小樽の代名詞ともいえる運河でのひとときを楽しみ、再び市内散策へと繰り出します。かつて北海道の経済の中心地として栄えた小樽。そこかしこに古き良き建物が残り、ただ歩くだけでも味わい深い街。
特にこの色内地区周辺は金融の中心であったこともあり、銀行や会社などの古いビルがあちらこちらに残されています。現役のものや別の用途で再利用されているもの、そしてもう今は使われていないものまで、その表情や役目は様々。
昭和初期の美意識の詰まった端正なコンクリート造が並ぶ中、ひときわ目を引く重厚な蔵が。この建物は呉服商の店舗として建てられた旧塚本商店、大正9年築だそう。
このときは立派な蔵だと思って通り過ぎましたが、調べてみると木骨鉄網コンクリート造という珍しい構造の建物とのこと。骨組は木ですが、表には鉄網を張りコンクリートで塗り固めたという、木造から鉄筋コンクリートへの移行時期ならではの構造。人と火災との闘いの中で生まれた、試行錯誤の歴史の生き証人。
歴史的建物の並ぶ運河付近を離れ、今度は山手にある駅側へと向かうことに。するとそこには延々と並ぶ渋い建物が。坂の下から上まで、小樽中央市場と中央卸市場が連なり営業しています。
歴史の香る重厚な建物ももちろん好きですが、人々の暮らしの中に溶け込み何となく遺された古い建物もまた味わい深い。先ほどの中央市場もそうですが、ここ三角市場もまた市民の台所として愛され続けてきた場所。
戦後すぐにお店が集まり始めたのがルーツだという三角市場。中へと入ると海産物をはじめとするお店がずらりと並ぶほか、美味しそうな魚介を提供する飲食店も。今が食事時なら、間違いなくここで飲んだくれていたことでしょう。
三角市場を出ると、もうすぐそこは小樽駅。駅前を通りすぎ、長いアーケードが続く小樽都通り商店街をのんびり歩き、南方向へと進みます。
商店街を進み、寿司屋通りへ。ここから海の方へと下り、ガラス屋さんが並ぶことで有名な堺町通りを目指します。その途中、あきらかに古そうな建物が。マルヒラ菓子舗と書かれた壁のモルタルの質感が渋味を感じさせ、柱に施された装飾もさりげなく華を添えます。
海を眺めつつ坂を下り、小樽でも有数な観光スポットである堺町通り商店街へ。ここには有名な北一硝子を始め、多くのガラスや工芸品、お土産屋さんが林立。さすがはゴールデンウィーク、多くの観光客で賑わいます。
賑わう人の波に紛れウィンドーショッピングを楽しみ、疲れたところで少々早めの夕食を。寿司屋通りで小樽の寿司をとも思いましたが、今回は気軽に自分の好きなネタを食べられる回転寿司に入ることに。
小樽にはいくつか回転寿司やさんがあるようですが、今回選んだのは『和楽』。大正時代に建てられた蔵を改装したというお店は運河のすぐ先に位置し、観光ついでに入るのにも便利。
場所柄観光客の姿も多く、写真を撮りやすい雰囲気だったので珍しく撮影。まずは好物のたらことサクラマスを。たらこはプチプチとした食感が美味しく、サクラマスはサーモンとは違った上品な脂と旨味、柔らかい食感がたまりません。鱒、好き♪
続いては、北海道といえばの白身を。今回はソイを注文しました。やっぱり北海道は白身が旨い。歯ごたえのある中にももっちりとした弾力があり、じんわりとした旨味が口へと広がります。
続いては軍艦を2種類。左は北寄のひも、コリッコリの食感と磯の風味、甘味が最高のひとこと。そして右は、東京では目にしたことのないカジカの子。
そもそもカジカ自体東京で見たことがないのですが、その卵を食べるのは初めて。とびっこよりも粒は大きく、魚卵の風味や旨味もより濃厚。しょう油漬けにされているので、卵の凝縮感が一層増しぷっちぷちとした食感がたまりません。
お次はこれまた大好物、活真つぶを。北海道といえば活つぶ!貝といえば問答無用でつぶ!!そう思うほど、貝の中でも一番好きなつぶ。噛めばゴリッとした心地よい歯ごたえの後広がる、甘味と磯の香り。東京では中々味わえない美味しさです。
と、ここまでもちろん北海道の旨い酒と共にお寿司を味わっていたわけですが、ここでおつまみ用にと巻物を。わさびを巻いた涙巻きなんてのはよく目にしますが、こちらでは北海道らしい山わさび巻きを発見。
山わさび好きとしては食べないわけにはいかんだろう。そう思いひと口。覚悟していたことですが、やっぱり襲うツンとした強い辛味。ですがその中にもわさびには無い独特な香りがあり、ちょんとしょう油を付ければいい酒のアテになること間違いなし。
そろそろお腹もパンパンになってきたので、着陸体勢へと入ります。お寿司はやっぱり自分の好物で〆たいもの。まずはこれ、ぼたんえび。縞えびにぶどうえびと、美味しい海老の宝庫である北海道。その中でも一番好きなのが、このぼたんえび。
期待しつつ待っていれば、こんなに立派なぼたんえびが到着。見るからにハリのある身には存分に甘味が詰まり、筋肉質な食感もまた最高のひと言。新鮮で臭みもなく、珍しく生の頭を分解してミソまでしっかり吸ってしまいました。
続いては、王道のいくらの軍艦を。実は僕、いくらは好きは好きですが、断然筋子派。それも鮭子ではなく鱒子が大好き。小樽で鱒子が食べられたらと期待していたのですが、いくらしかなくちょっと残念。
と文句を垂れていますが、いざ食べてみれば旨くないわけがない。ぷちぷちとした食感の後に広がる魚卵の味わいが、海苔やすし飯に絡んで言うことありません。
そして〆は、これまた大好物のうに。粒だったその見た目に期待しつつ頬張れば、溶けるのと同時に溢れる濃厚な海のエキス。旨味に磯の香、そして甘味。やっぱり北国のうには間違いない。
これが最後の北海道グルメ。1泊2日という自分史上最短の北海道滞在でしたが、もう思い残すことはない。美味しいお寿司をたらふく味わい、北の大地での残り少ない時間を満喫するのでした。
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