毛越寺でかけがえの無い時間を過ごし、次の目的地である中尊寺を目指しのんびり歩きます。
毛越寺のすぐ横には観自在王院跡という史跡庭園が広がり、こちらも浄土庭園として造られた舞鶴が池があります。鏡のように穏やかな池は、柳や桜、芝生という春の柔らかな彩りに包まれています。
見るからに柔らかそうな色をした芝生の小径に彩を添える満開の桜。今の時期しか見ることのできない、特別な景色。
桜を引き立てるように風になびく柳。その美しい組み合わせは、まるで自然の作り出した生け花を見ているかのよう。
大小の桜に枝垂桜が織り成す山里の春。遅い春の訪れに、我先にと力いっぱい咲き乱れます。
広い史跡公園を抜け、そのまま裏道を歩きます。この道は国道より一段高いところを通っており、眼下には国道の見事な桜並木が一筋の帯となって横たわっています。
一山越えて国道に合流。先ほど見えていた桜並木が出迎えてくれました。
毛越寺からのんびり歩くこと20分程度、中尊寺の参道入口に到着。小学生の頃から来てみたかったこの地に立てる喜びを噛みしめます。
中尊寺へは、月見坂と呼ばれる急坂の参道を登ります。その角度はかなりのもので、歩き始めてすぐに額に汗が浮かんできます。
立派な杉並木に守られ、荘厳な雰囲気に包まれる月見坂。もうすぐ会える金色堂への思いを馳せつつ、息を弾ませながらのんびり登って行きます。
途中視界が開けたと思ったらこの絶景。桜の海と霞がかった平泉の街を一望の下に。街を流れる大河北上川がキラキラと輝いています。
麓から登ること15分、やっと中尊寺本堂に到着。下から上がってくるには、足腰にそれなりに自信が無いと辛いかもしれません。
中尊寺には大小いくつもの支院があり、ひとつひとつにお参りしようと思うとかなり時間が掛かりそう。今回は時間の都合で、本堂と金色堂だけお参りすることに。まずは本堂でこの地に来られたお礼をします。
本堂でお参りをし、ついに金色堂とご対面。20年来の願いが叶う瞬間です。
金色堂というと金箔に包まれ輝く姿の印象が強いのですが、実際に生で間近で見てみると、金箔の他に螺鈿細工や漆など、細部にまで美しい装飾が施され、大袈裟ではなく息を呑み鳥肌が立つほど。
それほどきらびやかであるにもかかわらず、嫌味な派手さを感じさせず見る者の心を安らかにさせる。それは敵味方の隔てなく失われた者の魂を鎮め、理想の国を造ろうとしたその理念がそうさせるのでしょう。この美しさは、僕の力ではお伝えすることができません。是非訪れて、生でその力に触れてみていただきたい。
金色堂の裏手には、可憐なかたくりの花がたくさん咲いていました。その鮮やかでいて控えめな紫色に、しばし言葉を忘れて見入ってしまいます。
こちらは金色堂の旧覆堂。団体さんに説明していた地元のガイドさんの話によると、昔この覆堂で金色堂が守られていた頃は、金色堂に触れることができる程の近さで見ることができたそう。あの美しさを、ガラスを隔てず至近距離で見られたら、その迫力はものすごいものであったことでしょう。
想像を遥かに超える美しさで迎えてくれた金色堂。その余韻に包まれつつ、月見坂を下ります。
東北の地に浄土を。その想いが詰まった金色堂を見た後に眺める平泉の街はとても穏やかで、本当にここが浄土であるかのような錯覚を覚えます。
桜色、萌黄色に春霞。パステルカラーに包まれた平泉の街並みを、心ゆくまで眺めるのでした。
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