この旅初めて迎える朝。燃えるような紅葉が散りばめられた高原は、乳白色の朝靄に包まれています。青空を透かす朝靄の色は、何となくにごり湯のよう。そういえば、この山の向こうは松川温泉。そうだ、あそこのお湯に良く似ている。にごり湯と霧に包まれた八幡平での一夜が、つい最近のことのように思い出されます。
ぴんと張った空気の中朝風呂を楽しみ、朝ごはんへ。こちらのホテルの朝食は、和洋折衷のバイキング。種類も色々とあり、好きなものをちょっとずつ楽しめるのが嬉しいところ。
その中でも印象に残ったのが、右のほうれんそうのしゃぶしゃぶ。地元八幡平産の新鮮なほうれんそうが山のように積まれており、それを自分の好きな量を好きな茹で加減で楽しめます。肉厚なほうれんそうは風味が濃く、久しぶりにほうれんそうを食べてる!と思える美味しさ。地のものをこうして味わえるのは本当に嬉しい。
美味しいおかずについついご飯を食べすぎ、満腹状態で部屋へと戻ります。窓の外には、朝日に輝く岩手山。消えつつある朝靄の名残が、その荘厳さをより際立てます。
今回お世話になった、八幡平ロイヤルホテル。自分では中々手配しないタイプの大型ホテルでしたが、今回はこちらに泊まって正解でした。お食事も美味しく、そして何よりこの環境、この景色。秘湯に居るのと変わらず思いっきりリラックス、そしてリフレッシュできました。
鄙びた雰囲気も良いけれど、たまにはこれぞホテル!というような場所も良いかも。そう思わせてくれたホテルに別れを告げ、送迎バスで盛岡駅を目指します。
東八幡平を発ち1時間、再び盛岡へとやってきました。今日はのんびり市内散策と買い出し。あてもなく中心地の方へと歩き出します。
すると、いつも優美な姿で出迎えてくれる開運橋が、仮囲いの中に隠れていました。どうやら大規模な修繕工事中のよう。こうして古老は皆から大切にされ、末永く活躍を続けていくのでしょう。古くなったら壊して新しくすればいいじゃん。という世の流れの中で、この橋が昔からこうして愛されてきたことが伝わってきます。
幸い、歩道部分は仮囲いから外れていたため、期待していた橋上からの展望を楽しむことが出来ました。秋の抜けるような空と、その色をさらさらと流す北上川。そしてその奥には、つい先ほどまで傍にいた南部片富士。
安比スキーの時に初めて眺めた、ここからの岩手山。その時は雪をかぶっていたので、その印象は忘れえぬものとなっています。ビルの建つ街並みの背後に聳える大きな山。こんな光景はそれまで見たことが無かったので、現実離れしたCGのようにも思えたほど。そんな岩手山は、今日もこうして盛岡の街を見守っています。
開運橋を渡ってアーケード街で必要なものを仕入れ、岩手公園に突き当たります。盛岡城の石垣は銀杏に彩られてすっかり秋の装い。本当ならばこのまま公園の中まで行きたかったのですが、今日は色々と買うものがあるのでおあずけ。帰りに来るからと、その雄姿に一旦別れを告げます。
この後、すぐ近くの『らら・いわて』でみんなへのお土産を購入。お土産は買えるときに買う。車が無いと機動力が無く、お土産を買う機会を逃すこともあるので、僕の中での鉄則です。
盛岡でお土産を買うなら、駅よりもらら・いわてが好き。地場産のものがたくさん揃っており、お土産屋さんとはラインナップが違うのも楽しいのです。
旅の始めにお土産も確保し、ホッと一息ついたところで、お昼を食べることに。今回は敢えて下調べせず、目に入ったこちらの『やまなか屋盛岡大通店』にお邪魔してみます。
元気が旨いの暖簾通りの店員さんに迎えられ、ホッと一息。というのも、焼肉屋さんに行って冷麺1杯を頼むのって、結構な勇気がいる気がするのです。これって僕だけなのかなぁ。
そんな申し訳無さを感じさせない店員さんが、お待ちかねの冷麺を運んで来てくれました。そうそう、盛岡に来たら絶対に食べなければいけない、冷麺だ!
お待ちかねの冷麺とのご対面に、早くもわくわくが止まらない。逸る気持ちを抑えて澄んだスープをひと口。どれかのだしが突出して感じるということはなく、その見た目通り飲みやすく、バランスの良いすっきりとした味わい。
そして盛岡冷麺と言えば、の特徴的な麺を啜ってみると、瑞々しさの中に弾力と歯ごたえを感じる美味しい麺。もちもち、グニグニとした麺も好きですが、このスープにはこのピンとした麺が合います。
プレーンでひと口味わったところで、別添えのキムチを投入。すると、旨味や魚介の風味、酸味がガツンと加わり、やっぱり盛岡冷麺はキムチを入れてこそなのだと実感します。それだけキムチの味もしっかりしている、ということなのでしょう。キムチの汁もたっぷりあり、好みの辛さに自分で調整できるのもいいところ。
冷麺は、麺好きな僕の中でも大好物のひとつ。でも、東京ではどうしても焼肉の後としてしか食べないものなのです。だからこそ、こうして冷麺だけでも当たり前に食べられる盛岡の雰囲気が大好き。
美味しい冷麺を堪能し、カワトク百貨店の別館で見つけてはいけないものを見つけたり、これから必要になる食料品を物色したり。あちこち歩き、電車の時間となりました。
中心地にもスーパーはあったのですが、見てみた中で今回買い物をしたのは、『マルイチ材木町店』。特に野菜が地のものが多く、普通の仕入れとは別に、地元産の青空市場のような陳列コーナーも。
スーパーであれこれ悩む贅沢。こんなに生鮮食品を買い込むということは、もう行く場所はあそこしかありません。僕の極楽浄土である花巻に向け、重たい荷物と僕を乗せて列車は走り出すのでした。
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