弘前城を後にし、すぐ近くに位置する『藤田記念庭園』へと向かいます。こちらも弘前城で購入した共通券で入れる施設。以前から行ってみたいと思っていた場所です。
中へと入ると、広い芝生や枝ぶりの立派な木々、そして趣深い和風建築が広がります。一歩入っただけでこの空の広さ。ここが弘前の街の中であるということを忘れてしまいそう。
こちらのお庭はとても広く、崖を挟んで高台部と低地部に分かれています。その規模は、東北では平泉の毛越寺庭園に次ぐ広さだそう。
先ほどの高台部より低地部へと向かいます。その道のりは緑に包まれ、緩やかにのびる階段が印象的。車の音も全く聞こえず、森の中を散策しているかのような気分に。
木々に囲まれた階段を下ると、そこには先ほどの高台部よりも更に広いお庭が出現。これほどまでの広さだとは思っていなかったので、本当に驚いてしまいました。
すぐそばには岩木山方面へと向かう県道が走り、その交通量も結構なものですが、それが嘘のように本当に静か。くどいようですが、ここが弘前の街中であることを忘れてしまいそう。
庭園内を横切る崖を利用した滝も造られ、そこには彩りを添える赤い橋も。このお庭は実業家の藤田謙一氏が別邸を構える際に造られたそう。これほどの庭が個人の持ち物だったなんて、庶民の僕には全く想像すらつきません。
こちらには、芝生越しに池を見据える形で茶屋が構えられています。春夏秋冬、この縁側からはさまざまな庭の表情を見ることができるでしょう。きっとここで飲むお茶は、格別なはずです。
池の周りをのんびりと散策。途中にはこんな立派な灯籠も。雪見灯篭と名付けられたこの灯籠。北国の城下町に雪が降り積もる頃には、また違った雰囲気の清き美しさを見せることでしょう。
芝生と木々に彩られた池泉回遊式庭園。どことなく金沢の兼六園を思い出させるような美しさに包まれたお庭をのんびり散策します。
広いお庭を一周し、今度は滝に架かる赤い橋へと歩みを進めます。そこにはすでに色づく気の早い紅葉が。しつこいですが、ここは弘前の市街地。こんな緑豊かな場所が残されていることに驚きです。
豊かな緑と水辺の風景を味わい、再び高台部へと戻ります。そこに建つ和館と洋館の組み合わせが、ここが個人の別邸であることを思い出させます。
お庭を十分に楽しみ、続いて和館の中に入ってみることに。外観からも印象的だった広い縁側は、夏の光を浴びた眩いほどの緑に溢れています。
立派な外観同様、その室内の造りもまた贅沢。これほどの庭と建物を造ってしまうなんて、どれほどの財力があったのでしょうか。
豪華な造りの和室や美しい襖絵などを楽しみつつ歩いていると、こんな美しい扉を発見。ぶどうの木とりすが、見事な透かし彫りで再現されています。
こちらの部屋には目を引く立派な箪笥が置かれ、壁を彩るふすまや障子の装飾もまた美しい。そして見事なのは、優美な曲線を描く折り上げ格天井。和室という一つの空間の中に込められた、美意識と贅沢さを感じます。
広い建物内を一周し、初めに見た部屋へと戻ってきました。中を見ようと一歩入ってみると、そこには金の装飾を施された美しい絵が。優雅に裾野を広げるこの山は岩木山なのでしょうか。
そしてこの落ち着いた和室で庭を眺めます。程よい暗さの室内と、外に溢れる緑の光。和室は日本庭園を美しく見せる最高の額縁。こうして座って外を眺めるだけで、なぜこれほどまでに豊かな気持ちにさせてくれるのでしょうか。
贅の限りを尽くされた和館を後にし、続いては洋館を見てみることに。こちらは1階部分がカフェになっており、食事やお茶を楽しむことができます。
大正時代に建てられたというこの洋館は、外も中も当時のモダンな雰囲気に包まれています。
壁には窓が切られ、そこには美しいステンドグラスが収められており、和館とはまた違った形での美意識、そして贅沢を感じさせます。
木目の美しい木戸とグランドピアをの照らすシャンデリアの温かい灯り。大きく取られた窓の外にはサンルームが広がり、自然光と電球の光との対比が美しい。
落ち着きのある中に贅が尽くされた和館に、大正ロマン漂う洋館。そして予想をはるかに超える広さの美しい庭園で楽しませてくれた、藤田記念庭園。
すごいお庭があるらしい。そんな予備知識もあまりない状態で訪れた僕は、本当に圧倒されっぱなし。弘前にはまだこんな見どころがあったなんて。弘前の懐の広さに今一度感動を味わうのでした。
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