前日の早寝が功を奏したのか、日本酒やらワインやらを飲んだにもかかわらずすっきりとした目覚め。6時過ぎに起床し、身支度を整えはじめました。
洗面所でシャカシャカ歯磨きしていると放送が。夜行列車名物の、所謂おはよう放送というものです。「みなさま、おはようございます。本日は○月○日○曜日、時刻は○時○分です。」というような言い出しから始まります。
この放送を聴くと、あぁ、一晩掛けて走って、日付も変わったんだなぁ。という、夜行列車でしか味わえない旅情を感じます。爽やかな朝を迎えてこの放送を聴く、この瞬間が大好き。寝台列車の醍醐味のひとつです。
もう何度か乗っている寝台列車。慣れた手つきで降りる準備を淡々とこなし、程なくして秋田駅に到着。遅れがちなあけぼの号ですが、この日はほぼ定時での到着でした。
秋田到着は6時45分と早く、次の乗換までだいぶ余裕があるので、先頭まで行ってみました。昨日上野を出発したときに牽引していた機関車は、途中この機関車にバトンタッチ。北斗星に乗る機会の多かった僕にとっては、こちらの方が馴染みがあります。
長距離の頑張り、お疲れさま。この先青森まで、残りも頑張れ!そんな言葉を心の中で掛け、出発を見送りました。
この日の秋田はかなりの寒さ。リゾートしらかみが入線するまでの時間、暖かい待合室で時間をつぶし、お弁当を買い込んでいざホームへ。
朝早い出発のリゾートしらかみ1号ですが、ホームでは結構な数の人々が入線を今か今かと待ちわびていました。そしていよいよ登場した、リゾートしらかみ。今回はくまげら編成が来ました。
リゾートしらかみには、青池、橅、くまげらと3編成あり、車内設備には大差ないものの、インテリア・エクステリアともにそれぞれの編成に合ったイメージのカラーリングが施されています。
出入り口付近には、大きなロゴが貼られています。みんな思い思いの場所で記念撮影。電車が好きな人も、そうでない人も、特別な列車に乗るときは、みんな嬉しそうな顔をしています。
くまげら編成は、現時点では3編成中一番新しいもの。その分車内もとてもきれいです。
特急列車に使われるものと同じ座席が並び、前後の間隔はグリーン車以上。大きな窓と合わせ、開放感のある快適な車内となっています。これが指定席券だけで乗れる快速列車なのですから、ありがたい限りです。
早速座席に着き、朝ごはんを頂きます。この日の朝食は、秋田駅で購入した「白神浪漫」。橅林をバックに、日本海の夕日とリゾートしらかみの写真が配された、五能線のいいとこ取りのパッケージが目を引きます。
これは地元の調製元である関根屋が、くまげら編成のデビューを記念してJR東日本と共同開発したというもの。まさにこの車内で食べるのにもってこいです。
蓋を開ければ、五能線沿線の名産が盛りだくさん。基本は炊き込みご飯がベースとなっています。まいたけの香るだしで炊かれたあきたこまちはふっくらもっちりとし、きのこの香りや他のおかずを邪魔しない程度の塩梅。
上に載るまいたけやしめじと一緒に頬張れば、口の中がきのこの香りで満たされます。さらに畑のキャビアと評されるとんぶりや、大粒のいくらのしょうゆ漬けが食感や風味のいいアクセントとなっていて美味。
中央に鎮座する大型のホタテのてんぷらは、絶妙な火の通し加減で駅弁とは思えないほどのホタテ感。噛めばホロホロと解け、磯の心地良い香りが溢れてきます。ホタテは少しでも火を通しすぎるとパサ付くので、この仕上がりには驚きました。
おかずとして添えられているハタハタのから揚げは、白身の旨さが活かされた香ばしい一品。小粒でも存在感のあるしじみの佃煮や、いぶりがっこ、ちょろぎ、こごみの胡麻和えといった名脇役が並びます。どれもきちんと美味しい。本当に最近の駅弁の完成度には目を見張ります。
上野から乗換無しで秋田まで来た僕は、この美味しい駅弁で東北に来たことをやっと実感しました。
ふと視線を外へと移せば、刈り取った後の田んぼが延々広がっています。そりゃこんなところで育てれば、美味しいあきたこまちが出来るはずだ、とご飯を口に運びつつ、ひとり納得してしまいました。
列車は奥羽本線を順調に走り、東能代駅に到着。ノスタルジックビュートレイン以来、僕が憧れ続けてきた五能線が、まさにここから始まります。
十数年来の願いが叶い、今回ここへ立つことができました。その感慨とこれから始まる未知の鉄路への期待が、僕の胸を震わせます。
東能代を出発し、列車はいよいよ五能線へ。程なくして能代駅に到着。ここはバスケの街だそうで、停車時間中にホームに作られたゴールに入れば、お土産がもらえます。
外は寒いし、車内からの視線もちょっと恥ずかしかったのですが、駅のホームでのバスケなんて、そうはできない体験。チャレンジしない手はありません。
バスケットボールを手にするのは何年振りでしょう。やっぱり一回目は外してしまいましたが、再度並び直し、2度目でゴール。
元々球技はからっきしダメなほうなので、2回目でのゴールにすっかり気をよくしてしまいました。ゴールした記念として、秋田杉にリゾートしらかみの焼印が押されたハガキをもらいました。
田んぼや住宅地の中を列車は進み、行く手には世界遺産・白神山地がうっすらと姿を現し始めました。
山はどんどんと近づき、車窓からでも紅葉していることが分かる距離に。これから向かう場所も、きれいに紅葉しているのだろうか、そんな期待に胸が膨らみます。
住宅地から田んぼ、そして海と山の境へ。そんな変化を見せつつ走るリゾートしらかみ。まもなく途中下車をし、白神山地の誇る神秘的な自然へと迫ります。
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