昨晩の楽しい宴の余韻を感じつつ目覚める、石垣の朝。窓の外には分厚い雲がかかり、先ほどまで降っていたのでしょうか、道路は雨の名残りで濡れています。
昨日はさすがに少々飲みすぎた。そんな今日の空模様のような目覚めでしたが、おいしい朝食を前にすると俄然元気が出てくるのだから不思議なもの。
カリっと揚げられた県魚グルクンの唐揚げに、言わずもがなのゴーヤーチャンプルー。それに大好物のもずく海苔と来れば、熱々の白いご飯に合うものばかり。二日酔いもどこへやら、今朝も結局満腹になるまでお替りしてしまいます。
今日は海は無理そうかな。そう思いつつも、竹富島の方は次第に天候が回復してきそう。まぁ、降られたら降られたまでさ。そう心に決め、『八重山観光フェリー』のあやぱにで竹富島を目指します。
ビーチに着くまで持つかな。そんなことを考えていると、到着直前になってバケツをひっくり返したような強い雨が。竹富港、こんな色に染まることもあるんだ。雨の強さもさることながら、いつもとは全く違う海の表情に気圧されます。
土砂降りの中港のすぐ近くに停車している『竹富島交通』の路線バスにかけ込み、コンドイビーチを目指します。道中、ワイパーも利かぬほどの強い雨。今日はずっと東屋で海を眺めるだけかな。そう覚悟を決めていると、到着目前になって止んでくれました。
雨に濡れたベージュの浜、鉛色の雲の下にはほの暗さを溶かしつつそれでも青い海。真夏のスコールの時とは明らかに違う、本当の曇天が醸し出す独特の色合い。
初めてがこの天気だったら残念だけれど、今日はこの色に出逢うために海を渡ってきたのかもしれない。八重山の空は本当に豊かな表情を魅せる空。そんなことを考えていると、再び視界を煙らせるほどの強い雨。
すぐさま東屋へと駆け込み雨宿り。それでも強い雨が長く延々とは続かないのが南国らしく、段々と弱まりついには止んでしまいます。外へと出て、雲の流れ来る方向をチェック。しばらくは雨雲も来なさそうなので、ようやくビーチに陣を取ります。
空一面を覆う厚い雲、その色合いを溶かす鈍い青さの海。映す陽射しのない白い砂浜も、いつもとは違いマットな表情に。青空の時とはまたひと味違う、空と海、そして陸の境界すら溶けゆく幻想的な世界。
吹く風に、足を濡らす波や砂浜までもが今日は冷たい。強弱はあるもののじりじりとした暑さのコンドイビーチしか知らないので、この涼しさには驚いてしまう。
体を冷やさない程度に波に揺蕩っていると、沖には再び雨をもたらす黒い雲が。でもどうやらこちらへは来ず、そのまま通り過ぎてしまいそう。この先の天気を知るために、雲を見る。そんな当たり前のようなこと、東京で最後にやったのはいつのことだろうか。
しばらくは雨に降られることもなさそうなので、ここで腰を落ち着けてオリオンビールを。いつもならあり得ない青さをした海をつまみにしますが、今日は雨に打たれ濃さと艶めきを増した豊かな緑に乾杯することに。
オリオンの冷たい刺激が呼んだのか、切れはじめた雲間からはほんのりと太陽の気配を感じるように。これまでの分厚い雲からは想像できない、八重山の空からの贈り物。
いつしか青空が見えはじめ、それに伴い色を取り戻りはじめるコンドイビーチ。色は光を反射するから。その理屈を頭では解ってはいても、一気に色彩が甦る光景に自然の織り成す神々しさを感じずにはいられない。
地球に色彩を授けると同時に、温もりも与える太陽の力。潮が引いて遠浅になった海はすっかりと温められ、肩まで浸かっていても寒くならない心地よい温度感に。
冷たすぎず、温すぎず。あっという間に海に包容力を与えてしまった陽射しの力に圧倒されつつ、波に揺蕩い眺める青空。水と光を得た緑は一層力強さを増し、雨上がりのこの瞬間を全力で愉しむかのよう。
雨上がりの曇天から、文字通りの土砂降りを経て予期せぬ青空まで。今日のコンドイビーチは、千変万化ということばが似合う。移ろう空模様や色彩に心を委ねていると、あっという間に時刻はもうお昼過ぎ。
飽きる暇など与えることなく、様々な顔を魅せてくれたコンドイビーチ。自然の生み出す活劇を目の当たりにし、また新たな表情が想い出として胸に刻まれるのでした。
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