地上の楽園を絵に描いたような竹富島を離れ、バババババッと豪快な爆音と振動を放つ高速船に揺られること10分、半日振りに石垣離島ターミナルに到着。
人生初の沖縄に上陸してから、まだ6時間と少し。そのことが嘘に感じられるほど、身も心も沖縄色に。それを表すかのように早くも赤くなり始めた肌を、午後の太陽が容赦なく焼き付けます。
古き良き沖縄を色濃く残すという竹富島から戻ってみると、ここ石垣島はやっぱり都会!古くから八重山地方の中心地として栄えてきたことを感じさせます。
とはいっても、ここはやっぱり南の島。ビルやコンクリの家に混ざって建つ赤瓦の家や、見たことのないブルーの舗装が、ただの街並みとは一線を画す南国ムードを醸し出します。
日本最南端のアーケード商店街というユーグレナモールで滞在中のお酒などを選び、お店が開く頃合いを見て早めの夕食を。今回は早めに開いていた『一仙・居酒屋』というお店にお邪魔してみることに。
店内に入ってみると、どうやら七輪焼肉をメインにしたお店のよう。というのも、暑さにやられつつも開いているお店が無く、灯る看板に誘われるようにして入ったため、後から気付いたのです。
メニューを見てみると、意外にも魚介や野菜、山菜、郷土料理も充実。色々気になる中で、まずは沖縄に来たら絶対食べる!と決めていたお刺身を注文。
運ばれてきた5点盛は、一切れが大きく結構なボリューム。確かこれで1,000円くらい。暑さに参りかけてお魚の種類を聞くのを失念しましたが、これまで食べたことの無いものが見受けられます。
中央のまぐろはきめ細かく、赤身の旨味もきっちり。右のかつおもこれまた濃厚な赤身の旨味。まぐろの両隣は何だろう?何だろう?と言いつつも、どちらも瑞々しい美味しさ。
そして一番左の皮目の目立つ魚。この皮にはピンと来たのですが、でも青くない。あれ?そうなのかな?と思いつつも食べてみると、皮に秘められた強い旨さ。
鯛をはじめ、皮が美味しい魚はたくさんありますが、これもまさにそんな魚のひとつ。だからこうして目立つ厚めの皮を敢えて残してお造りにしているのでしょう。
そして今調べて確信、やっぱり僕の食べたいと願っていたイラブチャーでした!この鱗を思わせる皮目に絶対そうだ!と思ってはいたのですが、あの鮮やかな青さが無いので、現地ではイマイチ自信が持てませんでした。
でもいいや。何のお魚か確信が持てなくても、その独特な美味しさを十分に楽しんだから。僕が沖縄に行ったら絶対に食べたいと思っていたもののひとつ、イラブチャー!青いカラフルな熱帯魚が美味しいって、何だか浪漫がありませんか?そうですか、僕だけですか。
続いては、こちらも沖縄に来たら絶対!と願っていたゴーヤーチャンプルー。初めての本場の味(沖縄自体初なのだから当たり前・・・)にワクワクしつつひと口。
すると、東京で馴れたあの独特な青苦い風味と、かつおだしのごり押し感がありません。代わりに溢れるのは、爽やかな絶妙な苦みと、優しい旨味。
東京で食べるものはかつおが強く、親の仇かのようにかつお節が載せられたものや、やり過ぎてかつお臭いものまであるのです。本場はそれ以上!と思って食べると、きっと拍子抜けするかもしれません。それほど優しい味付け。
でも僕は直感しました。きっとこれが本場の味なんだろうなぁ、と。初めて食べたくせに分かるもんか!と言われればそれまでですが、美味しい郷土料理って、分かるときには直感で分かるもの。だって、食べている最中から、これなら飽きずに長年食べ続けられるんだろうな、という雰囲気を持っているから。
ゴーヤーの種類が違うのか、生育環境が違うのか。東京で食べるものとは違い、苦みはあるが青臭みが無い。そのことにも驚くのですが、もうひとつ驚いたのが、具にスパムとツナの両方が入っていたこと。自分で作るにしても、お店で食べるにしても、どちらか一方しか入っていませんでした。でもこのふたつを合わせると最強になるんですね。
これは沖縄に来なければ絶対にしようとは思わない組み合わせ。缶詰、それも個性の強いものを2つも入れる。くどくなったり、ジャンキーな感じになってしまいそう。でも実際は、そんなことは全くない。適量ずつを合わせれば、ものすごくまとまる、更には相乗効果で美味しくなるものなのですね。
ゴーヤーの爽やかな苦み、ポークとツナの旨味、かつおだしの穏やかな旨さと風味。それらを堅い島豆腐がきっちりと吸い込み、更にはたまごでひとつにまとまる。
あぁこれがテレビでやってた、あじくーたー、ちゃんぷるー、っていう感覚なんだ。そう一発で実感させてくれた、穏やかな表情のゴーヤーチャンプルー。帰宅後すぐに真似して作ったことは、言うまでもありません。
本当はもっと色々食べたいものがあったのですが、オリオンビールの飲み過ぎと、暑さと早起きから来る眠さに満腹中枢が刺激され、もうすっかりお腹一杯。
美味しいお刺身とチャンプルーに満たされ、バスターミナルから『東運輸』のバス、川平リゾート線に乗車。宿までは1時間の道のり。オリオンビールに誘われるがままに、気付いたら長い時間眠ってしまっていました。
ふと目が覚めると、雲の切れ間から海を黄金色に照らす夕日が。そして現れるマングローブの林。寝覚めでそれがマングローブだと認識するまで若干の時間を要しました。
だって、海中から生えるマングローブなんて、僕にとっては写真や映像の中だけの世界。突如現れた幻想的な眺めに、これが夢なのか現実なのかすら判らなくなる。それは決して、オリオンビールのせいだけではないでしょう。
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