文字通り、温泉の宝庫である中房温泉。序盤で山道に迷い込み、思いがけず焼山まで行ってしまったため、まだひとつしかお風呂に入ることができていません。
残念ながら、今回は1泊2日のみの滞在。なるべく多くのお風呂を体験したく、次から次へとお風呂を巡ることにします。
二湯目は、中房温泉の中でも一番高い場所にあるという月見の湯。周囲は新緑に覆われた山に囲まれ、近い位置で爽やかな初夏の空を感じられる開放的なお風呂。
中房温泉の温泉は色々な源泉から湧き出していますが、どれもヌルつきを感じるアルカリ性の単純硫黄泉。無色透明ながら硫黄の香りが温泉気分を盛り上げ、肌への馴染が良い優しい浴感。
そんな柔らかな源泉に浸りながら浴びる初夏の山の風。緑も空もパステルに彩られたこの時期限定、何物にも代えがたい贅沢を味わいます。
焼山と共に中房温泉の象徴ともいえる、この巨大な温泉プール。地元の切石を使って造られた大きなプールにはもちろん温泉が使われ、今でもシーズンには現役の温泉プールとして使われています。
こちらも国の登録有形文化財。初めてテレビでこのプールを見た時、ただ単に凄いなぁとだけ思っていました。ところが、このプール、今から90年も前に造られたものだそう。
帰りのバスの運転手さん曰く、昔はテニスコート等もあり、今でいう一大温泉リゾートとしての役割を果たしていたとのこと。
今ある「秘湯」のイメージしか持っていなかった僕にとって、この運転手さんの話でこのプールの立派さにやっと納得。車が一般的になった今でさえ来るのが大変なこの地に、スパリゾートがあったなんて思いもよりませんでした。
温泉プールの下に位置する、地熱温浴。ござが無くてもそのまま楽しめるよう、木のすのこが設けられています。ごろんと仰向けに転がり晴れ渡る空を見上げれば、背中からじんわり、ぽかぽか。いつまでも寝ていられそうな心地よさ。
月見の湯からプール、地熱温浴を経て旅館方面へと戻ります。振り返れば、旅館の施設が緑に囲まれ点在しています。本当にここのスケールには圧倒されます。
旅館を通り越し、駐車場方面へと戻って菩薩の湯へ。こちらは月見の湯とは一転、深い森の中に抱かれた静かな環境。大きな湯船にはたっぷりと源泉が掛け流され、好みの深さや温度のところでのんびりしたいところ。
夕食後は清掃で入れないため、たっぷり楽しもうとのんびりしていた矢先、思いがけない家族連れがやってきました。
生い茂る葉で見難いですが、親子連れの猿が登場。子供がいる時期で、更にこちらはひとり裸で入浴しているというシチュエーションは結構恐いもの。ここは自然界のお猿さんに譲って、浴衣に着替えて宿へと帰ります。
お湯も環境も自然そのまま、まさに秘湯の風情をたっぷり味わい、今度は館内のお風呂を楽しみます。宿へと戻る途中、美味しい湧水と飲泉場が。
まずは乾いた喉を潤すために冷たい湧水をゴクリ。あぁ、沁みる~♪湯上りは、ビールもいいけど、清水もね。山の温泉でしか味わえない心地よさが、食道を伝わってゆくのを愉しみます。
続いてお隣の源泉を。硫黄の香りは感じますが、味はクセが無く飲みやすい。でもとっても熱いのでご注意を。
こちらは新館にある大浴場。混浴ですが、女性時間帯もあります。中房温泉で一番大きな湯船というだけあり、多くの人が入ってもゆったりできそう。清掃後まだ十分にお湯が溜まっていなかったため、ちょっとだけ浸かって出てきました。
大浴場を出て、更に先の別館にある薬師の湯を覗いてみます。こちらは古き良き温泉場の風情を漂わせるタイル造り。以前の僕ならな~んとも思わなかったでしょうが、最近はこんなシンプルな浴場も良いと感じてくるように。本当にここ数年で価値観、変わったなぁ。
もうここまで浴場が多いと、全部に浸かるのは諦めました。こりゃ今度来るときは連泊だな。
そんなことを考えつつ、部屋へと戻ります。途中、本館に併設された大湯を偵察。2階建てになっており、1階は湯けむりが立ち込める室内のお風呂。帰ってから宿のHPを見てみたら、ここはサウナなんだそう。どうりでレンズが曇るほど湯気が立ち込めていたはずです。
2階は小さめの浴槽に惜しげもなく源泉が掛け流される露天風呂。手を入れてみるとちょっとだけ熱め。でも、この独占してる感が何とも言えません。後で入りに来よう。
そして立ち上がればこの眺め。新緑のレースの先には、頭に白い雪を残した美しい山並み。ちょっと熱めの風呂に出たり入ったりして景色を眺める。もう一度言おう、後で入りに来よう。
残るお風呂はあと2つ。偵察が一段落したところで一休み。一休みと言えば、もちろんコレ。何となく学校のような雰囲気を見せる中庭の先に文化財の建物を見据えながらのビールは、いつも以上に旨さ倍増。あぁ、幸せだ。
これまで駆け足で色々なお風呂をご紹介してきました。実際に入ったのはまだ4つ。こう書いていると、全部見なければというある種の強迫観念で動いているようにも見えるかもしれませんが、実際は全く逆。
露天風呂から露天風呂への移動は初夏のハイキングそのものだし、旅館の間の通路には面白い湯冷まし装置や湧水などの仕掛けがちらほら。館内のお風呂もそれぞれ表情が違い、敢えてあまり下調べをしないで行った僕にとっては、次はどんなお風呂が出てくるのかワクワクしてしまいます。
今回初めての中房温泉ですが、もうその魅力と懐の深さに溺れかけています。ひとつの旅館でこれほどまでにバリエーションに富むお風呂たち。個性の違う浴場がいくつも揃うここ、中房温泉では、きっと自分好みのお風呂が見つかることでしょう。
にしても、入って歩いて、結構疲れた。ビールに誘われるようにちょっとだけ居眠りし、まだ見ぬ2つのお風呂へ備えることにしよう。
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