弘前城下に残る風情ある街並みと武家屋敷を後にし、今度はその中心であった弘前城を目指します。
北西方向からお城を目指して歩いてゆくと、古い建物とお堀が。旧紺屋町消防屯所の屋根と春陽橋の赤が、夏の盛りのお堀の緑を一層鮮やかにします。
旧紺屋町消防屯所近くの一陽橋から城内へと入り、天守の方へと進みます。すると途中には、見上げるほどの杉の巨木と、弘前アイス組合の屋台が。そうそう、この屋台。僕が初めて弘前に来たときに驚いたものです。
普段ほとんど間食をしない僕。これまで何度も弘前へときましたが、そういえば一度もこのアイスを食べたことがないと思いだし、買ってみることに。
アイス組合というだけあり、どの屋台を見てもひとつ100円。そして味はりんご味。その素朴な見た目よろしく、しゃりっとした食感と爽やかなりんごの風味が嬉しい、さっぱりとしたシャーベットタイプのアイス。
どこか懐かしさを感じる美味しいアイスで一服の清涼を味わい、再びお堀に沿って歩きます。
お堀を覆う蓮の葉と石垣、遠くには下乗橋。夏の最中の一番勢いのある緑が、弘前城に溢れています。
普段は下乗橋横の石垣の隅に建つ弘前城天守。今は石垣の改修工事のため、曳屋され移転中。地面に建つ姿は、今しか見られない期間限定のもの。
これまでお堀越しにしか眺めることがなかったので、弘前城の天守をこれほど近い距離で見るのは初めて。
間近から眺めれば、銅瓦や漆喰の渋い色合いが手に取るように伝わり、現存12天守らしい風格を漂わせます。
北国の厳しい風雪に長年耐え続けてきた渋い姿を味わい、いざ中へと入ります。こちら側には破風がなく、すっきりとした印象を与えます。
中へと入ると、そこには今回の曳屋と改修工事に関する資料が数多く展示されています。特に曳屋の様子をまとめたビデオは、曳屋がこうして成功したと分かっていても、手に汗を握ってしまいます。
そしてこちらは、今回の曳屋で使用された法被と、100年前の曳屋で使用された工具、きりん。明治時代も今も、動力は違えどジャッキアップされ、慎重に、慎重に動かされたことが分かります。
上の層へと上がれば、貴重な現存天守の木組みを間近に眺めることができます。建築年代の差なのでしょう、松本城のものとの造りの違いに驚き。しっかりと組まれた木が、雪の重みから長年お城を守ってきました。
そしてこれが、明治に取り壊されてしまったという、本丸御殿の模型。模型など普段撮らない僕ですが、あまりに驚いたため、写真に収めました。
だって、見てくださいよ。左下の天守と比較してこの巨大さといったら。内堀いっぱいに御殿が広がっていたなど、想像できません。それも明治まで残っていたなんて。
窓から外を覗けば、遠くに裾野を広げる岩木山が。残念ながら上半分は雲に隠れていますが、津軽富士の名にふさわしい裾野の美しさ。
さきほどの面とは違い、こちらには立派な破風が設けられています。その破風には波型を思わせる模様が刻まれた銅板で装飾されており、白い漆喰との対比が印象的。
こちらのお城は二面ずつ違う形状をしているそう。北と西は破風がなく大きな窓が取られたすっきりとした形状。それに対し南と東は、このように破風や挟間が造られ、お城を大きく見せようと工夫されているそう。
天守のあった元の場所の近くには、仮設の展望台が設けられています。そこでもう一度、今しか見られない曳屋されたこの姿を眺めます。
そしてこちらが、これまで天守が載っていた天守台の石垣。周囲の危険箇所を修理し、約5年後にまたここへ戻ってくるそう。こうして昔から人々に大切に守られてきたからこそ、貴重な天守が現存しているのです。
弘前城で一番の撮影スポットである、下乗橋の上からの眺め。去年まではここにいたはずの天守がなくなった姿は、何となく違和感があり、寂しいもの。
観光客の僕ですらそう感じるのですから、長年慣れ親しんだ地元の方はどう感じるのでしょうか。桜と赤い橋、そして天守。それらが揃う日まであと5年。その時には満開の桜の時期に来てみたいものです。
今しか見られない曳屋された貴重な天守の姿を楽しみ、再び城内を歩きます。途中には、400年以上前に建てられた櫓が。
弘前城にはこれを含めて同じような櫓が3つあり、元は櫓として建てられた天守はその中で一番新しい建物なのです。
江戸時代から残るお城の風情を味わい、これまた江戸時代から残る門を出て先へと進みます。
続いて向かったのは、三の丸跡に造られた弘前城植物園。今回はお城で共通チケットを購入したため、こちらにも入ることができます。
まずは三の丸庭園へ。こちらは津軽地方の伝統的な築庭法で造られたものだそうで、岩や石が多用された姿が印象的。
緑豊かな夏の植物園を進むと、さまざまな花が咲いている姿を楽しめます。花には疎い僕ですが、そんな中できれいだったものをいくつかご紹介したいと思います。
こちらは淡いピンク色をした蓮のつぼみ。奥には夏だというのに元気に咲いているあじさいの姿も。
色とりどりの花を楽しみつつ歩いていると、こんなふわふわした見たことのない花が。帰ってから調べてみると、合歓の木というのだそう。ピンクの綿毛のような花が印象的。
バラは時期を過ぎていたのか枯れていたものが多かったのですが、中にはこんなに鮮やかな色をしたバラも元気に咲いています。
この植物園は広く、花の種類ごとのほか、果樹の見本園や庭園の様式ごとに展示されています。
そのなかで、やはり青森といったらのりんご園を発見。枝にはたくさんの青い実を付けています。
植物に覆われた園内をのんびり散策。こんな白い繊細な花も咲いています。
あぁ植物に詳しければもっと楽しめるんだろうなぁ。何故か花や歴史、星座など、不得意分野に関しては全く覚えることのできない僕。決して興味がない訳ではないので、ゆくゆくは見聞を広げていきたいと、今一度思います。
緑の元気な時期の植物園を楽しみ、ぐるりとひと回り。最後はこんな静かな森が広がっています。
白神山地生態園と名付けられたこの一角は、白神山地を代表する木である橅を中心とした植物が植えられています。その鮮やかな緑と静かな雰囲気は、6年前に訪れた十二湖を思い出させてくれるよう。
今回初めてゆっくり、たっぷりと時間をかけて歩いた弘前城。6度目の弘前訪問ですが、またこうして新しい魅力を感じられる。午前の武家屋敷に続き、弘前という街の深い魅力に惚れ直すのでした。
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