川平石崎でののんびりさんぽのあと、ホテルのプールでクールダウン。火照った日焼け跡も少しは落ち着いたところで部屋へと戻ります。
お昼ご飯まではまだ少し時間があるので、ここでまたオリオンビールをぐいっと。もうこの景色さえあればいくらでも飲めちゃう。やっぱり沖縄生まれの沖縄育ち、沖縄のことをいちばんよく知っているビールなのですね。この気候と景色にとっても合う。
さっきまで弱い日差しがあったかと思えば、急に雨が降り始めました。でもこれは昨日までのスコールといった雰囲気の雨ではない。接近中の台風に刺激された雨雲からくる雨なのでしょう。
時刻は13時過ぎ。ここで少しだけ遅めのお昼をとることに。昨日はレストランで八重山そばを食べましたが、今日はプールサイドのテラスで販売しているランチボックスを購入することに。
ロコモコやエビチリ丼など色々と選べましたが、今回僕が選んだのは沖縄名物タコライス。ピリ辛のタコスミートが載ったどんぶりです。タコスミートは程よい辛さで肉感もあり、ご飯との相性が意外といいことに驚き。そういえばタコライスを食べるのは初めてでした。
一緒に添えられたマスタードとピクルスのソースや、薄く削られたチーズがいいアクセントに。それぞれを少しずつ混ぜれば、味わいがその都度変化していきます。そして温玉を崩せばまろやかに。どんぶりだけど洋風。僕にとってはロコモコに続いての美味しい意外性 です。
ランチボックスの名の通り紙の箱に詰められているのですが、これがまたかなりのボリューム。たっぷりのタコスミートやソース、サラダの下には、見えてはいませんがぎっちりのご飯が詰まっています。
これならプールや海で遊び疲れ、お腹が減っても安心の味とボリューム。ホテルの食事は高くて少なそう、なんて勝手にイメージを抱いていましたが、こちらのホテルではこんな部分においても安心して滞在できます。
部屋で降る雨を見ながらランチを食べ、その後も何をするわけでもなく、ごろごろし、そして海を眺めるだけ。
でもそんな何もしない時間ですら、ここ石垣島では特別な時間になる。もう何もする必要なんてないんです。この景色さえ、この開放感さえ、この空気感さえ味わえれば。
静かで贅沢な時間の流れに漂いながら過ごす午後。先程まで降っていた雨は上がり、雲間から少しだけ明るさも戻ってきました。
どうやら台風は本当にそれてくれたようです。早まって東京に帰らなくて良かったとホッとする反面、飛行機が飛ばないという事態を心のどこかで望んでいたのかもしれません。安堵の中になぜか少しのがっかりが混じります。
どうやら明日は帰れそう。会社にごめんなさいコールも辞さないと決心をしていた僕は、ちょっとがっかり。もし飛ばなければ、あと1日、2日は沖縄に留まれるという淡い期待がありました。
ということで、予定通りこれが沖縄での最後の晩餐。今日も泡盛片手に沖縄の美味しいものを楽しみます。
まず初っ端に選んだのが、スクガラス豆腐。だいぶ前にテレビで見たときには、ものすごく驚きました。だって尾頭付きの魚が冷奴に載っちゃっているんですもん。
スクガラスとは、アイゴの稚魚の塩辛。スクがアイゴの稚魚、カラスが塩辛、という意味だそう。このスクガラスは沖縄ではポピュラーな食材で、大きな瓶詰で売られているようです。そんなスクガラス、この島豆腐の冷奴に載せて食べる食べ方が一番美味しいそう。琉球王国最後の国王の息子さんが考案したという、歴史あるおつまみ。
その見た目と、アイゴの稚魚の塩辛がどのようなものかという不安から、僕も注文する直前まで悩みました。でもこれを逃したら次回の沖縄までおあずけだ!と決心し、思い切って注文。そして運ばれてきたものを見てやっぱり、スクガラス豆腐!!と目が釘付けになるインパクト。アイゴちゃんがふたり仲良く同じ方を見て並んでいる姿は、なかなかシュールなものがあります。
その珍しい光景を存分に眺め、恐る恐るひと口。なにこれ!美味しい!!もう直感でわかる、僕好みの味。塩漬けにされたスクガラスは、予想を裏切る癖のなさ。魚の塩辛というからには、もっともっと海パワーの溢れた、個性的な風味を想像していました。まあ簡単に言えば、生臭そうだと思っていた。
でもその生臭みが全くないんです。これだけ小さいのでもちろん内臓も一緒に漬けてあるはずですが、その臭みすらない。不思議です。そして驚くのが食感。こんな小魚、それも漬けてあるのだから柔らかいだろうと想像していたら、かなりの骨バリバリ感。ひれも硬いので、刺さらないよう食べるときには少し注意が必要です。
