昨夜は別府の街で大分の恵みを思う存分堪能し、今日はいよいよ別府地獄めぐり。ホテルの近くのバス停から、『亀の井バス』の鉄輪方面循環バスで地獄へと向かいます。
別府地獄めぐり、実は僕にとって積年の想いが詰まった場所。本来なら卒業旅行のツアーで巡るはずだったのですが、3月というのに大雪に見舞われ、結局1か所しか見ることのできなかった別府の地獄。13年間温め続けた思いを胸に、地獄への到着を待ちきれない気持ちでいっぱいです。
亀の井バスに揺られることしばし、血の池地獄前で下車。まずは名前のインパクトの強さが印象的な血の池地獄を見てみることに。いかにもそれらしい鬼さんの奥からは、もうもうとした湯気が立ち上ります。
この日は時折雨交じりの天候だったため、湯気がもうもうと立ち上り写真を撮るのに一苦労。こんな写真しか取れませんでした。(腕の問題?)
写真ではあまり伝わらないかもしれませんが、池の色は本当に血のような鉄っぽい赤色。今でこそ周辺が整備されてきれいな公園のようになっていますが、昔の血の池は、本当に地獄の形相だったに違いありません。
実際、爆発を防止する泥の攪拌作業をする前までは、この熱く煮えたぎった泥をたびたび爆発させていたそう。昭和初期の白黒写真が展示されていましたが、その威力が手に取るように伝わってきます。
そんな暴れん坊な血の池地獄ですが、そこに沈殿した熱泥は軟膏や染色など、昔から人々の暮らしの役に立ってきたとのこと。血の池地獄の横には、その効能を手軽に楽しめる足湯が併設されており、入園者は無料で浸かることができます。
血の池地獄の源泉から直接引いたこのお湯は、ph2.8の酸性の含鉄泉。酸性が強いので肌へのあたりが強いかな?と思いつつ足を入れてみると、意外と心地よい肌触りのお湯。でも、浸かってしばらくするとじんじんと芯まで温まり、長湯はご法度な予感。見た目通り、力強いお湯といった印象です。
続いて、すぐ隣に位置する龍巻地獄へと向かいます。この龍巻地獄は間欠泉のため、いつでも見られるという訳ではありません。
諸条件により前後するようですが、概ね30~40分間隔で噴出するとのこと。先に龍巻地獄の噴出予定を聞いて、血の池とどちらを先にするか考えたほうがいいでしょう。僕らは何も考えず先に血の池へ向かったため、結構待つことになってしまいました。
待つこと30分以上、ついに湯面が騒がしくなってきました。と思ったら、すぐにこの勢い。屋根でせき止めていますが、これを外せば50m程度まで噴き上がる力があるそう。間近で見れば、その迫力に圧倒されます。
ゴォ~!という轟音と膨大な水蒸気と共に噴き上がる温泉。その姿はまるで地球がクジラのように呼吸をしているよう。辺りには湯気と硫黄の香りが充満し、大地の力を見せつけてくれます。
このときは、噴出が10分近く続きました。大体5分~10分程続くようで、少しずつ勢いが弱まりながらも最後まで迫力ある姿を見せてくれます。そして止まるときは急激にピタッと止まってしまう。本当に面白いものです。
再びバスに乗り、今宵の宿のある鉄輪温泉へ。先ほどの血の池、龍巻の両地獄だけ離れた場所にあり、残りは全て鉄輪周辺に固まっています。
鉄輪温泉バス停で下車し、鉄輪温泉の街をぶらぶら散策。山裾に広がる温泉街は、いたるところから湯煙が立ちのぼり、今一度湯の街別府へ来たことを実感させてくれます。
バス停から下る石畳を歩くと、何やら湯気がもうもうと上る場所に遭遇。こちらは地獄蒸し工房という施設で、古くから伝わる温泉の蒸気を利用した蒸し料理を楽しむことができます。
今回はお昼を軽く済ませたかったので素通りしてしまいましたが、次に鉄輪を訪れた際はぜひ食べてみたい地獄蒸し。そんな工房の隣には、鬼の口からお湯が流れる飲泉場が。
折角なので一口含んでみると、!!という味。昆布茶のようなだしっぽい、ちょっと塩分を感じる、でも、鉄っぽくて渋味があるぅ。一口でごちそう様しましたが、胃腸に効きそうな味の温泉でした。
地獄蒸し工房のすぐ下には、鉄輪温泉のお湯を引いた足湯と足蒸しが。せっかく湯の街に来たのだから、出会った足湯は残さず味わってやろう、ということで早速中へと入ります。
先ずは未体験の足蒸しへ。腰掛けに座ってジーンズを膝までまくり、蓋を開けて準備万端。さあ足を入れよう!と突っ込んでみると想像以上の熱さ。すぐに退散と相成りました。こりゃ僕の足で豚足の地獄蒸しが出来上がっちゃうよ。
熱い熱いと右往左往しつつ、隣の平和そうな足湯へと移動。こちらには先ほどの飲泉場と同じような無色透明のお湯がたっぷりと湛えられています。
浸かってみるとこちらは快適そのもの。ナトリウム塩化物泉のこのお湯は刺激の無い優しい浴感で、芯からじんわりと温まります。今夜はこんなお湯に思う存分浸かれるのか。そんなことを考えるだけで、もう待ちきれない気持ちでいっぱいです。
足湯でのんびりした後は、初めての鉄輪の街をぷらぷら歩いてみることに。山裾に広がる鉄輪の温泉街には、坂と路地がたくさん巡らされています。
石畳の急坂をのんびり歩く人々。ここだけ時が止まったような古き良き温泉場の風情に、今一度温泉とは何かと考えてしまいます。
ずっと来たいと思い焦がれていた別府。その中でも僕の中で一番別府のイメージとして染みついているのが、ここ鉄輪温泉。いたるところから湯けむりが立ちのぼる姿は、これまで抱いていた憧れを凌駕する圧倒的な風情を以って、僕を迎えてくれました。
路地と、湯けむりと、商店と。すぐ近くに大型ホテルが建ち、日本屈指の温泉街として名を馳せる別府ですが、ここ鉄輪の街は新旧、大小、全てのものが仲良くきれいに共存しています。
観光地として開発された中で、いくつもの湯治用の素泊まり宿が未だに健在。そんな湯治宿や民家の軒先を縫うようにして続く路地を歩けば、他の温泉地では味わったことのない独特の雰囲気にどんどんと染まってゆくような感覚を覚えます。
そんな鉄輪歩きで見つけた一枚。風呂本○組、このあたりの地名のようです。その地名からは、古くから人と自然が紡ぎあげてきた温泉場の歴史が薫ってくるかのよう。
人々に愛され続けてきた鉄輪温泉。濃密な温泉場の風情を胸いっぱいに吸い込み、再び地獄めぐりを再開します。
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