白石蔵王駅から、『宮城交通』の宮城蔵王ロイヤルホテル前行きバスに乗車。と言っても行先は遠刈田温泉と書かれているので、何も知らなければ少し戸惑ってしまうかもしれません。
バスは白石駅を経由し、白石市街地を抜けて山の方へと舵を切ります。車窓には、燃える緑と夏の空。その境には蔵王連峰が見え隠れし、その距離はどんどんと近くなってきます。
バスに揺られること約50分、終点の宮城蔵王ロイヤルホテルに到着。そこで事前にお願いしていたお宿の送迎車に乗り換え、一路青根温泉へ。いくつかある宿の中で、今回選んだのは、『岡崎旅館』。ホームページで見た本館の雰囲気に惹かれ、宿泊を決めました。
早速チェックイン。僕が予約したのは、本館プラン。玄関があるのは新館ですが、木造の好きな僕はもちろん本館で予約。新館からは地下通路で繋がっています。
古き良き雰囲気を残す廊下を歩き、通されたお部屋はきれいに手入れのされた広くて開放感のあるお部屋。純和風の旅館部屋、落ち着くなぁ。
窓からは、絵日記から飛び出してきたような夏の景色を独り占め。青い山と空に、白い雲。標高800mの高原の夏が、窓ガラスに凝縮されています。
そしていよいよ待望の、伊達家ゆかりの御殿湯でもあった、青根の湯とのご対面。大きな窓からは、盛りの緑が溢れだしています。
いざ、入湯。熱い!!それが第一印象。でも、気持ち良い。弱アルカリ性単純泉のこのお湯は、すっきり、さっぱりとした浴感。熱さの中にもまろやかさがあり、肌を刺すような嫌みな感じはありません。熱いけれども、じっくりゆっくりと浸かれば入れてしまう。飽きの来ない良い温泉であるという証。
熱い湯で旅の疲れを流し、湯上りに感じる爽快感。夏の温泉も良いものだ。暑い中で暑さを楽しむのも、夏の旅の醍醐味です。そんな湯上り、部屋へと戻る途中で見つけたレトロなマッサージ椅子。こちらのお宿は古き良きを大切にしているのか、随所随所に良い雰囲気を醸し出す調度品や装飾が置かれています。
時刻はまだ15時台。湯上りの汗が引いたところで、青根温泉の街を少し散策してみることに。
まずは僕が惹かれたこの旅館の本館から。こちらの建物は昭和元年に建てられたそうで、その当時の趣のまま、現役の宿の施設として使われ続けています。
宿に隣接する日帰り温泉、じゃっぽの湯の向かいに、ひと際目立つ洋館が建っています。この建物は青根洋館と呼ばれ、明治に仙台に建てられたものをこちらに移築したものだそう。洋館の背後に広がる空の近さに、ここの標高の高さが感じられます。
駐車場から先を眺めれば、どこまでも続く穏やかな景色。空と山が、様々な色合いの青と緑で形作られていることを教えてくれる、そんな宮城の夏模様。
照り付ける太陽と暑さを思い切り味わい、ふと見上げる空。そこには絵に描いたような夏雲が浮かび、まるでジブリの世界にでも迷い込んだかのような美しさ。
コンクリートに囲まれて過ごす不快な夏。最近ではそんな負のイメージばかり抱くこの季節ですが、久々に僕はこの季節が好きだったことを思い出します。小さい頃、この雲好きだったな。
思い切りの夏を体中で味わい、宿へと戻ります。少しクールダウンしたところで、再びお風呂へ。本館にある2つのお風呂はどちらも貸切で、空いていれば自由に鍵を掛けて使うことができます。
その2つのうちのひとつがこちらの浴室。味わいを感じさせるタイル貼りが、お湯を静かに味わう空間を演出します。
最初から真夏の暑さを楽しむ出だしとなったこの旅。これから始まる熱い夏の予感と青根の湯の熱さに、早くも逆上せ気味の幸せを感じるのでした。
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