入社15年を迎えた2015年の秋。長いようで短くもあり。色々あったけれど、今こうして好きなことが出来ている。感謝しなければならないことです。
そんな今年は、永年勤続者のご褒美として、使えずに塩漬けになった年休を特別に使っても良い年。といっても、代わりの人を探さないと絶対に休めないこの仕事。だから塩漬けになりがちなのですが・・・。
でも、絶対休んでやる!ここまで頑張ったんだから、思いっきり羽を伸ばすんだ!!と気合を入れ、頑張って自分で手配しました。「永年勤続の。だから、ね♪」という、普段は絶対に使えない免罪符を頼りに、頑張りましたよ、10連休!
何故こんなに長い休みにこだわったのか。普段の鬱憤を晴らすため?いやいや、普段から旅行には行かせてもらっています。ならば何故?それは、禁断のアレを決行するため。
過去に二度も経験してしまった、ダメ人間への扉。さぁ、岩手にどっぷり、浸かりに行きましょう!!
今回の行程は、日程ありきではなく、行先、宿泊先ありきで組みました。目的地は、ピンポイントで岩手県。それは連泊したい、いや、すべきあの宿を中心として行程を組んだから。
前回も禁断のアレをしたときは、岩手に9日間籠りました。が、今回は11日間。でもそこは魅力の詰まった岩手県。行く前から楽しいに決まっています。
どんよりとした雲に覆われた荒川を渡り、無事に東京脱出。そんな空模様も上の空、僕の心は既に岩手に向かっています。
これからずっと、岩手の酒浸り。その前にと、今回は伏見の北川本家が作る乾風を、車中の友として選びました。西日本のお酒はしばらく飲み納め。旨い伏見の酒を愉しみつつ、はやぶさ号は一路北を目指します。
程よくお腹も空いたところで、列車旅の醍醐味、駅弁を開けることに。今回は、JRのいわき運輸区の乗務員がプロデュースしたという、浜街道潮目の駅弁を購入。調製は、漁港として有名な小名浜にある、小名浜美食ホテル。ホテルと言っても宿泊施設ではなく、食に関する複合施設だそう。
蓋を開けると、こんなのが出てきちゃうんです!正直、店頭の写真より中身の方が良かったのでビックリ。
まず目を引くのが、2種の美味しそうなご飯。右は見ての通りのうに飯で、載っているうにの量が凄い。さらに凄いのが、その旨味と甘味。調理してから時間が経っているとは思えない程、ふんわり、しっとり、甘くて濃厚。
その隣は、鰹飯。これまた太平洋のご馳走です。下手をすると臭みの出がちなかつおですが、臭みは無くふんわりとした仕上がりに。独特なパサつきはありません。「節」になっていないかつおからはこんな旨味が出るんだなぁ、と思い知らされるようなだしが、ご飯にしっかりと染みています。
右上には、いわき名物のメヒカリの甘露煮や、さんまのポーポー焼きが。さんまのポーポー焼きとは何?状態でしたが、さんまのつくね焼きのようなものでした。これがまた旨い!さんまの持つジューシーさをそのまま閉じ込めたつくねは、焼きたてのような香ばしさすら纏っています。
もう何を食べても美味しいこの駅弁。そんな中で一番のお気に入りは、中央のカジキメンチ。文字通りカジキをメンチカツにしたもので、小名浜の新名物として立ち上げられたものだそう。新興ご当地グルメアレルギーの僕は、まぁありがちだよね、位の気持ちでパクリ。
その瞬間、バカが付くほど旨いんじゃないの!?と衝撃が走りました。いや、奇をてらった味ではないんです。至極真っ当に美味しいメンチカツ、といった印象。それがいい!カジキのジューシーさや優しい旨味を巧みに残した、この感じが本当に美味しい。
これが揚げたてだったら、とんでもないことになりそう。メンチカツはカジキを標準仕様にしたほうがいいんじゃないの?と一瞬頭をよぎるほど。
このほかにも、カジキ揚げかまぼこやたくあんしそ巻き、かまぼこにトマトゼリーなど、一折りに小名浜、いわきがギュウギュウ詰め。食べ終わる頃には、いわきに行ったような錯覚に陥りそうなほど。
いや、これは現地に行って食べてみないと。そう思わせてくれる、いわきの恵み満載のご馳走駅弁でした。これで1200円。僕がこれまで食べた中で、トップクラスのお気に入りと出会えました。
駅弁ひとつでこんなに行を使ってしまいました。それほどに好みドンピシャな駅弁をつまみに楽しむお酒。気が付けば関東を越えて東北入りし、車窓には刈り終えた田んぼが広がります。その田園風景を覆う、文字通りの秋晴れの空。この旅の前途を照らしてくれているようです。
はやぶさ号に乗ってしまえばあっという間。東京から2時間20分で、県都盛岡に到着。本当に近くなったものです。
さて、今回の旅はここからが本番。ここ盛岡駅を起点に、まだ見ぬ岩手に会いに出かけましょう。
もう何度も訪れ、お気に入りの場所となった盛岡。そんな盛岡からバスに乗り訪れるのは、今回初めて泊まる場所。
盛岡駅から路線バスを使っても行けるのですが、今回は宿泊者限定の送迎バスがあったので、そちらを利用させていただきました。車を持たない旅行者にとって、本当にありがたいことです。往復のバス代を気にしなくて良いというだけで、グッと行きやすくなります。
路線バスだと延々と下道を行くのですが、送迎バスは何と高速利用。無料で乗せてもらっているのに、何だか申し訳ない気がしてきます。盛岡から高速に乗り、左手の車窓には岩手の名峰岩手山が見え隠れ。高速を降りれば、いよいよその南部片富士の麓に向け、バスはぐんぐん登り始めます。
標高がどんどんと上がり、辺りは高原を感じさせる景色に。先頭に陣取り、まっすぐのびる道のりと、その両側を彩る紅葉の姿に見入ります。
こうして始まった、10泊11日、全て岩手で完結する旅。自分史上最長の旅は、一体どんな展開になるのだろうか。そのことを想うだけで、高原の空のようにスカッと晴れゆくのを感じるのでした。
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