南部と津軽、夏めぐり。~呼べば幸来るヤーヤドー 3日目 ②~ | 旅は未知連れ酔わな酒

南部と津軽、夏めぐり。~呼べば幸来るヤーヤドー 3日目 ②~

8月上旬夏の東北旅夏空の青森駅に停車中の奥羽本線701系弘前行き普通列車 旅の宿

短くも濃い滞在を満喫し、祭りを控えた熱気に包まれる青森を離れることに。これから向かうは弘前。もうまもなく、今年二度目の僕の夏が本番を迎える。そのことを考えるだけで、胸の奥が熱を帯びはじめる。

8月上旬夏の東北旅夏空の青森駅に停車中の奥羽本線701系弘前行き普通列車車窓から眺める雄大な岩木山
青森平野を抜け、山がちな地形のなか走る701系。きっと、もうすぐだろう。何度も眺めた車窓に胸を高鳴らせつつ待ちわびていると、列車は津軽平野に入り田んぼの先には雄大に裾野を広げる岩木山が。

8月上旬夏の東北旅奥羽本線弘前駅
津軽富士の優美な姿を愛でつつ奥羽本線に揺られること43分、今年も無事に弘前へと到着。14年前の6月、今はなきあけぼの号でこの地に降り立ったのがすべての始まりだった。こうして振り返ってみると、あの旅は僕の人生を大きく変えた転換点だったんだな。

8月上旬夏の東北旅ドーミーイン弘前
ただいま、弘前。今夏もこうして逢えたという安堵と、1年ぶりとは思えぬこのしっくりくる感覚。そんな静かなる歓びを噛みしめつつ歩くこと25分、これから2泊お世話になる『ドーミーイン弘前』に到着。

8月上旬夏の東北旅ドーミーイン弘前ダブル客室
毎年毎年ねぷたの宿の確保には苦労しますが、今年はお城や繁華街にも近いこの宿を無事予約。今回空いていたのは、ダブルルーム。寝心地のよいシモンズのベッドが置かれており、窓からは最勝院の五重塔も。

15時過ぎと、例年よりはちょっとばかり早めのチェックイン。街へと繰り出すにはまだ余裕があるため、館内着に着替え最上階の10階に位置する大浴場へ。こちらでは、黒石は追子野木から運ばれた温泉が使われているそう。

さっと掛け湯し肩まで沈めば、思わずおぉ!と思うようなぬるぬる感。今朝まで滞在していた水明温泉ほどではありませんが、うっすらと茶色がかったとろみのある湯。加温や循環はしているとは思いますが塩素臭も気にならず、失礼ながら思いがけず本格的な温泉にびっくり。

落ち着いた和の雰囲気漂う内湯に対し、庭園のような開放感あふれる露天風呂。ねぷた期間中は特別にりんご風呂となっており、ぷかぷかと浮く赤い実から漂う芳香がなんとも贅沢。

さらに圧巻なのは、いすの置かれた外気浴スペース。大きくとられた窓の正面には、雄大な岩木山がどん!と鎮座。仁王立ちで津軽富士を眺めながら、温泉で火照った体をクールダウン。ちょっとこれは、ビジネスホテルの大浴場の枠を超えている。

8月上旬夏の東北旅弘前居酒屋夢地
いい湯いい景色を満喫し、火照った体をダブルベッドに投げ出しちょっとばかりうとうと。16時半頃に部屋を出て土手町のアップルウェーブ前へと向かい、列に並んで県外客向けのねぷた見学席の整理券を無事入手。これで安心して飲んだくれられるな。ということで去年に続き、今年も『夢地』にお邪魔します。

8月上旬夏の東北旅弘前居酒屋夢地絶品のカニみそ豆腐を含むお通し
きりっきりの黒ラベルで湯上がりの渇きを癒していると、お通しの3品が。しっとりとしたかぼちゃの煮つけは濃すぎず薄すぎず、ちょっとばかり甘めの絶妙な味付け。ケチャップの掛かったナゲットは、冷たいビールを進めてくれる。

そして驚いたのが、カニみそ豆腐の旨さ。ほんのり色味のある豆腐は、なんともクリーミーな舌触り。とろりととろけたかと思えば、ふわっと口中に広がるかにみそのコクと旨味。ですが加工品のかにみそにありがちな臭みや嫌味はまったくなく、一品としてお品書きにあったので追加しようか悩むほど。

8月上旬夏の東北旅弘前居酒屋夢地名物のなすのしそ巻き
まず初めに注文したのは、ここに来たら欠かせないなすのしそ巻き。棒状のなすと甘めの味噌を、手のひらほどもある大きな赤しその葉で巻き焼いたもの。

外はしゃきっと歯切れよく、中はじゅんわりとろりの魅惑の食感。大ぶりのしそは大味なのでは?と思いきや、強すぎずほどよい芳香を口から鼻腔へと連れてくる。油となすや味噌との相性の良さも相まって、夏野菜の元気をチャージできるようなこの時季ならではの逸品。

8月上旬夏の東北旅弘前居酒屋夢地イカメンチ
あっという間に金星を飲み干し、地酒にすぐさま切り替え。そのお供にと選んだのは、津軽の郷土料理であるイカメンチ。内陸に位置する弘前。まだ生のいかが貴重だった時代、胴は刺身にし残りのゲソやエンペラをおいしく食べるために生み出されたという家庭料理。

いかを細かく刻み、野菜や小麦粉と混ぜて揚げ物に。外はこんがり中ふかふか、さつま揚げのような練り物よりもたこ焼きに近い印象。野菜の甘味といかの滋味がほわりと広がり、何度食べてもこの素朴な旨さがこころに沁みてくる。

8月上旬夏の東北旅弘前居酒屋夢地ミズの水物
つづいて注文したのは、ミズの水物。クセやえぐみのないミズは、しゃっきしゃきとした歯触りとちょっとしたぬめりが身上。そんな山菜の良さを最大限に引き出すのが、津軽ならではの水物という調理法。塩気のきいた昆布だしに浸してあるというシンプルさが、ミズの瑞々しさを至福の味わいへと昇華させる。

8月上旬夏の東北旅弘前居酒屋夢地ホヤの水物
この後ねぷたが控えているけど、僕は呑んじゃうよ!すっかり食欲呑欲に火がついてしまい、さらにホヤの水物も追加。独特な風味はありつつも、東北で食べるほやは臭くない。刺身としてしょう油で食べるのもいいが、新鮮なほやを活かすならやっぱり水物が最適解だと思えてくる。

8月上旬夏の東北旅弘前居酒屋夢地ニンニクの天ぷら
あれもこれもと行きたいけれど、もうそろそろ最後のひと皿を選ぶ時間。このお店は何を食べてもおいしいので新たな品にも挑戦しようかとも悩んだが、今宵はその旨さを知っているニンニクの天ぷらで〆ることに。

言わずと知れた、生産量日本一を誇る青森県のにんにく。それを粒ごと、厚めの衣をまとわせ香ばしく。外はかりっと、中は熱々ほっくりお芋のような食感。にんにく臭さは熱で消し飛び、そこにあるのは驚くほどのフルーティーな上品な甘味。

ミズにホヤににんにくに。好きなものにぐるりと囲まれ味わう、津軽の酒。うまいつまみをちびちび味わい、旨い地酒をくいっとあおる。そうすれば、否応なしに昂るこころ。あと少しで、津軽の熱い夜と再会できる。その火種を焚きつけるように、豊盃がするすると腹の底へと沁みてゆくのでした。

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