小一時間の田園散歩。部屋と温泉の往復もなんとも贅沢な過ごし方ですが、連泊でもしない限り歩くことも無いごく普通の集落を散歩するというのも、これまた贅沢な時間。いい気分転換になりました。
軽い運動をした後は、やっぱり温泉。大沢の湯でのんびり浸り汗を流した後は、やはぎでお昼を頂くことに。
今回注文したのはカレーうどん。玉ねぎ、お肉の入ったまろやかなカレーだしに、細めだけれどもモチモチのうどんが入っています。
このカレーうどん、素朴だけどもとってもおいしい。近所にあったら食べに行きたいくらい。わざわざ食べに行く、というより気軽にふと立ち寄りたい。そんなシンプルで温かい美味しさ。本当にここのお料理は美味しいですね。
温泉の後のカレーうどんで汗だくになった後は、部屋で小休止。売店で仕入れた岩手のエーデルワイン片手に、のんびりつくしの袴取り。
障子を開け、窓から差す柔らかな光の下、ちびちびやりながら指を黒くしてつくしの下ごしらえ。なんてこと無い、だけれどもこの上なく幸せで穏やかな昼下がり。
つくしの袴も取り終わり、お腹も落ち着いたところで再びお風呂へ。午後ののんびりした時間を静かに味わおうと、菊水館の南部の湯へ向かいます。
春まだ浅い山を背景に佇む、渋い茅葺屋根。まるでジオラマであるかのような早春を凝縮した風景に、しばし見入ってしまいます。
こちらは美味しいと評判の山水閣の夕飯が付いてお手軽なお値段。もし大沢温泉に1泊するならば、是非泊まってみたいものです。茅葺の下から眺める自炊部の建物も、きっといいことでしょう。
木の香漂う南部の湯でひとり瞑想に耽り、自室へと戻ります。曲がり橋越しに望む自炊部。増築を重ね建築年代こそ違えど、江戸時代から延々と続くこの自炊部の歴史が滲み出してくるかのような重厚さ。
今まさに自分はそこに4連泊中。去年訪れ泊まってみたいと憧れたこの地に連泊する。その幸運に恵まれたことに、改めて感謝をするのでした。
ワインと本を相棒に過ごす湯上りの昼下がり。そんな贅沢な時間を過ごしていると夕方に。豊沢の湯で頭を流し、今夜の一献の準備に取り掛かります。
本日の仕入れは、豆腐、白菜漬け、花巻納豆、卵。これでお支払い500円台。後はお向かいの酒屋で買った1食分のめんつゆ(なんと30円でおつりがくる安さ)と、自分で摘んで袴を取ったつくし。
初めて調理するつくし。下茹でして見ると、思いがけずきれいな桜色に。春の使者であるつくしは、その色まで春を感じさせてくれます。
お盆に載せた自作のおつまみを運ぶのも、今夜が3度目。だんだんとこの場に馴染んで来た感があり、とても嬉しい。
部屋へと戻り、今夜も自室のコンロで煮てみます。
今夜のお供は、またまた桜顔酒造の瓶囲い純米熟成酒。訪れたスーパーが桜顔のご贔屓だったのか、あまりお土産屋さんで見ない桜顔酒造のお酒がたくさん売っていました。
購入時には酒造会社は特に見ず、地元ならではの見たことの無いお酒を手に取っただけですが、結果的に桜顔酒造やその蔵で醸造されたお酒ばかりになりました。
このお酒は瓶で6年熟成させただけあり、とてもまろやかでとろりとコクのあるお酒。それでいてしつこくもなく、食中酒にぴったり。
初日に飲んだフレッシュな南部富士とはまた違った印象で、これまた美味。僕はきっと桜顔と相性がいいのでしょう。がっつり好みのお酒に出会えて大満足。
そんなお酒に合わせる今日の献立。
- めんつゆで味付けしたつくしの卵とじ
- 刻んだ白菜漬けと花巻納豆
- 白菜漬け
この花巻納豆が大粒で豆臭く、ちょっとした歯ごたえがあるのが美味。納豆好きの僕はすっかり虜になってしまいました。
つくしは春の野草からイメージしていたものより全くクセがなく、シャキッとした食感が心地良い素朴な美味しさ。
こんなにクセが無いのなら、お浸しにしたり酢味噌で食べたりと、色々試してみたいところ。でも、残念ながら近所にはつくしの生える環境が無いのです。来年もまたつくしを食べにここへ来ようかな♪
自分の口から聞こえるしゃき、しゃきという音を愉しみつつ傾ける茶碗酒。かけがえの無い春の一献をしみじみやっていると、瓦斯自販機の切れる音が。鍋蓋からは湯気が勢い良く出ています。
本日のメインは、豆腐の白菜漬け鍋。作り方は至って簡単、白菜漬けの汁を水で割り、切った白菜漬けと豆腐を煮るだけ。そんな簡単料理ですが、これの旨いこと。
漬物の持つ発酵食品ならではの旨味が豆腐に染み渡り、火の通った白菜は適度な柔らかさと少しだけ残るシャキシャキ感。一緒に漬け込まれた鷹の爪がほんのちょっぴり辛さを添え、とてもいいアクセントになっています。相方が漬物嫌いでなければ、間違いなくうちの鉄板おつまみになりそう。
具材を合わせただけの、文字通りシンプルなおつまみ。だからこそ食材そのものの味が楽しめ、お酒の味も邪魔しない。自炊部での湯治の夜に相応しい、贅沢な晩酌。
そんなほろ酔い気分で眺めるレトロな部屋。古いがらも清潔にされたこの部屋はとても居心地が良く、3泊目ともなるとすっかり自分の部屋であるかのよう。大沢温泉自炊部には、本当のリラックスが待っている。旅が終わる前から、再訪の予感に支配されるのでした。
誰にもじゃまされることなく、ひとりでしみじみ味わう岩手の酒。残り半分を宵の楽しみに取って置き、やはぎへと向かいます。
今晩注文したのは、更科のもり。昨日の田舎とは打って変わって、細くて白い上品なおそば。本当に十割かと思うほど喉越しが良く、細い麺でもしっかり味わえる強いコシ。お酒を飲んだ喉に心地良い冷たさを運んできてくれます。
本当にここのおそばは美味しい。宿の前にのぼりを立てて自慢するだけのことはあります。そしてこのボリュームで600円というお安さ。東京ではまず味わえません。
自炊部で過ごす3度目の夜。初のつくしに舌鼓を打ち、熟成されたお酒に酔うかけがえの無い夜。お風呂と本とお酒を心ゆくまで繰り返し、幸福に包まれながら床に就くのでした。
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