念願の地獄めぐりを満喫し、今宵の宿にチェックインすることに。今回お邪魔したのは、大通り沿いに位置する『黒田や』。大きなホテルです。
広いロビーでチェックインを済ませて部屋へと向かいます。とてもきれいな館内で、廊下のアーチ状の天井もおしゃれな感じ。1年振りの秘湯ではない温泉ホテルに、ちょっとだけドキドキしながら歩きます。
通されたのは12畳の広いお部屋。外が明るいので全体的に暗く写ってしまっていますが、本来は明るい室内です。建具などは落ち着いた色が使われ、明るいながらも落ち着ける和モダンといった雰囲気。一晩快適に過ごせそう。
窓から顔を出してみると、鉄輪から明礬へと続く山並み、そして湯けむり。
そして反対側へと目をやれば、別府の街の先に広がる青い海。頬を撫でる風が心地よく、しばらくこの眺めを楽しみます。
落ち着いたところで、待望の温泉へ。初の鉄輪温泉入湯にウキウキしながら大浴場へと向かいます。
まずは内湯。大きな石造りの浴槽には、少しだけ濁りを見せる源泉が惜しげもなく掛け流されています。泉質はナトリウム塩化物泉、肌触りの良い良く温まるお湯です。
こちらの宿を選んだ理由のひとつがこの露天風呂。別府は古い温泉地だからなのか、旅館の露天風呂は小さそうなものばかり。外湯へ行けばいいのでしょうが、うちは夜は宿から出ないのでやっぱり広い露天風呂が欲しいところ。そんな中見つけたのがこの宿でした。
その期待にしっかり応えてくれるこのお風呂。湯は適温に保たれ、小さい湯船は熱めになっています。広い湯船の中で自分好みの温度と場所を探し、そこでじっくり鉄輪の湯を味わう。まさに至福の瞬間です。
地獄めぐりで歩き回った体を鉄輪の湯でほぐし、部屋で幸せ湯上りタイム。良く温まる温泉で火照った体を、喉越しの良いスーパードライがうるおしてくれます。温泉に来たらやっぱりこれ。湯上りのビールが日常の疲れを一気に流します。
この宿を選んだ最大の理由が、ふくれっ面のあの子を食べるため。今回の旅行を決めた時からずっと、ずっと楽しみにしていたアイツとの対面の時を、暮れ始めた別府の街が教えてくれました。
いよいよ夕食の時間。浮足立つ心を抑え、まずは前菜から頂きます。ますの押し寿司やきんかん味噌、甘露煮など、美味しい前菜がちょっとずつ。丁度よい塩梅の味付けが並び、早くもこの後のお料理への期待が膨らみます。
そして、来ちゃいましたよ!!ふくれっ面のこの子♪大分のものは美味しい!!と聞いてから、ずっと食べたかったふぐ。
大分の鉄刺しは少し厚めに切るのが特徴とのこと。中居さんの説明を聞いてから刺身を見て納得。僕の知っているてっさの1.5倍位の厚みがあります。だから、お箸でぐわっとしなくても、1~2切れずつでふぐの存在感十分。
コリコリ、もっちり、ねっとり。3つの食感を併せ持つこのふぐは初めての体験。美味しい、美味しいよぉ(涙)厚みがある分、しっかりとふぐの旨味が詰まっています。
噛めば噛むほど旨いてっさ。幸せだぁ。そして2人前でこのボリューム。てっさ、ふぐ皮共に食べても食べてもまだあるという幸せ♪
続いてはお吸い物。上品なお出汁に、蓮根の真薯や枝豆白玉団子などが入っています。そして印象的だったのが手作り焼目唐墨。このからすみを崩すと独特の旨味がお出汁に広がり、印象ががらっと変わります。
こちらはあく巻玉あられ揚げ。あく巻ってなに?と思っていたところ、ちょうど中居さんの説明が。もち米を竹皮で包み、木灰の灰汁で煮て作る、鹿児島の郷土のお菓子だそう。こちらの料理長さんが鹿児島出身だそうで、そのあく巻を料理にアレンジしたものだそうです。
初めてのあく巻に、ワクワクしながらひと口。何とも言えないもっちり感と、鼻へと抜ける独特の風味。揚げ衣のあられの香ばしさも加わり、初めての美味しさ。
お次は湯葉とろろ小茶碗蒸し銀餡かけ。あつあつの茶わん蒸しを掬うと、とろとろの湯葉ととろろが。すべてが一体となり、つるんとほっこりするような優しさでちょっと小休止。
そしていよいよ運ばれてきました、鉄ちり鍋。別府はふぐが有名なので、冬にはどの宿にもふぐプランがありましたが、見る限りその大多数が小鍋スタイル。
せっかくふぐを食べに来たのに小鍋じゃぁなぁ。というのもこちらの宿を選んだ理由のひとつ。その願い通り、たっぷりサイズの鉄ちりセットです。
鉄ちりを作っている間に運ばれてきたふぐ唐揚げ。東京では何度か食べましたが、別に無くてもいいよね、と思っていました。が、これを食べて目からウロコ!
肉付きの良い部分を惜しげもなく唐揚げにしてあるのでもったいないなぁ、などと思いながら頬張ってみると、ぶりんっとした弾力と溢れる旨味。ふぐの唐揚げって旨いんだなぁ。これを書いていてもよだれが出てきてしまうほど。
予想外の絶品ふぐ唐揚げをキャッキャ言いながら楽しんでいると、鉄ちりがいい具合に出来てきました。
先ほどの写真の通り、鍋のふぐは骨のついたあらの部分がメイン。またそれが旨いこと!あらと言ってもしっかり身が付いており、骨から旨味やコラーゲンがこれでもかというほど染み出ています。何でこうも東京のものとは違うんだろう。同じとらふぐとは思えない旨さ。味が無くなるまで骨をしゃぶってしまいます。
そして最後は、やっぱり雑炊。ふぐのだしが凝縮された雑炊は、筆舌に尽くしがたい美味。あの淡白な魚から何故これほど旨味が出るのか。ふぐの独特な美味しさには毎度のことながら驚かされます。
ご覧の通りのボリューム満点の夕食。ふぐのみならずそれぞれのお料理も美味しく大満足。大分地酒の智恵美人も飲んでいたので、もう倒れそうなほどお腹いっぱい。
ずっと楽しみにし続けていた大分のふぐ。その旨さは想像を遥かに超え、大袈裟ではなく感動を覚えるほど。これだけのふぐを東京で食べたら、と考えると、宿泊費込みで満足以上のお安さ。
こんな美味しいふぐ食べたら、もう東京で食べられないよ。満足感の中に、ちょっとだけ危惧する気持ちが芽生えるのでした。
あぁ、別府が近かったらなぁ。お湯良し、景色良し、そして味良し。ほんと別府大好き。別府の煌めく夜景を眺めつつ、心地よい充足感に酔いしれるのでした。
コメント