青と白に染めあげられたコンドイビーチを離れ、再び島の集落方面へと走ります。家が建ち並んでいるにもかかわらず、人工の色彩を全く感じられないというこの不思議。この空気感は竹富島ならでは、唯一無二のもの。
楽園での最後の時間を噛み締めつつサイクリングしていると、三線の音色と共に現れる水牛車。自分の暮らす街と同じ24時間がここにも流れている、そのことがにわかには信じがたいような穏やかな時間軸。
集落の中心部へと戻り、有名な展望スポットであるなごみの塔へと向かいます。すると残念ながら老朽化のため閉鎖中とのこと。去年は行列ができていたので諦めましたが、こうなると知っていれば登っておけばよかったかも・・・。
といっても、塔の直下からでもこの素晴らしい眺め。赤瓦と漆喰が独特な家並みの先には、碧い海を隔てて石垣島の島影も。どこを切り取っても美しい。竹富島は本当に居るだけで幸せを感じさせる島。
海に里にと存分に竹富の空気を味わった後は、この旅最後の八重山の味を。今年も八重山そばが美味しい『竹乃子』にお邪魔します。
あとはもう帰るだけ。自転車も押して行けばいいので、最後のオリオンを愉しむことに。珊瑚の石垣を背景に、結露を浮かせる冷たいジョッキ。一口飲めば、程よい薄さのビールが喉を一気に駆け下ります。
爽快なオリオン生に合わせるのは、カリカリポーク。スパムをこんがりと焼いたシンプルなものですが、八重山の空気に包まれて食べれば、一味も二味も三味も違います。
よしずの下でビール片手に過ごす昼。陽射しさえ避ければ意外と涼しく、頬を撫でる島風を感じていればいつまでもこうしていられそう。エイサーシーサー君、また来るよ!絶対に!
最後のオリオンの爽快さを余韻に残し、この旅の〆を味わいます。注文したのはもちろん八重山そば。今回はそれに沖縄の炊き込み御飯であるじゅーしーを付けました。
こちらの八重山そばは本当に穏やかといった印象。去年生まれて初めて沖縄入りし、初めて口にしたのがこの八重山そば。僕の中での八重山料理のイメージは、ここで決まったと言っても過言ではありません。
それまでかつおだしがガツンと濃いイメージのあった沖縄そば。ですが、ここの八重山そばは旨味を感じさせつつ、だし臭くない。それに驚いたことが昨日のことのように思い出されます。
それ以降お昼は八重山そばばかり食べていますが、どこもやっぱりだしが優しい。本島の沖縄そばが未経験なので何とも言えないのですが、やっぱり僕は八重山そばが心底大好き。
じゅーしーは切り昆布やにんじん、豚肉などの旨味がじんわりと染みだし、これまた優しい美味しさ。程よく残された豚の脂が、ご飯をコク深くより旨いものにしてくれる。見た目は普通の炊き込みでも、この独特な美味しさは自分では出せません。
からりとした心地よい風を浴びつつ味わう美味。ピィヤーシとコーレーグースをきかせたそばのだしを最後まで飲み干し、名残惜しくもこの旅の味覚はこれにて終了。
幸せな満腹感を抱きつつ、のんびりと歩く白砂の道。黒い珊瑚の石垣を彩るように咲くハイビスカスは、灼熱の陽射しすら喜んで受け止めているかのよう。
港から『石垣島ドリーム観光』の高速船に乗り込み、竹富島をあとにします。独特な時間が穏やかに流れる竹富島。再びその地へ戻って来られるよう、離れゆく島影に想いを託します。
竹富島から15分足らず、あっという間に石垣離島ターミナルに到着。『カリー観光』の路線バスに乗り換え、ついについに南ぬ島石垣空港へとやってきてしまいました。
シーサー君、今年も本当に楽しかったよ。こうして今年も来ることができたんだ。また来年会おう!約束だよ!
なんとなくシーサー君にそう約束すれば、それが本当のことになりそうで・・・。思わず胸が熱くなります。
空港へと入り、最後に石垣島にお別れを告げるためにとのぼった展望デッキ。そこに広がるのは、青、蒼、碧。五感の全てにその色彩と太陽、そして島の風を灼きつけます。
程なくして、二色のブルーに彩られた787が到着。この翼が、僕らを東京へと連れ戻す。行きは良いよい、帰りは辛い。気軽に来ることができる距離ではないことを知っているからこその、拭いきれないこの切なさ。
快適が約束された787型機へと乗り込み、唇を噛みしめ待つその瞬間。エンジン音が轟きはじめ、気がつけば石垣島から飛び立ってしまった。
さようなら、石垣島。そしてありがとう、八重山諸島。機首を大きく持ち上げた飛行機は、僕のそんな未練を断ち切るかのように上昇を続ける。だんだんと小さくなりゆく石垣島。襲い来る切なさに潰されぬよう、その碧さをただひたすらに見つめます。
空を目指し続ける飛行機は、意を決したように大きく旋回。そのコースは島に沿うようで、まるで最後の石垣島を僕らに見せてくれているかのよう。
島影と珊瑚礁に寄り添うように飛んでいた飛行機も、石垣島の最北端を過ぎて本当にお別れ。
一年前、35歳にして初めて知った沖縄という楽園。その歳になるまで自分でも知らなかった南国属性に、我ながら心底驚いた。
その感動の一年後、再びこうして来ることができた八重山の地。初めてというフィルターを抜きにしても、やっぱり僕はここが好き。そのことが確認できただけで、僕にとってはもう充分。
だって本当に好きなのならば、また来ればいいだけのこと。マリンスポーツをしなくても、アクティビティーに興じなくても、この豊かな青さがあるだけでいい。
人生二度目の八重山地方。濃厚で鮮やかな5日間は、絶対に忘れられない。そしてきっと来年も、その次の年も、この青さに逢いに来よう。この強い決意にいつしか切なさは掻き消され、東京へと戻る僕の心は珍しく晴れ晴れとしているのでした。
コメント