護りの堅さを感じさせる細く長い道のりを経て、ついに姫路城天守閣内へと入ります。内部は太い柱や梁が縦横無尽に張り巡らされ、本当に木だけでこの巨大な建築物が支えられていることを強く感じさせます。
幾重にも並ぶ立派な木材。コンピューターなど無い400年以上も前に、人々の知恵と経験だけで築かれた建造物。何かと機械に頼りすぎな現代ですが、人にしかできないことがあるということを再認識します。
表では優美な姿を見せる破風も、内側から見れば武骨な柱で構成されていることが分かるような光景。白鷺城の美しさは、内に秘めたる強さに支えられているのです。
築城当時から巨大な天守を支え続ける東大柱。その長さは24.6m、新幹線一両分に匹敵するというのだから驚き。現在ではどう頑張っても、これほど立派な木材を調達することはできないでしょう。
内部の重厚さに圧倒されつつふと外を見れば、そこには幾重にも連なる櫓の姿が。自然の地形と石垣を駆使し建てられた姿は、こうして上空から望めば一層要塞感を増すかのよう。
いくつも現れる急な階段を登り切り、ついに大天守の最上階に到着。窓からは清々しい風が吹き込み、大勢の人の放つ熱気もどこへやら。
凛と立つしゃちほこ越しに眺める、姫路の街。お殿様の見ていた頃とは並ぶ建物は違いますが、穏やかに連なる播磨の山並みは同じはず。天守閣に登るといつも妄想してしまう、僕にとっての決まりごと。
お殿様気分に浸り、外へと出ます。正面から天守を望めば、その緻密で計算されつくしたかのような美しさに今一度見とれてしまう。本当にこのお城には、死角がない。
少しだけ歩き角度を変えれば、また新しい表情を見せてくれる白鷺城。数歩進んでは眺め、また進んでは眺めを繰り返してしまう。
下から見上げる姫路城。白鷺城とも称されるその白く輝く美しさと、心地よく心に響く威圧感。その感覚を言葉にすることは難しく、ただただ心の琴線に触れるとしか言えません。
離れがたい、立ち去りがたい、見ていたい。そう後ろ髪をひかれつつも、天守に別れを告げて先へと進みます。登るときの興奮、それに対する降りるときの寂しさ。その対比があるからこそ、こうして何度もお城を訪れてしまうのかもしれません。
天守を後にし、一枚、二枚・・・で有名な播州皿屋敷にちなんだ井戸や、延々と続く百間廊下などを見つつ広い城郭内を歩きます。そして最後にもう一度、白鷺城の美しい姿を。
小さい頃に出会った、烏と白鷺。そのふたつの名城は、子供の僕に強い衝撃を与えるには充分過ぎるほどの力を持っていた。そして今、大人になって再会できた姫路城。その美しさと力強さは、決して美化された思い出などではなく、揺るぎない事実であることを確認できた。
本当に来てよかった。僕の建物好きの原点のひとつである白鷺城の美しさに触れ、自分の中の何かが強く共鳴するのを感じるのでした。
背後にお城の気配を感じつつ、大通りを歩き駅へと戻ります。時刻はちょうどお昼どき。前々から食べてみたいと思い続けてきた名物を味わうために、『えきそばまねきグランフェスタ店』へと入ります。
その姫路名物というのが、このえきそば。えきそばと言っても駅そばとは違い、麺は中華麺を使用しています。中華麺とそばのだしとの相性が気になり、テレビてみて以来ずっと食べてみたいと思っていました。
そんな期待を込めつつ、まずはおつゆをひと口。うん、美味しいそばのつゆ。関西らしく東京よりもしょう油は薄めですが、だしがしっかりと効いているので味はしっかりと感じます。
そして待望の麺を。ひと口に中華麺と言ってもその食感は様々で、こちらの麺は小麦っぽさを感じるしっかりとした食感。これはね、合うよ!!全然違和感のない味わいに、初めてなのに全く抵抗なく一気に平らげてしまいます。
さらっと食べられる程よい量のえきそば。これだけで姫路のお昼を終わらせませんよ。続いては駅ビルピオレ姫路にある『播州骨付鶏とりいち』で、麺のはしごを。
注文したのは、温かい龍野そうめん。播州は言わずと知れた素麺の町。ここで本場の素麺を食べないわけにはいきません。
澄んだスープはほんのりと甘みのある、穏やかでじんわりと染み入るような優しい美味しさ。載せられた穴子から出る風味が、食べ進むごとに味わいを変化させます。
肝心の麺は、これまた優しい食感。温かい素麺は好き嫌いが分かれるところですが、僕は大好き。冷たい素麺には無い、ほっとするような味わいが楽しめます。
数々の旨いものと、美しいお城で大満足させてくれた姫路。26年ぶりに訪れたその街は、僕の知らない魅力ばかりだった。これはまた再訪せねばなるまい。その強い気持ちを胸に、この街に別れを告げるのでした。
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