目覚めの景色もこれが最後。初めての同じ宿での連泊湯治。4泊5日は長いと思っていましたが、いざここで過ごしてみると、大袈裟ではなくあっという間に過ぎ去ってしまいました。いつもこの瞬間は寂しくなるのですが、連泊して愛着が湧いた分、いつも以上に切なさが募ります。
幾度と無く入った、この大沢の湯。何度入っても、飽きることなく楽しませてくれる。にごり湯のように派手さはありませんが、なめらかで肌触りの良いお湯は、心の奥までその優しさで包み込んでくれました。
滞在中、朝昼晩と通ったこのやはぎともしばしの別れ。最後の朝食を、その素朴さを味わうかのようにゆっくり、ゆっくり頂きます。
心身ともにどっぷりと浸かった大沢温泉との別れの時が近づいてきました。これで本当に最後。雨に打たれながら、この大沢の湯の感触と、浅き春の景色全てを焼き付けます。
もうすっかり自分の部屋のように馴染んでしまったこの部屋ともお別れ。今までの感謝を込め、布団をきれいに畳み、ごみを分別して捨てて立ち去ります。ありがとう。振り向きざまに何度も心で唱えるのでした。
同じ宿に4泊もするという、今までの僕では考えられなかった旅のスタイル。そんな初めての経験を、大沢温泉はその魅力を以って素晴らしいものにしてくれました。
連泊しても飽きない。それどころか、時を過ごすほどにもっと居たくなる。これぞ、古くから愛される湯治宿の実力なのでしょう。
この魅力を知ってしまうと、もう1泊だけでは気が済まない。ここに来るなら必ず連泊せねば。またひとつ、来たい場所が増えてしまった。嬉しい悩みに今後も頭を抱えそうです。
雨に煙る田園風景の中、『送迎バス』に揺られ花巻駅へと向かいます。
いつもなら1泊ずつ転々とする温泉巡りの旅。いつも一期一会なので、去り際にそれほど寂しくなることも無いのですが、今回ばかりは様子が違う。
3度目の訪問となった花巻という地で、今回初めて味わった湯治体験。ここを離れることに、少なからず寂しさを覚え、その切なさを煙る車窓に重ねます。
秘湯に目覚めてからの短期間で3回の訪問。また新しい過ごし方を知ってしまったこの地に、これからもきっと通うことになる。強い予感を決意に変え、寂しい気持ちを振り払うのでした。
ありがとう、大沢温泉。今度は藤三旅館はしご湯治もしてみたい。花巻よ、なんて罪作りな場所なんだ・・・。
帰りは新幹線で東京までひとっ飛び。帰りの新幹線の時間まで、憧れの地を巡ることにします。
花巻駅から東北本線に揺られて到着した平泉駅。昨年世界遺産に登録され、言わずと知れた東北の極楽浄土の玄関口です。
小学校の教科書で見た金色堂。それ以来、ずっと来て見たいと願っていたこの地。世界遺産になる前から憧れていた場所に立てた喜びを噛みしめ、逸る気持ちを押さえ平泉散策へと足を踏み出すのでした。
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