毛越寺、中尊寺、見下ろす平泉の街並みと、この世の浄土を心ゆくまで満喫し、平泉での予定は終了。時刻はお昼過ぎ、電車まで時間があるのでここでお昼を頂くことにします。
今回は唐突な旅だったので、食事どころなどは全く調べていませんでした。中尊寺月見坂入口付近に色々お店が並んでいたので、その中の一軒にお邪魔することに。大きな手打ちそばの暖簾が目を引く、『泉橋庵』です。
注文したのはとろろざるそば。運ばれてきたそれを見ると、かなりのインパクトの太麺。草津で食べた田舎そばとどっこいどっこいの太さです。
見るからに存在感のあるそばを数本取り、とろろと卵の入ったつゆにしっかりつけて啜ります。思ったとおりの歯ごたえと弾力。噛むごとにそばの風味を感じることができます。
見た目の太さから想像されるパサ付きやもっさり感も無く、数本ずつちゅるちゅると啜ってもぐもぐすれば、細い上品なそばとはまた違った美味しさを実感。東京では中々お目にかかれないこんなおそばも、僕は大好き。
ガツンと美味しいおそばでお腹を満たし、平泉駅を目指して歩きます。帰りはこの先東京まで延々と延びる国道4号線を南下。
国道4号線は東京の中心から青森まで延びる、日本で一番陸上区間が長い国道。東京で目にする中央通りとここが同じ道路だとは、その場に立ってみても実感の湧かないものです。
日光街道、奥州街道、仙台道、松前道と歴史ある道を発端とする歴史ある国道端には、これまた歴史を感じさせる渋い建物が。灰色をした重厚な蔵に、盛りを迎えた桜が華を添えます。
月見坂から平泉駅前の交差点まで、国道沿いには立派な桜並木が続いています。その姿は毛越寺から中尊寺への道からちらちら見えていたので、これから行く道の華やかさを浮かべ、気分はもう春一色。心なしか足取りまでも軽く感じます。
枝もたわわに咲き誇る満開の桜の花々。儚さを感じさせる東京のそれとは違い、この桜には勢いと強さを感じます。長い風雪に耐え、遠い春を待ちわびていた桜の生命力が一気に溢れ出しているからなのでしょうか。
緩い弧を描く桜色、萌黄色、檸檬色。春の淡くも華やかな彩が、パステルの美しいラインを形作ります。
艶やかな春の息吹に包まれ歩いた道のり。もう一度振り返り、みちのくの春を胸いっぱいに吸い込みます。
もうまもなく平泉を離れなければならない時間に。名残惜しくも駅へと歩みを進めると、杉に守られた古いお堂と小さな桜が。
「夏草や 兵どもが 夢の跡」
学校で奥州藤原氏や金色堂、そしてこの句を教わり知った平泉。全くと言って良いほど歴史に興味の無かった、いや、今でも変わりの無い僕ですが、各地に「ここは!」と惹かれる場所があります。平泉もまさにそんな場所でした。
夢の跡、か。それは夢の後の寂しさでは無く、夢の跡が今でも感じられる。そんな土地なのではないか。初めて平泉を訪れ、僕なりに感じたこと。
今度ここへ来るときは、時間をたっぷり用意して来たい。またひとつ、再訪しなければならない土地が増えました。
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