真栄里ビーチで突然の強い雨をやり過ごし、小降りになったところでお目当てのお店へと歩き始めます。途中何度か雨宿りしつつ、無事に『ふるさと食堂』へと到着。石垣に来たら必ず訪れたい、お気に入りのお店。
ジャングルのような入口の奥へと進むと、豊かな緑に覆われるようにして佇む母屋とテラス席。今回選んだのは、もちろん風の心地よいテラス席。雨音と濡れて濃さを増す緑を感じつつのオリオンビールは、またひと味違った味わい深さ。
それにしても、何度訪れても圧倒されるこの「魅惑のチキルーム」感。おいしいご飯もさることながら、市街地に居ながらにして味わえるこの独特な世界観もまた、このお店の大きな魅力と言っても過言ではありません。
涼しい風に吹かれ、滴る雨粒を眺め。のんびりオリオンを味わいつつ待つことしばし、お待ちかねのミニカレー丼とそばセットが運ばれてきます。
まずは八重山そばのスープをひと口。その刹那、口中に広がる穏やかな旨さの波。あぁ、これだよこれ。2年ぶりに味わうそのおいしさに、こみ上げる歓びを噛みしめずにはいられない。
続いて麺を。見た目通りのしっかりとした麺は、硬すぎずそれでいてワシワシとした独特な食感を楽しめるもの。載せられた豚肉や八重山かまぼこをときおり挟めば、延々と手繰っていたくなるエンドレスな旨さ。
止まらない箸をなんとか止め、お隣のカレー丼へ。見ての通りじゃがいもやにんじんのゴロゴロと入った黄色いカレーなのですが、そこに宿るのはなんとも言えぬ滋味深さ。いい意味で、家庭的なのにここでしか出会えない店の味。
穏やかでしみじみとした旨さのそばを啜り、優しい中にも深い味わいを湛えるカレーを食べる。その往復に、また今年もこうして逢うことができた。ふるさとの名の通りの温もり溢れる手作りの味に、切なさにも似た感情がこみ上げます。
2年ぶりの逢瀬に心を温め、一旦ホテルへと戻りクールダウン。冷房の効いた部屋でゴロゴロだらだらと過ごしているうちに、時刻はあっという間にもう夕刻に。
今夜は石垣牛のたたきが食べたいというので、石垣ビレッジにある『石垣島の石垣さん家の石垣牛』にお邪魔してみることに。カウンターのみの店内と通路に設けられたテーブル席といった、賑やかさを直に感じる造りのお店。
まずは相方さん希望の石垣牛タタキから。適度に脂は乗りつつも、牛臭さや油っぽさを全く感じさせない石垣牛。薄切り肉に薬味をちょんと付け舌へと乗せれば、じんわりと脂の甘味が広がります。
牛を食べたならやっぱり魚も食べたいと選んだのは、マグロ塩タタキ。これがお!っと驚く旨さ。熱を通された部分は魚の旨味が凝縮し、レアの中心部はもっちりとした瑞々しさ。石垣島はまぐろが旨い。まぐろがきちんとしているからこそ、シンプルに塩で食べても臭みがないのです。
続いて頼んだのは、これまた大好物のジーマーミー豆腐。注文すると、女将さんが「甘いよ?」「甘いたれ掛けるけど大丈夫?普通の豆腐と違うよ?」と心配してくれます。確かに、何も知らずに頼めば慣れ親しんだ豆腐との違いに驚くかもしれません。
もちっととぅるんとした食感と、口に広がるほんのりとした落花生の香り。だいぶ昔に東京で食べたジーマーミ豆腐はかなりピーナッツが強かったので、現地で食べたときはあれ?と思ったことを思い出します。
甘じょっぱいたれと一緒に掬って泡盛ぐびり。「泡盛に合うからね!」と乗せてくれた黒糖と一緒に、やっぱり泡盛ぐびり。こんなに優しい味わいなのに、実は酒を進める危険なつまみ。
お次はしっかりと煮込まれたラフテーを。程よく脂の落とされた白身はとろりと解け、きゅっと締まった赤身に詰まった旨味が堪らない。そしてもちろん、魅惑の豚皮付き。コラーゲンそのものといった食感の豚皮こそが、ラフテーの醍醐味であると僕は信じて疑わない。
あれこれ頼んでどれもおいしいので、思わずこれもと注文した島魚天ぷら。今日はイラブチャーが使われています。本州のものとは違い、ぽてっと厚めの衣を纏う沖縄の天ぷら。それでいて重さや油っぽさは全くなく、カリっと厚めの衣の中から現れるふんわりほくほくのアオブダイは絶品のひと言。
たくさん食べて、たくさん飲んで。県外の人が多く目立つ石垣ビレッジにおいて、このお店はご夫婦ともに沖縄出身だそう。石垣へと嫁いできたという女将さんのお話しも楽しく、色々なおすすめスポットも教えてくれます。
だいぶ気分も良くなった僕は、ついに好奇心からヤギの刺身を注文。ずっとずっと気になりつつ、でもこれまで勇気の出なかった一品。泡盛の力を借りて、今夜初体験をしてしまいます。
ルイベ状になったヤギ肉を、恐る恐る舌の上へ。するとあれ?全然臭くないじゃん!とビックリするほどの拍子抜け。味わい自体は鹿などよりもしっかり濃く、でも全然臭みがない。強いて言えば、後味に「オッスおれヤギ!ひつじと仲間だぜ!」という風味が遠くの方で感じる程度。ラムが得意ではない相方さんもそう感じるのだから、間違いありません。
いやぁ、今宵は存分に食べて飲んだ!おいしいものを少しづつつまみ、泡盛ロックをクイクイっと。そんな愉しい時間はあっという間に過ぎ、思った以上に長居してしまった。
周囲に目立つのは、初めての石垣というひとり旅。どうやら航空会社のキャンペーンで当たったらしく、1泊で帰るという人も。いやいや、それは勿体なさすぎる!思わず八重山愛が溢れてしまい、女将さんと何故か一緒に「次来るときは絶対連泊ですよ!」なんて力説しちゃう。そんな賑やかで楽しい南国の夜は、ゆっくりと更けてゆくのでした。
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