石ヶ戸バス停より、水と緑の織り成す渓流美をのんびり楽しみつつ歩くこと2時間半、奥入瀬渓流の源流である十和田湖子ノ口に到着。
これが僕にとって初の十和田湖との対面。カルデラ湖ならではの囲む山並みの遠景と、静かな湖面が出迎えてくれます。
最近日々の散歩もサボっていたので、久々に2時間半も歩きお腹はペコペコ。十和田の湖水美よりも食欲が勝り、さっそくお昼を食べることに。
今回お邪魔したのは、民宿とお食事処の『根岸屋』。メニューに踊るヒメマスの文字と、気さくな旦那さんに誘われるようにして入店しました。
さっそく歩いたご褒美の黒ラベル瓶で一息。大きく取られた窓からはきらめく十和田湖が一望でき、湖面を渡ってきたそよ風が、ビールと共に火照った体をクールダウン。
そしてサービスで出してくれたのが、ワカサギの甘露煮。これまで食べたワカサギよりも大ぶりで、丁度よい甘辛さで煮られた甘露煮はほろっとした絶妙な美味しさ。ビールとワカサギ、これだけでも十分幸せ。
湖水を眺め冷たいビールを楽しんでいると、お待ちかねのヒメマス塩焼き・お刺身定食が運ばれてきました。
まずはヒメマスのお造りから。程よく脂の載ったヒメマスは、これまで食べた鱒のお刺身とは一線を画すもの。
脂の旨味は感じるのですが、川魚や鱒の独特さがなく、ものすごく穏やかでいて旨味の詰まった美味しさ。ヒメマスってこんな味だったんだ!と素直に驚きます。
塩焼きにしても、ヒメマスの優しさは健在。適度な脂は焼くと香ばしさとジューシーさに変わり、それでいて臭みはゼロ。身質も絶妙な柔らかさで、口の中でほどけてゆきます。
これは旨い!いっぺんにヒメマスのファンになってしまいました。これはやはり鮮度がいいのでしょう。ご主人曰く、冷凍物は一切使わないそう。だからこの癖のない穏やかな旨さが味わえるのですね。
添えられた根曲がり竹や大根、切り干しの煮物といった小鉢も手作りの美味しさで、一気に平らげてしまいました。
いやぁ旨かった。飛び入りで入ったお店があたりだと、旅の嬉しさ、思い出も一段と強くなります。
食後は、あの美味しいヒメマスを育む十和田湖をもう一度。帰ってから調べてみると、十和田湖ひめますとして名物にしているそう。あの味なら間違いない。名物に旨いものあり、です。
本当ならばもっと十和田の湖水美を楽しんでいたかったのですが、雲行きが怪しくなりいきなりの大粒の雨が。バスターミナルに避難し、到着を待ちます。
待つことしばし、『JRバス東北』のみずうみ号青森行きが到着。今度はE5系はやぶさカラーのバスがやってきました。
バスは子ノ口駅を出発し、左右に奥入瀬渓流を眺めつつ山を下ります。やっぱり奥入瀬は、歩きに限る。車窓ももちろん美しいのですが、実際歩いた後に眺めてみると、その美しさは半分も伝わってこないことを実感します。
このみずうみ号が走る道は、八甲田・十和田ゴールドラインと名付けられた観光路線。十和田湖から八甲田にかけては高地を走り、車窓を黒々としたアオモリトドマツの森が彩ります。
青森駅までは約3時間の道のり、途中蔦温泉と酸ヶ湯温泉でトイレ休憩。1年半前に訪れた、あの雪に埋もれた厳寒の姿とは全く違う印象に。爽やかなこの季節や紅葉にもう一度来てみたい。
バスは十和田、八甲田と過ぎ、青森市街地を目指します。途中には、岩木山展望所と名付けられたバス停も。
天気のいい日にはここから雄大な津軽富士を望めるそうですが、あいにく今日は曇っていて見ることができません。
というより、今日の弘前、夕方の予報は雨。ねぷたは紙でできている。ちょっと、待ってよ~!視線の先のねぷたまで雲行きが怪しくなってきます。
十和田湖子ノ口から緑に染められた車窓を眺めること2時間45分、バスは新青森駅に到着。これから弘前へ向かうため、ここで下車します。
新青森駅から奥羽本線の特急つがる号に乗車し、一路弘前を目指します。今回は自由席にしたのですが、想像以上の混雑。運よく窓側の席をとることができ、ほっと一安心。
新青森駅から20分程走れば、行く手には青々とした夏の田んぼと、裾野を広げる津軽富士の姿が見えてきます。
その岩木山を覆う分厚い雲。それもその黒い部分がよりによって弘前市街地へと伸びている。あぁ、こりゃ今日はダメかな。この景色を見て残念な事態への心の準備を始めます。
列車は間もなく弘前に到着。この旅のメインディッシュ、いや、僕の夏に欠かせない一大イベントであるねぷたの行方を、濡れた路面に占うのでした。
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