1周約40分、青い海に青い空、そして複雑な地形や奇岩を楽しむ船旅を終え、陸へと上がります。船着き場から有名な海岸を目指し、遊歩道を歩きます。
船着き場から進むと、すぐにトンネルに突入。トンネルを抜けて右を向くと、両側を山に挟まれた奥に青く輝く海が。目と鼻の先の海岸を隔てる山、そしてそれを貫くトンネル。三陸のリアス式海岸を強く実感する光景。
この小さな浜にはマリンハウスというレストハウスがあり、そこからは有名な小型観光船「さっぱ船」が発着。歩いている途中にも、出航する人、帰港する人がいました。僕も最初は乗りたいなと思いましたが、先程の本気揺れを体感した後なので遠慮しておきました。これはまた次のお楽しみに取っておくことにします。
さっぱ船乗り場を横目に波打ち際へと進むと、足元にはこんな白い岩が。火山岩の一種である流紋岩によって造られた浄土ヶ浜一帯は、この岩の白さこそが、その景色を極楽浄土たらしめるのでしょう。
複雑に入り組んだ海岸沿いを行く遊歩道。歩を進める度に新しい景色が目に入り、先に、先にと歩くのが楽しくなります。
澄み渡る三陸の海と、秋の空。それに映える白い流紋岩は所どころ松に覆われ、そのコントラストはまさに絶景そのもの。岩に砕かれる波しぶきが、静かなる景色の中に動きと音を添えます。
そしてついに、憧れてきた浄土ヶ浜のこの海岸に到着。見渡す限り広がる白い浜。その先には、静かな入り江に佇む荒々しい岩山。僕の写真ではその魅力の数パーセントすら、伝えられない。この光景に出合った瞬間、浄土ヶ浜の名の由来に心から納得するほど。
白く輝く火山性の岩山は、長年の波浪や風雪によって独特な形に浸食され、その姿が、浄土ヶ浜の景色を一層印象深いものとしています。ただただ、きれいなだけではない。この岩の何とも言えぬ、美しさの中にある妖しさが、ここがあたかも現世とちがう世界、極楽浄土であるかのように感じさせるのです。
この浜も全て流紋岩で覆われ、その白さが秋の陽射しを映して輝きます。寄せては返す波が、細かく砕けた岩に吸い込まれてゆく。その様を、いつまでも飽きずに眺めていたいほどの、静寂に包まれた美しさ。ウミネコも同じことを思っているのでしょうか。輝く浜と海を背景に、皆同じ一点を無心に見つめています。
初めての浄土ヶ浜にすっかり見とれていましたが、ふとお腹が空いていることに気付きます。冷えた体とお腹を温めるため、すぐ隣に位置する『浄土ヶ浜レストハウス』に入ることに。
浜処うみねこ亭と名付けられた食堂は広々とした空間と、そして大きな窓から見えるこの景色が開放的。
浄土ヶ浜の絶景を飽きずに眺めながら待っていると、お待ちかねのラーメンが到着。色々な海の幸系の麺類があるなかで、悩んで注文したのは、浜ラーメン。
この浜ラーメンには、このレストハウスオリジナルの「たつっと浜だれ」という塩ベースの万能だれが使われているそう。澄んだスープをひと口飲むと、塩の中に濃い海の味わい。
そのスープに載せられているのは、ほたてやいか、えびといった魚介と、めかぶやとさかのり、わかめといったたっぷりの海藻たち。美味しい塩だれが絡んだ海藻は、海藻好きにはたまりません。
麺は細めのつるっとした麺で、海藻といっしょにつるつると啜るのにぴったり。塩だれベースなので、普通のラーメンとは違った印象。コクのある海藻入りのお吸い物といった雰囲気の優しい美味しさに、スープまでしっかり飲み干しました。
海風で冷えた体もすっかり温まり、再び浜をのんびり、ぷらぷら。しばらくは浜辺でじっとしていたのですが、歩くたびに変わる景色がやはり楽しく、そして美しく、バスの時間まで思う存分その絶景を愉しみます。
今回、大人になって初めて泊まる三陸地方。震災前から来たいと思いつつ、やっと今、その機会に恵まれました。そしてここ浄土ヶ浜こそが、その中でも一番、ずっと来たい、来たいと強く思い続けてきたところ。
初の浄土ヶ浜。これほどの晴天に恵まれ、これほどの美しい姿を魅せてくれるとは。長年の願いが叶い訪れることができた喜びと、その期待を超える絶景に、ただ、ただ感動するばかりなのでした。
コメント