2年ぶりの再会を果たし、これまでとはまた違った新しい美しさを魅せてくれた竹富島。その悦びの余韻に染まりつつ、『八重山観光フェリー』で石垣島へと戻ります。
今回乗船したのは、昨年末に運行を開始したばかりの新造船、やいま。マンタにイリオモテヤマネコ、オオゴマダラに豊かな緑。八重山の誇る自然美が、船体中に散りばめられています。
快適な新しい船での航海を楽しむこと15分足らず、半日ぶりに石垣港離島ターミナルに無事帰還。朝には具志堅さんにご挨拶したので、帰りにはいけないコイツに挨拶せねば。売店の並ぶ一画に位置する七人本舗で、マリヤシェイクの泡盛味を購入します。
2年ぶりとなる、禁断のあの味との再会の瞬間。買うときに必ず運転の有無を聞かれ、よくよく混ぜてから飲むようにと手渡される危険な甘味。底には結構な量の泡盛が原液で沈んでおり、言われた通りにしっかりと混ぜてひと口吸い込みます。
するとぶわっと鼻へと抜ける、泡盛のがっつりとしたアルコール感。間もなく遅れて泡盛の麹の香りと牛乳の軽やかなまろやかさが追いかけてきて、何とも言えぬ唯一無二の至極の旨さ。
甘すぎず、無駄な風味付けのされていない牛乳本来の味わいを楽しめるおいしいシェイク。でもやはり、そこに泡盛が寄り添って居てくれないと。このふたつが出会ったときに生まれる想像以上のおいしさは、経験した人でなければきっと解るまい。
2年ぶりとなる泡盛シェイクとの逢瀬に心酔し、ホテルへ戻りひと眠り。日焼けの疲れも癒えたところで、そろそろ今宵の宴の舞台を探しにゆくことに。
今日も歩いている人は少ないけれど、お店は既にどこも大混雑。事前に調べていた『やふぁやふぁ』にダメもとでお邪魔してみると、運よくカウンターに2人分の空席が。この後すぐに満席になっていたので、このタイミングで入れたのは本当に奇跡的。
まずは冷たいオリオンで喉を潤し、お通しのにんじんしりをひと口。うわっ、旨!優しい味付けに宿る、しっかりとした旨味。あぁ、沁みるわ。灼けた体だけではなく、心の奥へと刻まれるような穏やかな旨さ。
続いては、火照った体に嬉しい島豆腐の冷奴。八重山で食べる島豆腐は、硬めながら滑らかな食感が特徴。そこに濃い豆の味わいが凝縮され、これを味わってしまうと東京で木綿の冷奴を食べる気がしなくなる。
今夜もやっぱり食べたい、八重山のおいしいお刺身。もっちりとした瑞々しさの中に、さっぱりとした旨味の詰まったマグロ。セーイカは、ねっとりとした身に宿る程よい歯ごたえと甘味が堪りません。
そしてやっぱり旨い、八重山の白身。弾力ある身質には旨さが凝縮され、本州で感じるような土っぽいクセも全くなし。いい加減覚えろよと言われそうですが、これってフエフキ?なのかな?
お次はだし巻き玉子。使われている出汁は自家製の八重山そばのだしだそうで、慣れ親しんだものよりもより上品な味わい。そのおいしいだしをたっぷりと抱き込んだふるふるの玉子は、優しさというものを体現したかのよう。
そんな優しい玉子を一層彩るのは、豚肉をほぐして作られた甘辛いそぼろ。このそぼろだけでも泡盛お替りものなのですが、穏やかな味付けの玉子と組み合わせればその旨さは一層深くなるばかり。
ここやべぇ、何食べてもおいしいね!なんて気分はすっかり上機嫌。食欲、というよりも食べてみたい欲が弾けた僕は、続いてもずく天ぷらも注文。
運ばれてきたのは、ボリューム感のある真っ黒なかき揚げ5枚。これまで食べたものよりも衣の割合が少ないのか、よりもずくをダイレクトに楽しめる味わい。それでいて海藻のねばりを抱いた衣のもっちりとろり感もあり、こんなのつまみにしていたら泡盛がいくらあっても足りません。
結局やっぱり、2人でボトル一本を空けてしまう。度数の強い泡盛ですが、おいしいつまみと合わさった日にゃクイクイいけてまずいのです。
そして〆にと注文したのは、僕の大好物ソーメンチャンプルー。玉ねぎやキャベツ、島ねぎにツナといった具材とそうめんが絶妙に絡みます。油気もしっかりあり、それでいて味付けは必要十分。これぞソーメンチャンプルー、僕の好みドンピシャの味にすっかりとやられてしまいました。
いやぁ、もう完全に大当たり。滞在中も来店や予約の電話がたくさん入り、本当に飛び込みで入れたのが嘘みたい。次は予約しなきゃだね、なんて言いつつ大満足でお店を後にします。
こんなにしっかり飲んでも、まだ遠くにほんのりと居座る今日という日の名残り。この感覚、何度味わっても本当に不思議。遥か西に位置し、日没が遅いから。そんな単純な理屈だけでは説明のつかない独特な時の流れに、やはりここは八重山なのだと改めて実感を噛みしめる。
残された夜の短さに焦るのではなく、過ごした今日という時間の濃さに感じる充足感。20時過ぎにもなれば、普段なら寝る時間に向けてカウントダウンを始めてしまう。でもここで迎える20時過ぎは、まだ完全には夜を迎えていないという不思議なゆとりを与えてくれる。
同じ23時に寝るのでも、その前に過ごす数時間の感じ方でこんなにも一日の長さが変わるのか。やっぱり年に一度は、八重山時間に体内時計を合わせる必要がありそうだ。2年ぶりに味わうゆったりとした時間軸に、於茂登片手に心ゆくまで揺蕩うのでした。
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