熱いけれど体に優しくなじむ台の湯を味わい迎えた爽やかな朝。今日も暑くなりそう、そう感じさせる夏空が広がります。
朝風呂を楽しんだ後はお待ちかねの朝食。しっかりと塩がきいた鮭や、懐かしさを感じさせる煮物、ピーマンの入ったきんぴらなど、手作りの美味しいおかずが並びます。
初めて訪れた台温泉。山に抱かれた静かな温泉街は、しっとりとした雰囲気と熱めのお湯の印象を、しっかりと僕の心に残してくれました。花巻、まさに温泉天国。また来てしまうことでしょう。
花巻から東北本線に乗り、盛岡駅に到着。初めて降り立った時から8年で、何度ここへ来ることができたでしょうか。この駅舎を見る度に、再び訪れることのできる幸せを噛み締めてしまいます。
そんな僕の盛岡に来た感を一層盛り上げてくれるのが、市内へと入るときに迎えてくれる、この開運橋。何度見ても優美なアーチを見せてくれるこの古老に出迎えられ、一路市内の目的の店へと急ぎます。
去年ほどではないにしろ、今年も盛岡滞在は短時間。東北本線の中で、お昼に何を食べるか最後の最後まで迷っていました。
決心してホームへ降り立ったものの、駅から出れば冷麺の美味しい盛楼閣がすぐに目に入り、未練を断ち切って歩き始めれば、HOTJaJa、ぴょんぴょん舎のダブル攻撃。それでも、ここで誘惑に負けてしまう訳にはいかないのです。
固い決意を胸に歩みを進め、アーケードを抜けて櫻山神社の前まで到着。本当ならばここで盛岡城跡を散策したいところですが、それも我慢して神社の反対側へと進みます。
僕が今回こそはと固い決心を抱き訪れたのは、盛岡の三大麺のひとつ、じゃじゃ麺の元祖と言われる『白龍本店』。何度かここの前を通りましたが、いっつも並んでいるんです。だから、時間に余裕が無いと食べずに諦めて帰る、なんて事態になってしまいそう。
だから今回は、他の誘惑にも目をくれず、一目散にここを目指しました。そしてやっぱり並んでいる。近くには、以前には無かった分店が出来ていましたが、そこも同じく並んでいます。
バスの時間に間に合うかどうか少しの心配を抱きつつ、席が空くのを待ちます。僕が並んだのは本店の方。狭い店内にはぎっちりとお客さんが座り、じゃじゃ麺が来るのを待ち構えています。そう、僕が到着したのは開店時間直後。まだみんな食べ始めていない状態なので、段々と時間の方が不安になってきます。
それでもそこは老舗、一度麺が茹で上がり始めればあっという間にみんなに注文の品が行き渡りました。そして僕も席に着き、程なくしてじゃじゃ麺が到着。食べられることにまずは一安心。
熱々の麺がひっつかないうちに、味噌としょうがをよ~く混ぜ混ぜ。こちらの肉味噌は、これまで食べたお店よりも固めで細かめの印象。味噌がほぐれると、麺にしっかりと絡み付きます。
そして待望のひと口目。肉味噌はしっかり目の味付けで、もやっと感の無いはっきりとした美味しさ。そして麺がもっちもち。
いやぁ、じゃじゃ麺は食べれば食べるほど旨くなってくる。途中でラー油やにんにくを足し、好みの味を探りつつ楽しむこの美味しさ。粗めに切られたきゅうりが、しっかりとした味の中でいいアクセントになっています。
そして最後にちーたんで〆。スープが本当に熱々なので、今までで食べたお店の中で一番卵がいい具合に仕上がっています。夏の暑い最中に熱々のスープで汗だくに。あぁ幸せ。
じゃじゃ麺は本当に不思議な食べ物。初めて食べた時は、美味しいけれど正直何故そんなに有名なのかがいまいち分からない、言わばもやっとした印象の食べ物でした。
それが何度か食べるうちに、どんどん美味しさが増してくる。じゃじゃ麺といい、宇都宮餃子といい、強烈な個性を感じさせないからこそ、飽きが来ず、また次も、その次も食べたいと思わせる美味しさがあるのでしょう。盛岡へ来たら、やっぱりじゃじゃ麺か冷麺。いつもその2つで悩んでしまうのです。
そんな盛岡ともお別れ。駅前から今年も『岩手県北バス』ヨーデル号に乗車し、一路弘前を目指します。
車窓には眩しいほどの夏空と、それを裂くように聳える南部片富士。雄大な岩手山を眺め、岩手に別れを告げるのでした。
バスは快調に東北道をひた走り、秋田県に突入。去年はこの辺りでは土砂降りでしたが、今年は雨のアの字も感じさせない晴れた空が広がります。
ギラギラに輝く夏の空と、その光を思い切り映す田んぼ。夏の東北は、何度見ても、いつまで見ても飽きさせない。短い夏に詰まった輝きが、瞳を通して心の奥まで押し寄せます。
今年ももうすぐ会える、弘前のねぷた。今年は雨の心配も全くなし。この燃えるような夏景色を眺めつつ、早くも耳には太鼓と鉦の音が響きだすのでした。
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