程よくご機嫌になったところで、食堂やはぎへ。今回予約したプランは、自炊部寝具付き、朝食の他に夕食にここの手打ちそば付きのプラン。それで1泊3880円という驚きの安さ。
ということで、この4日間、夕飯の〆に美味しい手打ちそばを楽しむことができます。
旅館の雰囲気にピッタリな、古民家のような店内。奥には自由に食べられるお漬物とお茶が置いてあります。
メニューはそばから丼物、一品料理やラーメン、ナポリタン、甘味までと多岐に渡り、それこそ自炊しなくても全然OK。朝食は予約制ですが、昼も夜も営業しているので、湯治初心者には心強い味方です。
温かい雰囲気に包まれのんびり待っていると、お待ち兼ねのおそばが運ばれてきました。このプランでは更科そばと田舎そばの2種類から選ぶことができ、それぞれもりとかけを選べます。
今日は田舎のかけを注文。こちらのおそばは十割そばですが、パサつきは全く無く本当に美味しいおそば。田舎そばの持つ力強いそばの風味が、温かいだしでより一層引き立ちます。
ボリューム満点のおそばに大満足し、重たくなったお腹を抱えて再び自室へ。用意されていた布団を敷いて、寝床の準備をします。これから4日間、こたつとふとんが僕の居場所。夢のような生活です。
布団も敷き終わりお腹も落ち着いたところで再び温泉へ。自炊部宿泊者は、自炊部の大沢の湯と薬師の湯、菊水館の南部の湯、山水閣の豊沢の湯に入ることができます。女性なら専用のかわべの湯も利用できるそう。
去年訪れたときに豊沢の湯と大沢の湯は入浴済みだったので、まだ入っていない南部の湯へ行くことに。豊沢川に架かる曲がり橋と淡い光を灯す茅葺の菊水館の組み合わせは、まるで昔話のひとコマのよう。
壁も浴槽も木造りの南部の湯。浴場には木の良い香りが立ち込めています。今は寒い時期なので窓がはめられていますが、春から秋には半露天になるそう。その時期にはまた違った気持ちよさがあるのでしょうね。
でも、このこじんまりとした木の落ち着いた雰囲気もまた良いもの。肌触りの良い浴槽に体を預ければ、時が経つのも忘れてしまいそう。
落ち着いた雰囲気を持つ南部の湯を愉しみ、自炊部へと向かいます。曲がり橋からは闇夜に浮かぶ自炊部の建物と大沢の湯が。泊まってこそ味わえる、夜の大沢の魅力というものがそこかしこに散りばめられています。
いつもの旅は、ひとつの旅館に1泊限り。温泉とお酒と本を繰り返してのんびり過ごしているつもりでも、その空気感を味わうために意外と忙しいもの。
でも、今回ばかりは慌てる必要は無い。4日間を掛けて、じっくり、のんびり楽しめば良いのだから。
部屋に戻り茶碗酒を傾けつつ本を読み耽る。岩手はまだ春浅い。気がつけば体が冷えているので、思い出したかのように再び温泉へ。風情の違う4つの浴場。気の向くまま、足の向くままに湯巡りを楽しみます。
16時前にチェックインしたというのに、もうどれほど本とお酒と温泉を繰り返したでしょうか。時間を気にせずちびちびやる酒は、いつも以上に美味しく感じる。飲む量はいつもと同じでも、その満足感は比べ物になりません。
そんな本日最後のお風呂に選んだのは薬師の湯。自炊部では比較的新しいという若葉荘を通っていきます。この雰囲気、何となく見覚えのあるような・・・。そう、お隣の藤三旅館自炊部に相通ずるものがある。コンクリでできた壁と木の扉が、そんな錯覚を呼ぶのでしょう。
薬師の湯は若葉荘の1階にあり、そのフロアはきれいにリニューアルされています。古き良き雰囲気はきっちり残し、必要なところはきれいにする。これが快適に過ごせる湯治場と評判になる理由なのでしょう。
暖簾をくぐると目に入る緩い弧を描く階段。外はリニューアルしていても、この渋い佇まい、堪りません。
浴場もまた渋い雰囲気で、石張りの床にタイル張りの浴槽。シャワーなどはありませんがカランがあるので、頭や体を流すこともできます。
大沢の湯はとろりとした肌に優しい美肌の湯。そんな柔らかな温泉が惜しげもなく掛け流される湯船に浸かって上を向けば、見上げるほどに高い天井。派手さは無いが自炊部に良く似合う。純粋に湯を楽しめる、そんな造りのお風呂です。
素朴な浴場の雰囲気に体も心も温まる湯治の夜。帰り道、木枠の窓の向こうには、暖かい灯りを障子から漏らす江戸時代の建物。
いつもならこの雰囲気は今しか味わえないと、無意識のうちに必至になっているはず。でも、今日は違う。明日も、あさっても、その次も。飽きるまでこの風情に包まれることができるのです。
本も丁度区切りの良いところだし、お酒も1本終わったし。さあ、もう寝るか。
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