津軽の旨いものと旨い酒で心地よく酔わせてくれたけん太居酒屋。外の暗さの頃合いを見てお店を出れば、ねぷたの出陣が始まっていました。
今日も席の無い立ち見。賑わう人に揉まれつつ、ねぷたを眺めるのに良い場所を探します。
今夜も僕の好きな金魚ねぷたがたくさん運行。この丸い姿、ひらひらとした尾びれ、そして独特の顔。金魚ねぷたを見るたびに、夏の弘前に来たという強い実感を噛み締めます。
弘前のねぷたは扇形。表の勇壮な鏡絵と裏の儚げな見送り絵の対比が美しい。
その構図の中でも、ねぷたそれぞれの個性が光る絵や色彩の違い。このバリエーションがあるからこそ、3時間にも及ぶねぷた運行でも飽きずに見られてしまうのです。
扇ねぷたが中心の弘前ねぷたですが、時折現れる組ねぷたがまた良いアクセントに。それぞれの凝った造りを見れば、このお祭りの準備のためにかけた時間と情熱が伝わってくるよう。
次々とやってくるねぷた。そこに描かれた武者や虎といった勇壮な絵を浮き上がらせる灯り。その光りに僕の心まで灼けてしまいそう。
そしてまたまた、金魚ねぷた。これが現れると、どうしてもシャッターを切らざるを得ないのです。
5年前、津軽藩ねぷた村で初めて出逢った弘前ねぷた。その中でも、ずらりと並んだ金魚ねぷたの風流さに目を奪われたことが、ついこの前のように思い出される。
そしてこうして5回目、また夏の弘前に居られることの幸せ。ここ数年、僕の夏は東北の夏、弘前の夏。そしてこの先ずっと、毎年こうした夏を味わいたい。
ねぷたそれぞれの題材や雰囲気は本当にさまざまで、飽きることがありません。時にはこんな目の覚めるような色彩のねぷたも。獣と武者、激しい稲光が、弘前の夏の夜を照らします。
見覚えのある大きなマークが目立つ、JR弘前駅のねぷた。JR東日本、ありがとう。削られてしまう部分もありますが、東北を便利にしてくれたからこそ、こうしてまた東北に来ることができました。
ここで丁度よくひとり分腰掛けられる場所が空いていたので、道端に座ってねぷたを見ることに。
いつもよりも低い視座から眺めるねぷたは、こちらに迫りくるような迫力。一層距離感が縮まり、勢いが直に伝わってきます。
道端からねぷたを見上げれば、これまで以上に感じる迫力。これまで上に目が行きがちでしたが、鮮やかな牡丹が描かれた開きという部分や、武者や漢雲の文字が描かれる額絵の美しさも手に取るように感じます。
組ねぷたもこの位置から眺めれば、その立体感が一層増し、より勇壮な姿に。
完成を思い描いて設計し、組み上げ、絵付けをして仕上がる組ねぷた。不器用な僕からは想像もつかない芸術作品。
扇ねぷたも形に違いがあり、丸い印象を受けるものから、エッジの効いたシャープなものまで。それぞれが個性を光らせようと、絵以外の部分の細部にまで詰まったこだわりが感じられます。
今度はたか丸くんの組ねぷたが登場。もうすっかり僕のお気に入りのキャラクターになってしまいました。たか丸くん、かわいい。
今年は特に組ねぷたが多いように感じられ、こんな西遊記の組ねぷたも。勇壮なものから愛嬌のあるものまで、いろいろな雰囲気のねぷたを楽しめます。
今度は何これ?と思うような面白いねぷたが。見た目からして津軽のお殿様っぽい。
帰ってから調べると、超城合体タメノブーンⅤというキャラだそう。そして弘前を雪で埋める冬将軍と戦うらしい。お殿様も平成の世でこんな姿に生まれ変わるなんて思ってもみなかったでしょうね。
そしてこちらは正統派の津軽のお殿様を題材とした鏡絵。ねぷたにはお殿様や弘前城、桜をモチーフにしたものが数多く見られ、弘前の人々の誇りと地元愛がひしひしと伝わります。
大きいねぷたは後から。後から後から大きいねぷたがやってきます。その高さは、扇ねぷたも組ねぷたも建物の3階を超えそうなほど。道端で見上げれば、その大きさが一層強調され、より圧倒的な姿に。
弘前の夜を焦がす光と色彩の洪水。やぁーやどーの掛け声と、独特の節回しの笛の音、心臓へと伝わる鉦や太鼓の響き。この全てが感動の波となり僕を襲う。
何だろうか、この中毒性は。一度体感してしまうと、焼き付いて離れない。だからこうして今年もやってきてしまった。僕の中で無くてはならないものになりつつある。弘前ねぷた、好きだなぁ。本当に好きだ。
そんな一年振りの熱い夜も深まり、ねぷたの運行はこれにて終了。僕の短い夏も、燃え尽きてしまったかのような寂しさを覚えます。
行く夏を惜しむかのように、ねぷたの最後を追う人々。僕も毎年この儀式が欠かせない。だってこれが、僕の夏の終わりに思えてしまうのだから。
今回の宿は駅前。運行を終了し地元へと戻るねぷたの後を歩き、宿へと戻ります。
こうして最後の最後まで味わい尽くせたねぷたも今年は終わり。弘前到着時は天候に冷やっとさせられましたが、そう言えばこれまで一回も運行が中止になったことがない。今年も2日間、思い切り津軽の夏を味わえた。その満足感を胸に、僕の心の火は静かに消えてゆくのでした。
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