沖縄で迎える最後の朝。もう何度もこのときを迎えたような錯覚に襲われますが、これが3回目の朝。それほど沖縄、石垣島で過ごした時間が濃厚だったという確かな証。
台風は昨日のうちに大陸へと抜けたようで、心配していた雨も風もない穏やかな朝。飛行機が飛ぶことに一安心しつつ、沖縄を離れなければいけないという実感が芽生えはじめます。
なんで早起きしてもこんなに頭の中がすっきりしているんだろう。22時台に寝るといういまだかつてない習慣を覚えた僕は、これまでにない確かな感覚を手にしはじめていました。
6時前後には自然に目覚め、顔を洗ってビーチへと散歩にでかける。朝食前のそんなゆとりのある時間など、これまで生きてきて体験したことはありませんでした。
朝のゆとりに手ごたえを感じ、散歩を終えたところで朝食を。今朝も油味噌ともずくのり、八重山かまぼことゆし豆腐ははずせません。中央の炒め物は青パパイヤ。初めて青パパイヤを食べましたが意外にクセがなく、シャキシャキとした食感が美味しい。
そして下にあるのはてぃびち。豚足を煮込んだ料理です。これも有名な沖縄料理で、いつかは食べてみたいと思っていました。でもまさか朝ごはんに登場するなんて。
朝からその見た目に圧倒されつつ、手づかみでひと口。しょう油味でよく煮込まれた豚足は、ほどけるような柔らかさ。豚足のクセもあまりなく、ぷるんぷるんのコラーゲン感がものすごい。骨から皮から、そのほとんどがコラーゲンで出来ているという印象。
これは旨い。朝ごはんにもいいのですが、これは泡盛と合わせたら間違いない。やっぱり今度は晩酌に注文しようと決心しました。その前に、またいつ沖縄に来られるか、だ。
朝食を終え、部屋へと戻り仕方なく帰り支度を始めます。そして一段落したところで、最後の海へ。台風が過ぎた海は初日よりも少々冷たく、焼けた肌に心地良い。朝から薄曇りだったので、もう沖縄の陽射しは味わえないかな?と思っていたところ、最後の最後でまた太陽が顔を出してきました。
太陽はひとつ。全世界同じ太陽の光線を浴びているはず。それなのに、こんなに小さな日本でも、東京と沖縄では違う顔を見せる太陽。それに気付けただけでも、沖縄に来た甲斐があった。
穏やかで静かな底地ビーチ。珊瑚や貝殻からできたこの白い砂浜も見納め。それを澄んだ波がからからと洗う様子が、目にも耳にも心にも焼き付きます。
美味しい料理と静かな環境で初めての沖縄を満喫させてくれた、石垣シーサイドホテル。そして何より一番は、やっぱりこの眺め。この眺めは僕の中でも宝物。沖縄という場所を強く印象付け、そして好きにさせてくれました。
あぁ切ない、離れたくない。と普段なら絶対に、絶対に思うはず。でも今日は違う。離れたくない気持ちはあるけれど、もっと気楽に、また来ればいいじゃんと思える心を、沖縄に来ていつのまにか手に入れていたようです。
11時にのんびりチェックアウトし、夏季の間は一日に数本運行されている無料送迎バスで空港へ。この文字を見たのがだいぶ前のようであり、ついさっきのようでもあり。
初の沖縄、石垣島に着いてすぐにご挨拶したシーサーたちともお別れ。シーサー君、思い切り、思いっきり満喫させてもらったよ。ここで過ごした時間は一生忘れない。いや、忘れられないよ。
飛行機の時間まではまだ余裕たっぷり。そこでおみやげを買い込み、お昼を食べることに。空港内にはフードコートがあり、ご飯ものから麺類、甘いものまで揃います。その中で僕が選んだのはもちろん、『やいま村』の八重山そば。ちなみにやいまとは、八重山ことばで八重山をこう発音するのだそう。
沖縄に来て3食目の八重山そば。こちらのものもおだしがきいてとても美味しい。上に載った豚肉は余分な油が落とされ、おだしとそばの小麦の感じを邪魔しません。竹富、ホテル、空港と、それぞれ違う味ですが、共通して言えることは優しい、穏やか、という印象だということ。それは八重山そばに限らず、今回食べた他の沖縄料理もまた同じ。
おそばももちろん美味しいのですが、こちらもものすごく美味しかった、ジューシーのおにぎり。一見普通のひじきの炊き込みご飯にも見えるのですが、中には豚肉が混ざっており、そのコクと適度な油分がたまりません。コーレーグースをいれたおそばのだしとの相性も抜群。ジューシー、だし、ジューシー、だしと、エンドレスで食べ続けたい美味しさ。
最後の沖縄グルメを堪能した後は、最後の沖縄の風を満喫することに。空港の展望デッキに登り、熱い日差しと熱い風、そして横たわる青い海をもう一度だけ、目に焼き付け、肌に感じ、胸いっぱいに吸い込みます。
これで本当に沖縄ともさようなら。その瞬間が、刻一刻と近づくのでした。
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