GW 列島半分 ぐるり旅 ~願えば海路の日和あり 9・10日目 ⑤~ | 旅は未知連れ酔わな酒

GW 列島半分 ぐるり旅 ~願えば海路の日和あり 9・10日目 ⑤~

琴平旧金毘羅大芝居金丸座 旅行記

こんぴらさんの往復で上がった息を調え、参道脇に位置する芝居小屋、『旧金毘羅大芝居(金丸座)』へと向かいます。ここは180年以上前に建てられた、国指定の重要文化財。芝居小屋として建てられ、その後映画館へと転用されたのちこの場所へ移築されました。

琴平旧金毘羅大芝居金丸座ひもと木札の掛かる下足場
ここは前回時間の都合で諦めた場所。念願叶い高鳴る胸を抑えつつ、低い潜戸から中へと入ります。そのすぐ左手には、ひもと木札がたくさん並ぶ下足場が。昔は下駄や草履など鼻緒のある履物だったため、こうしてひもで吊るし木札を証として渡していました。

琴平旧金毘羅大芝居金丸座730席もある大きな客席と立派な舞台
鳥屋と呼ばれる役者の出番待ちの場所から劇場内へと入れば、そこに広がるのは圧巻の光景。花道に立ち見回せば、三方ぐるりと取り囲む客席。その数は全部で730にもなるとのこと。これだけの広さと高さを持つ空間を、柱無しに支えてしまう。木造建築の技術の高さに圧倒されます。

琴平旧金毘羅大芝居金丸座舞台に切られた廻り舞台
役者気分で花道を進み、いよいよ舞台へ。数々の演目を支えてきた歴史の滲む舞台の感触を味わっていると、足元に円弧を描く隙間が。この部分は廻り舞台になっており、公演時には場面展開などの際に人力で回されます。

琴平旧金毘羅大芝居金丸座舞台上から見た花道と客席
舞台に描かれた松を背に振り返れば、舞台を囲むように広がる客席が。満員時はここから730人もの視線が注がれる。そう思うだけで、あがり症の僕には絶対できない職業だと痛感。

琴平旧金毘羅大芝居金丸座はしごのかけられた舞台裏
観客の視線の注がれる表とは対照に、舞台裏は木と土壁で構成された渋い趣。そこには急なはしごが架けられ、公演時には裏方さんが忙しく動き回る姿が目に浮かぶよう。

琴平旧金毘羅大芝居金丸座中軸部屋
舞台裏の階段を上がれば、太い梁がむき出しの楽屋がいくつも並びます。舞台化粧のため場なのでしょうか、部屋の一番明るい部分である窓際には長い机が設けられています。

琴平旧金毘羅大芝居金丸座奈落へと続く急階段
再び舞台裏へと降り、そこからさらに急階段を下ります。降りた先は奈落。「奈落の底」という言葉の由来となった、芝居小屋には欠かせない部分です。

琴平旧金毘羅大芝居金丸座奈落に並ぶ廻り舞台を回転させる棒
階段を下ると足元には石が円形に埋め込まれ、ここが廻り舞台の真下だということが分かります。上からは4本の力棒と呼ばれる棒が下がり、それを人が押して舞台を回します。ということは、あの舞台が4人の力で回ってしまうということ。

琴平旧金毘羅大芝居金丸座石垣の壁が美しい奈落
廻り舞台の他にも、セリやすっぽん、空井戸など、様々な演出のために必要な舞台装置を支える奈落。舞台裏の楽屋で待機していた役者が鳥屋へと移動する際に通るのもここで、お芝居を支えるまさに縁の下の力持ち。

琴平旧金毘羅大芝居金丸座西桟敷
舞台裏と舞台下を見終え、続いては2階の客席へ。東西に桟敷が並び、特にこの西側は上手にあたるため昔から身分の高い人の席として使われていました。役者はこの席の客によく見えるように見得を切るのだそう。

琴平旧金毘羅大芝居金丸座舞台の対面に位置する客席向う桟敷からの眺め
東西の桟敷の間には、向う桟敷という三段の階段状に設けられた客席が。その最後列は一番安い料金で入場できる席だったそうで、前に座る人々の隙間から、辛うじて役者が垣間見えるというような状態だったことでしょう。

琴平旧金毘羅大芝居金丸座天井を覆うブドウ棚と花道上にのびるかけすじ、並ぶ顔見世提灯
2階の桟敷からは天井部分の構造がよく見てとれます。全体を覆うのは、竹を荒縄で組んだブドウ棚。この上に黒子が控え、紙吹雪を降らせるなどの演出を行います。

