トロッコを下車し、嵐山駅までは竹林を散策します。まさにこれぞ嵐山、という場所。
天を目指し真っ直ぐ伸びる竹。上を見上げると、空へと吸い込まれるような不思議な感覚に。
朝まで降っていた雨に濡れた竹はとても活き活きとしています。薄っすら差し込む光は若竹色に染まり、静寂に包まれた空間を満たします。
しっとりとした嵐山の風情を満喫し、一路仁和寺へ。嵐電嵐山駅から京福電車に乗ります。
観光シーズンの休日には、嵐山から北野白梅町行きの直通電車も出ていますが、いい時間が無かったので帷子ノ辻で乗換え。
仁和寺の最寄り駅、御室仁和寺駅に到着。改札を出ると真正面に仁和寺があります。
立派な二王門。ここは御室桜という桜の名所で、春になるととても混雑するところ。この日はまだ開花前だったためひっそりとしていました。
御室桜と共に有名なのがこの二王像。テレビなどで目にした事のある方も多いのでは。間近で見るとその迫力に圧倒されます。
二王様にご挨拶をし、いざ御殿の中へ。御殿の中には立派なお庭があり、訪れるものの心を洗ってくれます。
先ほどの砂利の敷かれたお庭を過ぎると、そこには池の配されたお庭が。奥には五重塔が見えています。
僕は本当に日本庭園が好き。見た目に美しいだけでなく、その空気感までもが訪れる人を包み込んでくれます。そして訪れた人は何かを感じ、何かを考える。まさに古き良き日本の美しさが凝縮されている空間。
お庭の美しい御殿を離れ、金堂へと向かいます。この参道の左手に広がっているのが御室桜。まさに敷き詰められるように密集して植わっています。
これが満開を迎えたら、一段高くなっている本堂から見たその景色は、まさに桜の絨毯のようになっていることでしょう。いつか必ず見たいものです。
金堂に到着。いわゆる本堂にあたる建物です。ここでは御室桜の満開の時期に再訪できるようお願いしました。
金堂にお参りをし帰ろうと振り返ると、そこにはとてもきれいな花が満開になっていました。花にはうといのですが、立て札を見るとドウダンツツジと書いてありました。鮮やかなピンクとコケの優しい緑のコントラストが美しい。
御室仁和寺から再び嵐電に乗り、太秦駅で下車。すぐ近くの広隆寺に向かいます。車通りの多い道に面して建っているので、全体の写真が撮れず残念。
門をくぐれば、すぐそばの車道の喧騒が嘘のような静かな空間が広がります。ここで目指すは奥にある霊宝館。
ここで僕がどうしても逢いたかったのが、弥勒菩薩半跏思惟像。撮影禁止のため残念ながら写真はありませんが、歴史の教科書で見た記憶のある方も非常に多いのでは。
右手を頬に当てて物思いにふけるそのお姿は、まさに「穏やかさ」そのもの。失礼ながら普段仏教や仏像にはそれほど興味のない僕ですが、この仏像に対面した瞬間目が離せなくなり、15分程離れられなくなってしまいました。どうしてもその場を離れたくなかったのです。
そのお顔は表情ゆたかで優しさに溢れ、器の小さい自分が諭されているような気持ちになりました。叶わぬことかもしれませんが、いつか自分も、死ぬ前の一瞬で良いからあのような表情ができるような人間になりたい、そう強く思わされました。
仏像を見てこれ程感銘を受けたのは初めてです。もし機会があるならば、僕のこんなレポートを読むよりも実物を是非見て欲しい、そう強くお勧めします。
弥勒菩薩様に別れを告げ、霊宝館を後にします。出口の前にはきれいな苔が広がっていました。心なしかいつもより数段美しく見える。すっかり心が洗われたようです。
この旅の最後を飾るに相応しい広隆寺を離れ、バスで京都駅へ向かいました。ここで愛車を出迎え、新幹線に乗る準備をします。いよいよ帰京の時間。毎度ながらこの瞬間は憂鬱になります。楽しかった旅程が走馬灯のように駆け巡ります。
お土産もしっかり買い込み、いざ車内へ。帰りもリッチにグリーン車を利用。そこで楽しむのは、京都の駅弁老舗である、萩の家の平安弁当。
蓋を開けると京都らしい上品な幕の内仕立。色々なおかずがちょっとずつ並んでいます。そのどれもが薄味でおいしい。それぞれにあった調理法と味付けが施されています。お酒にもよくあう。これは京都に来なければ食べられない、京都ならではの上品な味。
お弁当をつまみに日本酒を楽しんでいるうちに、気が付けば有楽町のネオンが。戻りたくない、帰りたくないと騒いでも、なんだかんだ言ってこの景色を見るとホッとするものです。結局、ここが僕の故郷。また出掛ければいい、そのために毎日頑張るのです。
無事に東京駅に到着。今回も5泊6日という長い行程の中、無事故で大きなトラブルも無く関西を満喫することができました。
この帰ってきたときの充実感は、自転車旅ならでは。他の旅行では決して味わえないものです。このスタイルの旅行は僕のライフワークになりそう。さて、次はどこへ行こうか、そう考えながら中央線で帰路へと就きました。
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