昨日の予感は、本物だった。窓から溢れる青さに起こされ外を見れば、この青空、そしてこの海の色。昨日までとは明らかに違う空や海、雲の表情に、窓を開けずとも夏の到来が感じられるほど。
今日はきっと、2年ぶりの本気の青さが待っている。そう逸る気持ちを抑えつつ、まずは朝食で腹ごしらえ。大好物のじゅーしー片手に、フーチャンプルーやにんじんしりしりといった八重山色溢れるおかずを味わいます。
部屋へと戻って支度をし、足取りも軽く離島ターミナルへ。乗船券と入島券を買い岸壁へと出てみれば、眼を灼くようなこの青さ。そうだよ、これだよ!パステルに染まる情景もきれいだけれど、6年前に一目惚れしてしまったこの青さには格別の想いがこみ上げる。
『八重山観光フェリー』のちゅらさん2は、たくさんの乗客を乗せて定刻通り出港。青い空と碧い海の合間を縫うように、白く美しい波しぶきを上げて一路竹富島を目指します。
爽快な青さの中疾走することあっという間、港が近づき減速開始。
2年ぶりに目にする、この青さ。青のひと言では表せぬほどの、豊かなあおさに彩られる空と海。その境界を辛うじて区切るように薄く横たわる、緑あふれる竹富島。早く肉眼で味わいたい。UVカットのガラス越しに繰り広げられる壮絶な青さに、今はただ手をこまねくばかり。
石垣に着いてから七分咲きだった僕の南国属性も、この瞬間、たがが外れたかのように一気に満開に。あぁ、しあわせ。だめだ、くらくらする。脳内の自分でも知らなかったある部分から、何かがドバっと出るあの感覚を2年ぶりに味わいます。
今日は絶好調に天気が良いので、歩いてコンドイビーチを目指すことに。あっちぃ。あっちぃよ~。そんな嬉しい悲鳴を上げつつ、坂を登って集落の入口まで辿り着きます。
滝のように流れる汗を拭き目を細めつつ視線を上げれば、もうこれだもん。どこまでも澄んだ穢れなき抜けるような青空、そこに力強く屹立する白い雲。その強烈なコントラストに一層映える、赤瓦と珊瑚の石垣。
雲すら介さず、ダイレクトに伝わる太陽光線の力強さ。昨日までの穏やかさはどこへやら、八重山の本気を包み隠さず浴びせてくるよう。そんな南国の陽射しを受け止め、僕の心を映すかのようにきらきら輝くブーゲンビリア。
力漲る夏の到来に、島を覆う緑たちもとっても嬉しそう。石垣を這うピィヤーシの実も、こうして太陽の恵みを一身に受け熟してゆくのでしょう。
はぁ、夏だなぁ。白い砂の道にくっきりと浮かぶ陰影、日射を受け主張を強める花々の色彩。目に飛び込むものが、ただただ眩い。この空気感を一度知ってしまうと、もう後戻りなどできるはずがない。
全身に八重山の熱さを存分に浴びつつ、集落をのんびり歩きます。幾通りかあるコンドイビーチまでの道のり、今回はこれまで歩いたことのない道を進んでみることに。
すると、集落の突き当りに突如現れる大きい井戸。仲筋井戸(ナージカー)と呼ばれるこの井戸は、かつて島の貴重な生活用水として利用されてきたものだそう。濁った水が底に溜まる姿からは、小さな離島で真水を確保することの大変さがひしひしと伝わります。
立派な石積みの井戸のすぐ先には、鬱蒼とした茂みに覆われた小高い丘が。一段と高くなったこの丘は、ンブフルと名付けられています。
昔、飼っていた牛が夜に逃げ出し角でこの丘を造り、朝に頂上でンブフル、ンブフルと鳴いていたという言い伝えからその名が付いたそう。全体的に平べったい竹富島ですが、ここ一画だけはまるで「山」のような雰囲気に包まれています。
竹富島には3つの集落があり、竹乃子がある周辺は西集落、港からまっすぐ歩いて突き当たるのが東集落、残る一つが先ほどのンブフルの丘を越えた先にある仲筋集落。自転車であの丘を越えるのが大変なためか観光客の姿も少なく、東西集落に比べ静かな雰囲気が漂います。
初めて歩く仲筋集落。緑豊かな丘の先に現れるひっそりとした集落を静かに歩けば、古からの島でのくらしに一歩近づいたかのような錯覚が。
そんなことが頭をよぎるほど、静かなる情緒に包まれる仲筋集落。お店がいくつかあるものの観光色豊かな東西集落とはまた違った趣に、これまで知らなかった竹富島の魅力をまたひとつ発見。
賑わう集落を抜け、水の貴重さに触れつつ深い緑の先に隠された静かな集落へ。いつものコンドイビーチへの道のりでは知ることのなかった新たな竹富の一面に、この島をより一層好きになってしまう。
肌を刺す八重山の漲り、眼を灼く南国の鮮烈なコントラスト。それでいて肌を撫でる風は爽やかで、歩いているだけでも嫌というほど満ちてゆく南国感。今日のコンドイは、きっと全力に違いない。昨日までの穏やかさとはまた違った青さに思いを馳せ、八重山の夏を全身に享受しつつ歩みを進めるのでした。
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