手前の花道上にのびる足場のようなものはかけすじといい、役者を吊って移動させるもの。江戸時代から宙吊りという演出があったことに驚きます。

そして天井中央部には、家紋の入った大きな提灯が並んでいます。これは顔見世提灯といい、公演時には役者番付の役割も担うのだそう。

こうして江戸時代から続く工夫を目の当たりにすると、見てみたいという気持ちが自然と湧いてくる。これまで演劇の類には縁がありませんでしたが、一度歌舞伎を見てみたい、初めてそう感じました。

琴平町公民館
江戸時代から続く芝居小屋の空気感に圧倒され、金丸座をあとにします。するとすぐ近くに、これまた目を引く立派な建物が。近付いてみると、どうやら琴平町の公会堂のよう。

琴平町公会堂裏側
この建物は昭和9年築で、国の登録有形文化財にも指定されているそう。木造の滲ませる建築美はどことなく寺社に通ずるものがあり、こんぴらさんの守る琴平の街にひっそりと溶け込むかのよう。

金刀比羅宮参道にある金陵の里
再び賑やかな参道へと戻り、駅方面を目指します。その参道の中でもひときわ目を引く『金陵の郷』で、最後の琴平を楽しむことに。

金刀比羅宮参道金陵の里に残る江戸時代の酒蔵
ここ金陵の郷は江戸時代から続く酒蔵を改装したもので、銘酒金陵の歴史や文化、そして味にも触れることができます。

内部には酒造りに使われた道具や、全国各地で特徴の異なる杉玉など、呑兵衛としては親しみある展示物が並びます。そしてやはり目を引くのが、蔵を支える柱と梁。木造建築の放つ色合いからは、時代の変化を越えて伝統を支え続ける力すら感じるよう。

金刀比羅宮参道金陵の里立派なくすのき
人と酒の織り成す歴史に触れ、そしてもちろん味も確かめます。売店でいくつか試飲させていただき、そのなかのいくつかをお持ち帰り。前回は自転車旅だったので、ようやくこの場で金陵を味わうことができました。

うどんに石段、絶景に古き良き建築。10年ぶりの琴平は、記憶以上に魅力的だった。前回は時間の都合もあったとはいえ、そのときには見えていなかったものがたくさんありました。

それをこうして見つけられたのは、少しは視野が広くなったということなのか、それとも、旅への執着が一層深まったということなのか。いずれにせよ、10年を経て得た変化を気付ける、旅という趣味を持てたことの歓びを噛み締めるのでした。

GW 列島半分 ぐるり旅 ~願えば海路の日和あり~
太平洋フェリー船上で眺める御来光
2018.4-5
愛知/北海道/京都/兵庫/岡山/香川
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●1・2日目(東京⇒名古屋⇒太平洋フェリー)
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●3日目(太平洋フェリー)
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●4日目(太平洋フェリー⇒苫小牧⇒札幌)
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●5日目(札幌⇒小樽⇒新日本海フェリー)
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●6日目(新日本海フェリー⇒舞鶴)
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●7日目(舞鶴⇒天橋立⇒姫路)
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●8日目(姫路⇒岡山)
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●9・10日目(岡山⇒琴平⇒高松⇒東京)
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コメント

  1. :柴犬クッキー より:

    こんにちは。
    芝居小屋・・・テレビで観た事あります。
    でも実際こんなに奇麗な写真で見るのは初めてです。
    舞台裏もステキですね。
    のんびりこういうところ旅してみたいです。
    そう言う年齢になったのかと・・・つくづく実感しています。
    いつも楽しい旅・・色々ブログで楽しませていただいています。
    今温泉がお気に入りで主人と近場の日帰りを楽しんでいます。
    三重県はあまりいい所がありません・・・(住んでいるからそう思うのかも?)
    来年はお互いに還暦なので大涌谷に行って見たいです。
    以前2回ほど行きました。
    黒たまごが食べたくて(笑)

    またその周辺でいい所があれば聞かせてくださいね。

    • shimachu より:

      柴犬クッキーさんこんにちは!!嬉しいコメント、ありがとうございます!

      温泉巡り、いいですね~♪
      三重は食べ物も美味しいし、景色もいいし、温泉もありでとてもうらやましいです。
      ぜひ今度おすすめの三重の温泉を教えてください♪

      大涌谷、ダイナミックな景色と硫黄の香りでいいところですよね!
      関東や東北にはあのような地獄は比較的多くありますが、
      やっぱり交通の便の良さでは大涌谷が一番だと思います。
      黒たまごも美味しいですし、ひとつ食べれば7年長生きできますし!!
      箱根も泉質やロケーションの違う温泉地が密集していますから、
      ぜひぜひお出かけください。お待ちしております♪

      長かった今回の旅行記も、次回で終了の予定です。
      思い入れの強い旅だったので少しさみしい気もしますが、
      この後も八重山、ねぷたと続きますので、
      また遊びに来ていただければとても嬉しいです♪

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