窓の外の薄明かりで目覚める、静かな朝。昨晩はいつもよりも早めに寝たため、早い時間に目が覚めても、驚くほどのすっきりさ。
まだ明けきらぬ青さを映したブラインドを開けてみると、浅虫の街と海は乳白の朝もやに包まれています。どうやら昨日の夜霧の名残のよう。
早朝の露天で霧の掛かる幻想的な景色を眺め、部屋へと戻りその続きを楽しむ。そんな贅沢なひとときを過ごしても、朝食の時間まではまだ余裕が。この感覚を教えてくれた沖縄に、今一度感謝です。
何もしないを愉しみ、ようやく朝食の時間に。広間へ行くと、美味しそうなお膳が並べられています。
焼鮭や玉子焼きといった、これぞ和の朝食というものから、新鮮で歯ごたえと甘味が美味しいいか刺しや、ほたてと海藻の貝焼き、いかと麦みその陶板焼きなど、朝から青森を感じさせるおかずたち。
この他にも煮物など数種類のバイキングもあり、味も内容も大満足の朝ごはん。こちらのホテルにして大正解。ご飯がきちんとおいしいくないと、旅もイマイチになってしまいます。
美味しい朝食でお腹一杯になり、部屋へと戻ります。窓を見てみると、海を覆う白い霧。そのなかに佇む湯の島は、昔話かなにかに出てきそうな幻想的なシルエットを見せています。
浅虫温泉での最後の一浴を終えると、昨夜から浅虫の街と海を包んでいた霧も晴れ、朝の爽やかな青さに彩られていました。
うん、沖縄も海!なんだけど、やっぱりこれも、僕の中の海。その青さ、美しさは決して比較できるものではありません。
強いて言うならば、沖縄の海は僕を開放的に、自由にしてくれる青さ。対して東日本の海は、僕を落ち着かせてくれる青さ。海の表情ひとつとっても、やっぱり日本は広い。そう改めて実感します。
いい湯、いい味、いい景色で初めての浅虫温泉を味わわせてくれたホテルに別れを告げ、駅までの道を歩きます。
昨日はどしゃ降りの雨だったので国道を歩きましたが、今日は夏空の広がる気持ちの良い天気。せっかくなのでビーチを歩きながら駅を目指します。
これまで車窓で眺めることしかできなかった湯の島ともお別れ。浅虫温泉に泊まってみたいと思い早20年、ようやくこうして念願が叶いました。
気持ちの良い温泉は、泉質や湯使いだけではない。そのロケーションあってこそ。一夜を共にした潮騒と湯の島に、別れがたい名残惜しさを感じます。
浅虫温泉駅から青い森鉄道に揺られること20分と少し、青森駅に到着。ここ青森も2日後にねぶたを控え、街も駅もねぶた祭り一色。僕の好きな金魚ねぶたが出迎えてくれます。
いつかは青森ねぶたも見てみたい。いつもそう思うのですが、どうしても足は弘前ねぷたに向いてしまう。
やっぱり青森県に1週間くらいは滞在し、ねぶたもねぷたも味わってみなければ。いつかその日が来ることを信じ、駅を離れてお囃子の聞こえる街へと繰り出します。
途中デパートでお土産や津軽塗のお箸を買いつつ向かったのがこちら、『味の札幌大西』。一度聞いたら忘れられないインパクトの、あの名物を食べさせてくれるお店です。
そして待ちに待ったこいつとの対面の時が!青森名物味噌カレー牛乳ラーメンバターのせ、1年半ぶりの再会です。
最初テレビでその存在を知った時は、もうやっちゃったな、という印象しか持ちませんでした。だって、名前だけでお腹一杯。それもB級グルメというくくりで紹介されていたので、奇をてらって作ったもんだと思い込んでいました。
ですが去年、酸ヶ湯温泉に行く際に立ち寄り食べてみたところ、一発でハートを打ち抜かれてしまいました。
味噌、カレー、牛乳、バター。どれも個性派、主張の強い食材たち。見た目もしっかり味噌カレー牛乳色。香りもしかり。さらにそのスープにわかめまで載っちゃっています。
食べる前には食べきる自信すらなかった僕。でもスープをひと口飲んだ瞬間、あまりの穏やかさにびっくりしたのです。
そして1年半ぶりに味わい、その時の感動と美味しさは決して思い出として美化されていたものではないことを確認。
自己主張の強いものたちの集まりのはずが、ものすごく調和の取れた優しいスープ。和、洋、中を合わせた、軽めのポタージュのような味わい。そこにカレー粉が少しだけスパイスをきかせ、穏やかな中にもパンチを与えます。
麺は札幌ラーメン屋さんらしく、黄色い太い縮れ麺。その強い食感と麺の味わいが、このスープに相性バッチリ。
去年は厳冬期に訪れましたが、今は盛夏。滝のように流れる汗も構わず、最高のバランスを保ったこの一杯を一気に平らげました。
これはぜひ食べてもらいたい。青森に行ったら、必ず食べてもらいたい。ラーメン好きなら、きっと「アリ」な一杯でしょう。
この記事を書いているだけで食べたくなってきた。名前とは裏腹に完成された一杯のラーメンを味わい、夏の青森を思い切り感じるのでした。
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