GW 列島半分 ぐるり旅 ~願えば海路の日和あり 6日目 ③~

新日本海フェリーはまなすレストランでにしん竜田揚げ、角煮、ザンギの夕食

ただただ海を眺めつつワンカップを傾けるという自堕落な午後を愉しみ、少々早めながら夕食の時間に。新日本海フェリーの目玉ともいえるグリルではコース料理も楽しめますが、今回はレストランで好みのものをつまむことに。

夕食もレストランはカフェテリア形式での営業。カウンターに並ぶものから好みのものを選び、ご飯ものや麺類などは注文して作ってもらいます。

船上での食の楽しみを提案する新日本海フェリー。レストランでは季節ごとにテーマを変えたフェアーが開催されているようで、このときは北海道フェアーをやっていました。

ということでこれが僕のチョイス。ラストクラシックに合うようにと、にしんの竜田揚げ、北海道名物のザンギ、そして豚の角煮を選びました。

にしんの竜田揚げは生姜のきいた下味がしっかりとつけられ、ビールのお供にぴったり。ザンギは揚げたてなのかさっくりからっとした食感で、船の上のレストランとは思えないきちんとした仕上がり。豚の角煮も柔らかく、暮れゆく海原を見ながら最高の宴を味わいます。

新日本海フェリーはまなす夕食後に眺める暮れゆく海
この旅最後のクラシックと船旅を彩る食事を愉しみ、お腹も心も満たされたところでオープンデッキへ。

あぁ、もうすぐ憧れ続けた船旅も終わってしまう。そう思うだけで、この日本海のように心も暮れてしまいそう。

太平洋から日本海へ。この旅を思いついたとき、自分は天才だと思ってしまった。そしてそれを実行する今、我ながら自分のルートファインディング力を褒めてあげたい気持ちで一杯に。

新日本海フェリーはまなす売店で買った天橋立ワインで乾杯を
そんな壮大な船旅のフィナーレを飾るべく、船内の売店で天橋立ワインを買い込み、ひとりデッキで乾杯を。白、ロゼ、赤。それぞれグラデーションのように移りゆく味わいに、この極上の時間が明日も明後日も続いてゆくような幻想すら抱いてしまいそう。

新日本海フェリーはまなす小樽から遥か1000kmを越えて目にする舞鶴の灯り
深夜に小樽を出港し、遥か1000km以上もの距離を高速で駆け抜けたはまなす。名残惜しい。もっと船の懐で夢を見たい。フェリーの持つ包容力に、すっかり恋に落ちてしまった。そんなひと晩の恋も、もうすぐ終わり。夜の黒い海の先に揺れる舞鶴の灯りが、船旅の終演を告げるよう。

新日本海フェリーはまなす雨と潮に煙る窓
はまなすは無事に舞鶴港に接岸し、20時間に及ぶ幸せな時間ともお別れのとき。生まれて初めて降り立つ京都の沿岸部への期待を遥かに上回る、この切なさ。

なんだよ、フェリー。太平洋と日本海、その海原の表情ごとく、そこを走る船の魅力にも違いを魅せる。ダメだ、本当に船が好きだ。先ほど自分を天才だと褒めましたが、それは撤回したい。だって、パンドラの箱を開けてしまったのだから。

新日本海フェリーはまなす20時間を掛けた航海を終えデッキから下船する
時間がないと楽しめないという、船旅特有のハードルの高さ。それを知っていたからこそ、良き思い出ばかりのフェリー旅を封印していたのに。

でも今回、その箱を開けてみて良かったとも思えてしまう。そこに確かに、希望が見えたのだから。

手の届かないと思うものには、ついつい幻想を抱きがち。僕にとって船旅とは、まさにそんな存在だった。そして十数年ぶりに再会した船との逢瀬は、幻想などではなく本当の気持だったと気付くことができた。そのことを再確認できただけでも、この旅に出て良かったと心底思える。

小樽から1000kmを超えるという遥かな距離を、たった20時間で結んだはまなす。俊足かつ優しさを持つその船に抱かれ見た夢は、一生ものの大切な想い出。その温かい荷物を胸に、デッキから舞鶴の地へと降り立ちます。

夜闇に浮かぶ舞鶴港フェリーターミナル
生まれて初めて訪れる、京都市以外の京都。ずっとずっと、来てみたかった。東京からは中々来づらいこの地へ、まさか船で上陸できるなんて。海を越えてやってきた分、その感慨は計り知れないものへと変化します。

舞鶴港に到着し、新日本海フェリーに別れを告げる
フェリーターミナルを出て、もう一度はまなすにお別れを。

太平洋に、新日本海。日本を代表する両雄は、その名に恥じぬそれぞれの良さを持っていた。絶対に次があると確信が持てる。だからもう、振り返らない。ありがとう、またね!心の中でそう告げて、暗い夜道へと歩き出します。

生まれて初めて訪れる舞鶴のきらびやかな夜景
心配していた雨も上がり、もわんと温い空気が漂う夜の舞鶴。海だけでなく、季節も越えてきた。苫小牧から小樽への道のりが嘘であったかのように、僕の知っている初夏の温度感が全身を包みます。

夜の舞鶴振り返りもう一度はまなすを見る
ダメだ、やっぱり振り返ってしまった・・・。離れる毎に募る寂しさに、後ろを向かずにはいられなかった。遠くには、港湾の光に包まれ浮かぶはまなす。彼の船は新しい貨客を載せ、北へと向かう。そう思うだけで、目頭が熱くなってきてしまう・・・。

ホテルアマービレ舞鶴
未練を断ち切り、今度こそ振り返らず舞鶴の街へ。港から街を結ぶ人道橋を渡り切り、舞鶴の街へと入るとすぐに今宵の宿である『ホテルアマービレ舞鶴』に到着。港から近いため、はまなすからの下船客と思われる人々でフロントは賑わいます。

そんな下船客に紛れ、僕も早速チェックイン。あ、フロントの人、イントネーションが関西だ。当たり前ですが、思い返せばこれが4年ぶりとなる関西入り。久々に味わうその旋律に、この旅の第三幕が開いたことを強く実感します。

ホテルアマービレ舞鶴エアコンの無い訳あり和室
今回は、エアコンの無いという訳あり和室プランで予約。この時期には全く不便はなく、ゴールデンウィーク真っ最中なのに広い和室をひとり占めして申し訳ないと思うようなお手頃価格。

フェリー上陸後のホテルアマービレ舞鶴で味付海苔のおにぎりと菊正宗を
大浴場で旅の汗を流し、久々の畳の感触を味わいつつ湯上がりの一杯を。コンビニで灘の菊正宗を仕入れ、一緒におにぎりで腹固め。なんでおにぎりかって?だって、おにぎりの海苔が味付だからさ♪

9年前、初めて味付海苔のおにぎりを食べたときに味わったあの衝撃。それ以来、関西に来ておにぎりを食べることがある意味儀式になってしまった僕。

東京に籠っていたら知らなかったであろう、この味わい。久々に頬張るおにぎりに、日本の広さを噛み締める。旅を趣味としていて、本当に良かった。こんな些細な違いでも、実体験するからこそ、その土地というものを味わえる。耳に残る言葉とともに、味付海苔が僕の心を関西へと上陸させてくれるのでした。