肝心の味は、結構なしょっぱさ。その塩分の中には、漬けてあるからこそ生まれてくる旨味が。だから豆腐に載せるんだ。硬く濃い味の島豆腐とスクガラスのコンビネーションに、こうして食べる必然性を強く感じます。グルメで飲兵衛だったという方の生み出したこの食べ方。その通りの酒飲み殺しの逸品です。
随分とスクガラス豆腐を熱く語ってしまいましたが、引き続き晩酌メニューを。続いてお刺身盛り合わせ。昨日注文して美味しかったので、今日は2人前を頼みました。今日はたこもプラスされ、それぞれのお魚のボリュームもアップ。昨日の1人前ふたつ分のお値段なのに得した気分。
まぐろにかつお、そでいか、えびと、昨日に引き続き美味しいお刺身たち。沖縄に来るまではインパクト大の郷土料理に注目していましたが、こうしてお刺身を食べると、海に囲まれ海の幸が美味しいところなんだと、当たり前のことを実感します。
そんな美味しいお刺身たちを支える名脇役、海藻たち。中央のうみぶどうは言わずと知れた美味しい海藻ですが、その陰に隠れつつも忘れえぬ味わいをもつ海藻がもうひとつ。うみぶどうの後ろに隠れている、緑がかった紫色のつんつんとした海藻、これはスーナというものだそう。
昨日何も知らずに食べてみたら、その食感と味わいに完全に惚れてしまいました。しゃきっさくっとした歯ごたえと、強すぎず、しかし程よい海藻の風味が絶品。もうこの海藻だけのサラダが食べたい。そう思うほどの主役級存在感。お刺身もさることながら、このスーナで泡盛をぐいっといっちゃいます。
そして今日もチャンプルーを。今夜はゴーヤーチャンプルーを注文しました。こちらのゴーヤーチャンプルーは、スパムではなく豚肉のタイプ。一緒に合わせた玉ねぎの甘味と穏やかなだしの旨味が合わさり、とても優しい味わいに。
お刺身に、海藻に、チャンプルーに。そしてインパクトに負けない旨さのスクガラス豆腐。沖縄は美味しいものだらけ。いつもなら、そんな旨いつまみを並べられたらがんがん飲んでしまうのですが、レストランでは泡盛ロックを3杯だけ。
十分飲んでるじゃないかって?いえいえ、僕にしては控えめです。沖縄に来てからというもの、お酒のペースが確実に落ちました。
といいつつまたお酒の写真。今宵の部屋でのお供は、地元石垣島の泡盛請福を開けます。昔ながら、直火での蒸留にこだわったというこの泡盛。すっきりとしながらどことなく香ばしく、お米と麹の香りと旨味を感じさせる味わい。
恥ずかしながら、これまで泡盛は何度も飲んだことはあるものの、麹の風味と度の強い焼酎、程度の認識しかありませんでした。たまにしか飲まなかったということも原因のひとつかもしれません。
ですがこれだけたて続けに飲んでみて、それぞれ味わいが全く違うということを今更ながら実感。泡盛の小瓶は値段も大きさも手頃なので、いくつかの種類を飲み比べるのも楽しそう。
これまで知らずに過ごしてきた泡盛の旨さにふれ、大満足で過ごす沖縄での3回目の夜。そして今夜が沖縄での最後の夜。そんな夜のもうひとつのお供にと開けたのが、オリオンビアジャーキー。コンビニで買っておいた手軽なおつまみです。
どうせたいしたことない、普通のパウチのジャーキーだろうと思ったら大間違い。砂肝でできたジャーキーは、パウチとは思えない砂肝感。食感も風味もしっかり砂肝の存在感を残しています。
沖縄うま塩コショウ味と名付けられた味付けは、この手の製品にしてはかなりシンプル。いわゆる「安っぽい」ジャンキーな味を想像していたので、思いがけない美味しさに慌てて写真を撮りました。パッケージ開けた後でごめんなさい。
こうして旅行記に起こしてみると、歩いて海見て飲んで食べるだけ。そんな単調な一日に見えてしまいそうなのが少し心配。確かにやっていることといえば、それが全て。でもそのひとつひとつが持つ質量、これがここ石垣島では全く違う。
なんだろう、この満たされる感じは。なんだろう、このもっともっとと求めずに済む感覚は。
僕は地球の緯度によって性格が変わるという性質を持っていたのだろうか。そう思いたくなるほどの、自分の驚くべき変化。そんな変化は寝床に入る時間にもあらわれ、今夜も22時台と早めの就寝。
もう一度言います。初の沖縄で過ごす夜はこれが最後。これまでの僕には考えられない行動に戸惑いながらも、何かしらの実感を得つつ、深い眠りにつくのでした。
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