八幡平・安比エリア宿泊者限定の送迎バスに揺られること1時間、今宵の宿である東八幡平温泉の『八幡平ロイヤルホテル』に到着。巨大なホテルのため、バスの車窓からしか全貌は写せませんでした。
あれ?秘湯じゃないの?僕にしては珍しい宿のチョイスです。自分自身でもそう思いますが、今回はJRの足付きプランを利用する必要があったので、土曜日に空いている盛岡近郊のホテルを探して、こちらに辿り着きました。
いざホテルに入ってみると、やっぱりでかい。このホテルはダイワハウスグループで、各地にロイヤルホテルブランドで展開されています。実はこの八幡平ロイヤルホテルは松川温泉へ行った時に通ったことがあり、その時の印象もでかいなぁ、というものでした。
普段泊まる機会の無い大きなホテルのロビーに気圧されつつもチェックインし、部屋へと向かいます。今回は運よく同じ値段で和室に泊まることが出来ました。大型ホテルの和室を一人で利用できるのは本当に嬉しい。
館内は大型ホテルの装いですが、和室は落ち着きのある馴染のある雰囲気。ホッと一息ついてカーテンを開けると、思わず息を呑む景色が飛び込んできます。秋に彩られた南部片富士。岩手山の姿を独り占めできるなんて、この景色だけでもここへ来た甲斐があるというもの。
この日は土曜日で、大浴場はいつ行っても人がいたため、敢え無くお風呂の写真は断念。
といっても、ホテルの規模に見合うだけの大きな内湯と露天風呂があり、混雑感はありません。特に露天の雰囲気がよく、八幡平の森の中に包まれる感じが良い。周りの木々は紅葉し、大型ホテルに居ることを忘れるような静けさ。
お湯は八幡平温泉。以前見た松川の地熱発電所から引き湯しているものだそうで、単純硫黄泉。無色透明でそれほど硫黄の香りはしませんが、温まり方はバッチリ。
この旅初のお湯を愉しみ、部屋へと戻ったところで乾杯を。染まる岩手山を眺めながらビールを飲めば、この上ない爽快感が喉から心へと駆け巡ります。こんなに眺めがいいなんて。贅沢だ。
想像以上の部屋からの眺望にうっとり。飽きることなく紅葉を眺めていると、辺りは暗くなりはじめ、月の存在感が増してきました。八幡平の山の縁を辛うじて照らす、陽の名残。黒々とした稜線との境に何とも言えない色彩が横たわります。
空も山と同じ色になった頃、お待ちかねの夕食の時間に。こちらのホテルにはいくつかのレストランがあり、今回和食のプランを申し込んでいた僕は、2階にあるレストランへ。こちらは比較的空いており、落ち着いて食事を楽しめそう。
テーブルに着くと、早速前菜とお刺身が運ばれてきました。前菜にはきのこやさつま芋、栗など秋を感じさせる食材が散りばめられ、これはどんな味なのだろう?と少しずつを色々楽しめるのが嬉しい。お刺身も、日本の背骨に位置するにもかかわらずしっかり美味しい。
続いてはひっつみ鍋が登場。丁度良い濃さのだしが張られた鍋には、生のひっつみとほうれん草が入れられており、自分好みの煮え具合で楽しむことが出来ます。郷土料理が出てくると、一気に岩手に来た感が増します。
熱々を運ばれてきたのが、鱧ときのこのお吸い物。澄んだお出汁に鱧と松茸が浮かべられ、香りと旨味が丁度良い塩梅の上品なだしに広がっています。
こちらは鮭の利休焼き。ふんわり、しっとりと焼かれた鮭からは、じんわりとした味わいがひろがります。
続いてはこちらも熱々、豚肉のおから蒸し。おからに包んで蒸された豚肉はとても柔らかく、余分な油分を吸い取りつつ、美味しい白身だけが残っています。豚の甘さを邪魔しない控えめな餡が掛かっており、お豆やクコの実の食感がまた良いアクセントに。
更にもう2品運ばれてきました。左のお魚は鱚の昆布〆。このような鱚の食べ方は初めてでしたが、旨味と食感が程よく凝縮した身が酢味噌にぴったり。
お隣は南瓜みの揚げ。細く切られたかぼちゃをまとめて天ぷらにしたもので、とても甘くかぼちゃの美味しさをシンプルに味わえます。
更にこの後、何故か写真を撮り忘れましたが、きのこごはんにお味噌汁、お漬物、デザートまで平らげ大満足。どのお料理も工夫され、味付けも丁度良く、食べて美味しく楽しい夕食でした。
お風呂や食事において、勝手に大型ホテルに抱いていたイメージをいい意味で裏切られ、もうご満悦。ご機嫌で岩手最初の夜を迎えます。
漆黒の闇に包まれた八幡平で過ごす、静かで穏やかな夜。そんなゆるやかな時間のお供に選んだのは、盛岡は菊の司酒造の岩手山純米酒。岩手第一夜に相応しい、どストレートな名前に惹かれて購入。
味わいもすっきりとキレがあり、僕好み。何度飲んでも、どれを飲んでも、岩手のお酒ははずれが無い。だからこうして、何度も来てしまうのです。
静かな環境に抱かれ上々のスタートを切った、岩手に籠る11日間。いよいよ明日から、禁断のアレに浸ります。
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