が、この頑固で偏屈でひとの言うことを聞かない僕が。ベタだけど、本当に変わっちゃった。少しだけでも変えることができちゃった。
Pな青さが僕にくれたもの、それは今までに感じたことのない、理由なきpeaceful。なんだか色んなことに力みすぎていた。そう気付いた、35歳。これが遅すぎるのかそうでないかは、わかりません。
でもそれでも、少なくとも、今年こうして沖縄を初めて訪れることができて、本当に、心の底から本当に良かった。初めての沖縄は、35歳の僕を優しく包んでくれました。
特別海が好きでなくてもいい。マリンアクティビティに明け暮れなくてもいい。パリピにならなくてもいい。ただただ、沖縄に来てみるだけでいい。15年前に戻れるなら、若い僕にこう言ってやりたい。
もしこの旅行記を読んでいる方で、沖縄は行ってみたいけどちょっとキャラじゃない、インドア派だし、そんなことを思っている方がいたとするならば・・・。
僕は声を大にして言いたい。そんなことを思う暇があるなら行くべきだ、と。僕が実際そうだったように。
歳をとるのは待ってくれません。若い時には若いなりの、そして今には今の感じ方があるはず。合おうが合わなかろうが、それは行ってみてから感じればいいもの。20代に沖縄を知っていれば、なんて取り返しのつかないことになる前に、理屈抜きで行ってみなさい!
これは決して僕の暗い後悔の念ではありません。35歳で初めて来てこんなにも楽しかったんだから、若い時にはもっと楽しめることもあったかもしれない、という欲張りな気持ち。それほど、それほどまでに、楽しすぎた。絵に描いたような地上の楽園そのものだった。
あの感動が忘れられない。そんな青く輝く楽園へとまた旅立てる日がくるまで、こころにしまった青さは大切にしておこう。
あの青さを思い出せば、遠くてもいつかはまた行けるはず。いつかくるはずの、その日を夢見て。
コメント