この日は丸1日金沢散策。絶好の散策日和、抜けるような青空が広がっています。そんな青空の色を映すかのような水色を纏う犀川大橋。来年で架橋90年という古老ですが、鋼の織り成す優美な姿に見とれてしまいます。
そう言えば、ハタチの頃の僕は橋にも興味は無かったし、街並みにもそこまで魅かれるものはありませんでした。
ところが、ここ金沢の街並みを見て感銘を受け、この犀川大橋を見て橋の持つ美しさを感じ、そうした体験が今の僕を作ってくれました。金沢の街、そして犀川大橋は、僕に大切なものを教えてくれた恩人ともいえる存在なのです。
美しいトラス橋との12年ぶりの再会を果たし、晴れ晴れとした心持ちで歩きます。この金沢は新旧が仲良く同居する街。広い国道沿いというのに、屋根に石を載せた古い建物が現存しています。
ホテルからのんびり歩くこと15分、にし茶屋街に到着。金沢にある3つの茶屋街のうちのひとつで、風情ある出格子の建物が並びます。
にし茶屋街の見番。茶屋様式の建物が途切れたところにあり、和の空気が漂う一画の中でひときわ目を引く洋風の建物。モダンなたたずまいが、古くからのこの街の賑わいを思わせます。
振り返り、にし茶屋街をもう一度。12年前の記憶が鮮明に蘇ると同時に、思い出の中の金沢が変わらずここに在る喜びを噛み締めます。
にし茶屋街を後にし、再び歩き始めます。どこまでも晴れ渡る空と、きらきらと流れる犀川。その先には、薄らと雪を纏った山並みが横たわります。
のんびり歩く金沢の街。ビルの並ぶ国道沿いを進んでいると思いきや、突然その隣に古い建物が。新旧の建物が共存する街並みが好き、という点も、ここ金沢を訪れたことが原点だったのかもしれません。
そのまま進むと、金沢城を守る重厚な石垣が出現。その大きさに圧倒され、しばし見入ってしまいます。都会の真ん中にお城がある街、好きだなぁ。
兼六園側の坂を登り、石川門正面に到着。晴天に映える白壁が威容を誇る印象的な門。この石川門は、江戸時代より残る国の重要文化財。金沢城では数少ない藩政期からの建物です。
間近で見上げる石川門。白壁や独特の色をした鉛瓦と共に、この門を印象的にしているのがなまこ壁。蔵などでは見たことのある様式ですが、お城でこの壁を纏っているのは初めて見ました。
門をくぐると、広々としたスペースが広がっています。この日は暑いくらいの気候。燦々と降り注ぐ太陽を受け、白壁が眩いほどに輝きます。
こちらは3年前に復元された河北門。こちらが実質的な金沢城の正門だったそうで、資料や写真等をもとに、往時の姿のまま復元されたもの。
こちらも復元された五十間長屋と菱櫓、橋爪門続櫓。この奥が二の丸広場になっており、天守閣の焼失後お城の中心となっていた二の丸を守るために建てられた櫓だそう。長屋の内部は武器などの倉庫に使われていました。
続いて三十間長屋。こちらも国の重要文化財、江戸時代より残る建物。金沢城の建物は、白い漆喰壁となまこ壁のデザインで統一されていたのでしょうか。どの建物を見ても統一感があり、加賀百万石の栄華を感じさせる優美な意匠に目を奪われます。
この日は日曜日で特別公開されていたため、中へと入ることができました。内部は2層式になっており、太い梁がその堅牢さを物語っています。
2階へと上ると、高い屋根と自然の曲りを活かした梁が並ぶ姿に圧倒されます。長年に渡り北陸の風雪に耐え続けてきた力強さが伝わってくるよう。
窓の格子から覗く金沢の街並み。この長屋は150年以上もの間、加賀百万石の城下町、金沢を見守り続けてきました。街の様子は変われど、華やかさを持つ金沢の街の空気は受け継がれてきたことでしょう。
三十間長屋を出て、本丸園地へと向かいます。この場所はかつて、金沢城の天守閣があった場所。落雷により天守閣は焼失し、それ以来天守閣は再建されることはありませんでした。現在は、金沢の市街地にいることを忘れてしまうほど深い森に覆われています。
本丸園地のはずれ、辰巳櫓跡から望む城下の眺め。江戸時代には一体どのような眺めが広がっていたのでしょうか。建つ建物は変わっても、今と同じく見渡す限りに広がる街並みがあったことでしょう。
こちらも重要文化財の鶴丸倉庫。なまこ壁の城郭とは意匠を異にし、土蔵に石板を貼った重厚なデザイン。金沢城に現存する建物は、石川門、三十間長屋、そしてこの鶴丸倉庫の3つのみだそう。往時の金沢城の威容を伝える貴重な存在です。
池や色とりどりの花の咲く鶴の丸広場。初夏の太陽を浴びた白壁に彩りを添える草花たち。
鶴の丸広場をでて三の丸広場へ。鉛瓦の屋根、漆喰の壁と、それらを引き締めるなまこ壁。すべてが一体となり、整然とした美を醸す金沢城の建築は、一度見たら忘れられないほど印象的。独特な力強さと華やかさを感じさせます。
予想以上に広大で、見どころの詰まった金沢城巡りもラストスパート。日曜日ということで、石川門も内部を特別公開していました。
存分に金沢城を楽しみ、城外へ。黒く鈍く光る鉄板が打ち付けられた門をくぐり、外へと出ます。
百万石を治めた加賀藩の居城、金沢城。初めて訪れ、その迫力に圧倒されっぱなしの1時間を過ごし、次なる目的地へと向かうのでした。
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