20年以上ぶりの松本城を満喫し、城外へと出ます。それでも、このまますぐには去りがたいほどの魅力を発する松本城。お堀端をぐるりと回り、その雄姿を今一度楽しむこととします。
僕の記憶の中で一番印象に残っているのが、このお堀越しに眺めた松本城。このアングル、鮮明に記憶に焼き付いています。初めて見た真っ黒なお城。そのカッコ良さに、子供ながらに鳥肌の立つ程の感銘を受けたことを今でも思い出します。
お堀に映る、逆さ松本城。このお城は複雑な形をしているため、移動するごとに新しい表情を見せてくれる。ここから眺めるその姿は凛々しく、戦国時代からこの地に在り続けて来た威厳すら感じさせます。
複雑に絡み合う、幾重にも重なる屋根と破風。これも松本城が様々な表情を見せる要因のひとつ。どの角度から見ても、ある意味正面がくる。僕の受けた感覚では、死角の無い、全部が正面のお城といった印象。どれだけ見ても飽きることがありません。
お堀端のベンチでいつまでも眺めていたい思いですが、もうそろそろ駅へと向かわなければならない時間。後ろ髪を引かれつつも、松本城を後にします。
今一度、振り返りその雄姿を。6月の緑に包まれた黒いお城は、威厳と優美さをもう一度、僕に魅せてくれました。
そのまま駅まで向かうのも寂しいので、バスの時間まで松本市内を散策します。まず向かったのは、松本城の近くに位置する、有名な旧開智学校。門扉の奥の入口に施された、天使などのメルヘン調の装飾がとても印象的。
角度を変えて全体を眺めれば、和と洋が入り混じる独特の外観が目をひきます。洋館風の建物に付けられたバルコニー、その上には唐破風が。日本人の持つ、色々な文化を取り入れ混ぜ合わせる器用さが生んだ美しさ。今のビルには無い優雅さに満ち溢れています。
今回の旅行は、全般的に特に下調べをせずに行ったため、ここ松本も全く事前情報なし。何となく駅の方を意識しつつ、大回りでのんびり歩いてみます。
そこで出会った渋い街並み。フレームの中には、世代や様式の違う様々な古き良き建物たちがぎっしり。思いがけず僕好みの街並みに出会い、歩く足にも力が入ります。
恐るべし、松本の街。歩けば歩くほど、色々な顔を持つ建物が現れる。これほど古い建物が残っているとは知らなかったため、僕にとっては嬉しいサプライズ。旅の最後の最後まで味わえる、今回の行程は理想的でした。
続いてたどり着いたのが、蔵の並ぶ中町通り。地図を持たずただぶらぶらしていたので、これまたこの街並みの出現には驚き。さすがは歴史ある城下町、街並みの懐がとても深い。歩いていて本当に楽しい街です。
様々な蔵がたくさん並ぶこの通り。ひとつひとつ見ていきたいところですが、残念ながら時間が許しませんでした。
今度は松本に泊まってじっくり見てみたい、そんなことを思いながら来た道を振り返ります。今度は真っ白な雪に覆われる冬も良いかなぁ、僕の妄想は膨らむばかり。
残念ながら、ここでタイムアップ。この旅は本当に盛りだくさん、最後の最後まで楽しみ尽くしました。いつもなら若干の憂いを含む気持ちで帰路へと就くのですが、今回は満足感、充足感に満ち溢れ、この瞬間を迎えます。
バスは僕を乗せ、中央道を快調に走ります。
今回の旅は、タイトル通り、やりたいことを結んだ旅。ハタチの時に感動を受けた金沢をもう一度見てみたい。白川郷や高山にも訪れてみたい。奥飛騨の湯に浸かり旨いものを食べ、未だ見ぬ上高地へ。その先には白濁のこれぞ温泉といった乗鞍に、秘湯感あふれる中房温泉。そして、子供の頃に見て以来、脳裏に焼き付き離れない松本城へ。
7泊8日、とてもとても長い時間を掛けて結んだ、僕のやりたいことがぎっしりと詰まったこの行程。いやぁ、本当に満足。楽しかった!このひと言。我ながら、ルートファインディング力に惚れ惚れしてしまう。
旨いものあり、良い湯あり、絶景ありと、五感をフルに楽しませてくれたこの旅路。思えばそのほとんどが美しい山々と共にありました。
金沢行きの車窓から満喫した、日本アルプスや立山、白山。白川郷や飛騨、上高地では残雪の山々に圧倒され、何度その美しさに息を呑んだことか。
そんな旅ももう終わり。車窓からは残雪を冠する南アルプスが消え、雄大な富士のシルエットが。もうここからは慣れ親しんだ道。バスの揺れに身を任せ、流れる景色と共に、この旅の想い出を振り返ります。
8日間の大旅行は、こうしてそっと幕を閉じました。
やりたいことを結ぶ旅。やりたいことが尽きない僕にとって、これこそが旅の衝動の原点。それらがきれいに結ばれたとき、旅は自分にとって最上のものに昇華する。そのことを今一度強く感じられる、そんな旅になりました。
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