血の池、龍巻、白池、鬼山と地獄を巡り、ここで一休み。残りの地獄の手前に位置する『味処よね田』でお昼を食べることに。この真向いにもお店があり、どちらからも手招きされて思わず勢いで入ったため、事前の情報などは全くありませんでした。
店内もメニューも、昔ながらの観光地の食堂といった雰囲気。随所随所に、いい意味での昭和の雰囲気を漂わせる別府の街。久々にこんな雰囲気にどっぷり浸かり、温泉に入る前から心が解けてゆくよう。
お目当てのものを注文して待っていると、店頭で作っている地獄蒸しの玉子のサービスが。できたて熱々、しばらく持てないほど。やっとの思いでつるりと剥くと、文字通りの玉子肌。ぱくっと一口頬張れば、懐かしい思い出とともに広がる優しい美味しさ。
僕はおでん以外、茹で卵はあまり好きではありませんでした。それでも、大涌谷や温泉地、列車の中など出先で食べる茹で卵の美味しさは小さい頃から特別だと思って育ってきました。
なんで出先で食べる茹で卵はこんなに美味しいのでしょうか。きっと、小さい頃からの思い出がこの中に詰まっているからかもしれません。
美味しい茹で卵と、久しぶりに見たアジシオの青いボトルを見比べてノスタルジーに浸っているうちに、お目当てのものが運ばれてきました。大分名物、だんご汁です。
前回卒業旅行で九州へ来た際、熊本でこれにそっくりな「だご汁」は食べたことありましたが、大分のだんご汁は今回が初めて。熊本のすいとん状のものとは違い、大分のものは甲州のほうとうのような形状になっています。
初体験の郷土の味にワクワクしつつひと口。かぼちゃや根菜、豚肉や豆腐などたっぷりの具が詰まった味噌仕立ての汁には、ここぞとばかりにそれらの旨味が染みだしています。
主役のだんごはもっちもちとした食感で、ほうとうよりも柔らかめ。それでいて伸びていたり溶けていたりはせず、程よい柔らかさがだしとしっかり絡んでくれます。味付けも丁度よい塩梅で、猫舌に苦労しつつも一気に平らげてしまいました。
素朴で温かみのある、これぞ郷土料理という美味しさに大満足。失礼ながら、昔ながらの食堂の店構え以上の美味しさに驚きました。
郷土の味に舌鼓を打ち、再び地獄に堕ちてゆくことに。続いては大きな釜が目印のかまど地獄に入ります。
入るとすぐにドロドロの地獄がお出迎え。秋田の後生掛で見た泥火山のミニチュアのような姿ですが、噴き出す水蒸気と熱泥は負けてません。ちなみに、ここが地獄の一丁目。ここからどんどん地獄の底へと堕ちてゆくのです。
二丁目へと進むと・・・。もうねぇ、くどいようだけど言っちゃいますよ。しょ・う・わ♪なんだよここ、どうしたんだよ、別府。
もう古き良き雰囲気にくらくら来ちゃいます。好き嫌いは分れるでしょうが、僕はなんだかんだ一回りしてやっぱり好きだなぁ、こういうテイスト。あの青鬼の表情なんか、一朝一夕には作れはしませんよ!
折角の自然の威力を台無しにしかねない(失礼!)圧倒的なデコレーションに目が行きがちですが、このかまど地獄は狭いエリアに様々な地獄が点在しているのが本当の見どころ。三丁目にはこんな入浴剤のような吸い込まれそうな青い地獄だってあるのです。
自然の地獄の他に、様々な温浴体験のできるエリアも用意されています。こちらは足の岩盤浴。靴を脱いで温泉熱で温められた岩盤に足を載せれば、足の裏からじんわりと温まり心地よいことこの上なし。足湯でなくてもこういうスタイルもいいかも。より手軽に楽しめます。
こちらは飲む温泉。到着した時に飲んだものよりもぐっと飲みやすく、まるでだしのきいたお吸い物といった感じ。美味しい美味しいと調子に乗って飲みすぎると、お腹が地獄へ堕ちそうだったのでふた口で我慢我慢。慣れない飲泉は怖いですからね。
続いて手・足の湯。お湯ではなく温泉の蒸気を浴びて楽しむもので、ラベンダーの香りが付けられているそう。僕にはあまりわかりませんでしたが、温泉の熱気で手がしっとりしたのだけは確かです。
最後はのど・肌の湯。パイプから噴き出す温泉の蒸気を浴びるもので、これはダイレクトに効く感じ。小さい頃ぜんそく持ちだった僕としては、この喉が広がって奥まで潤う感じはとっても気持ちいい。
ちなみに、足の岩盤浴から始まったこのエリア、ひとつずつ極楽○丁目と書かれています。湧き出すそのままでは地獄の形相でも、上手に利用すれば極楽の心地よさ。そんな温泉の姿に準えたのでしょうか。(考えすぎ?)
続いて四丁目。最初と同じ熱泥地獄ですが、こちらは規模も大きく、濃度も高そう。ぼこぼこと湧き出す温泉の周りには、陶芸で使えそうな粘土がたっぷりと堆積しています。
すぐお隣の五丁目。こちらは先ほどとは打って変わって美しい水色。かまど地獄で一番大きなこの池は日によって色が変わるそう。
源泉の噴き出し口に設置された温度計はなんと100℃オーバー。可愛い鬼さんによれば、これが地獄の温度なのだそう。笑顔で言うことじゃないよ、君。こりゃ地獄に堕ちたら大変だ。
そんな熱湯地獄でもしたたかに生きる緑の藻。草津の湯畑でも似たような藻を見ましたが、極限の環境で生きるものが持つ妖しい美しさは共通です。
最後の六丁目は、血の池地獄より赤い池。もうもうと湯気を上げながら煮立つ姿は、まるで地獄の釜のよう。
それにしてもこのかまど地獄、狭いエリアに色々な地獄が凝縮されています。熱泥に、青に、赤に。それぞれが隣接しているのに姿かたちの違う地獄たち。ここへ来たらコンクリの鬼さんや狸さんに騙されず、忘れずに自然の凄さを見てくださいね!
一丁目から六丁目までたっぷり楽しんだかまど地獄めぐり。最後には地獄から足を洗いなさいと言わんばかりに巨大な足湯が設けられています。これだけ広ければ、多少混雑していてもゆったりと楽しめそう。
そしてもちろん、ここでも入湯。お湯の色からして三丁目か五丁目から引かれただろうお湯がたっぷりと湛えられています。少々熱い感じがしますが、広いので好みの温度の場所を探せば問題ありません。
ほんのり青白いお湯は、地獄で見た印象とは違い肌触りの優しいこと。刺さる感じは全くありません。ただ、そこは地球から生まれたての力のあるお湯。すぐに芯からぽかぽかと温まってきます。
長湯厳禁、足湯だけで逆上せてしまっては元も子もありません。極楽気分で眺める地獄絵図を心に焼き付け、かまど地獄を後にするのでした。
1か所だけで十分見ごたえのあるかまど地獄。最初はどうなることかと思いましたが、六丁目までしっかり魅せてくれました。残る地獄はあと3つ。まだ見ぬ地獄へ参りましょう。
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