土砂降りから青空まで様々な表情を魅せてくれたコンドイビーチに別れを告げ、集落目指して歩きます。その道中、西桟橋に寄ってみることに。
ちょうど干潮の時間帯、遠浅の海はすっかりと潮が引きどこまでも歩いて行けてしまいそう。辛うじてそこが海だと教えてくれるかのような薄っすらとした水色が、先ほどまでいたコンドイビーチまで延々と広がります。
柔らかく穏やかな竹富の青さを心に灼きつけたところで、お昼を食べに『ガーデンあさひ』へとお邪魔することに。何度も前を通りつつも、入るのは今回が初めて。
八重山そばや名産の車エビのフライなど何を食べようか迷いつつ、選んだのはもずく丼。これならミニ八重山そばも付いてくるので2つの味を楽しめます。
まずはメインのもずく丼から。ご飯にたっぷりと掛けられている、豚ひき肉や野菜と県産もずくのあんかけ。ひと口掬って頬張れば、ご飯の甘味とともにとろっと広がる穏やかな味わい。うわぁ、優しい、沁みてゆく・・・。だしや具材の旨味はありつつも、存在を主張しすぎずご飯を包み込むような穏やかな旨さ。
八重山そばもこれまた優しい味わいで、ワシワシとした食感の麺とスープ、そして歯ごたえのある豚や八重山かまぼことの相性もピッタリ。つるんとしたもずく丼とともに、あっという間に平らげてしまいました。
お腹に沁み入るような優しいおいしさに満たされ、外へと出ればこの青空。あれ?もしかして近いのか?到着してからここ数日の柔らかい青さとは違った、僕の知っているあの漲る力の予感が。
じりじりと照らす陽射しを浴び、可憐に咲くハイビスカスもどことなく元気そう。陽射しひとつで、これほどまでに表情が変わるものなのか。太陽の作り出す強烈なコントラストの妙に、まもなく季節がひとつ進みそうであることを本能で察知します。
島全体が植物園かのように、豊かな草花で彩られる竹富島。大地を潤す雨も恵みなら、力を授ける太陽もまた恵みに違いない。この旅で初めて肌へと感じる無垢な光線に、植物も心なしか嬉しそう。
うわぁ、これはもう間もなくだな。朝の土砂降りが、梅雨の名残りを持ち去ってくれたのかもしれない。そんなことを直感的に思わせる澄んだ青さを、今はただ全身に浴びていたい。
はぁ、夏休みだなぁ。眼を肌を心を灼く八重山の青さに染まっていると、通りの先からは狭い角を器用に曲がる水牛車が。全力の夏だった一昨年は、こんな光景は見られなかった。青空の下観光客を導く水牛の姿に、何となく安堵のようなものを感じてしまう。
まだまだ日常とはまでは言えないけれど、3年ぶりに感じる竹富の夏の賑わいがただただ嬉しい。妙な緊張感を持たずに歩けるということが、こんなに貴重なことなのだと今更ながらに思い知らされます。
ようやく戻ってきた、僕の夏。失って初めて、その大切さを知る。そのことを愚かだと思う人もいるかもしれないが、僕が思うに人間なんてそんなもの。
これまでも旅立てることが当たり前だと思ったことはないつもりでいたが、やはり生き甲斐を取り上げられたあの期間は身に染みた。こうして心穏やかに竹富島にいられることを、心の底から有難いと思わずにはいられない。
どうやらきっと、夏は近いようだ。急に変化した空の顔と空気の様子に、僕にとっての本当の夏を取り戻したという歓びがとめどなく心の底から溢れ出てくるのでした。
コメント