急勾配、急カーブの県道をバスに揺られること約1時間、ついに秘湯『中房温泉』に到着
旅行番組で見て以来、ずっと来てみたかった場所なだけに、その嬉しさもひとしお。ここまでの道中も、やっとここまで来られたという感慨を深めてくれます。
中房温泉には本館と新館があり、入り口もそれぞれ異なります。そして僕が泊まるのは、もちろん本館。信州の雪深さに耐えてきた木造建築は、見るからに渋さ満点。
バスの時間上早めに着いてしまいましたが、その旨を話すとチェックインさせて頂けました。お宿の方のご厚意に感謝しつつ古い廊下を進み、指定された部屋へ。
今回は、リニューアル記念プランを申し込んだため、新しい木の香溢れるきれいなお部屋。角部屋なので、窓からは明るい光が差し込みます。
早速浴衣に着替え、温泉めぐりに出発。窓から見えていた古い風情のある建物は国の登録有形文化財だそうで、この宿では計7つの施設が登録されているそう。山に点在する秘湯だけでなく、古くから守られてきた建物も楽しめる、歩き回りたくなる一軒宿。
実際、温泉を巡ろうと思うと歩き回らなければならないのが、この中房温泉。夏油温泉も谷底に湯船があり、おお!と思いましたが、中房温泉はそれどころでは済まなさそう。
早速、浴衣とゴム草履でここを歩くの?という山道に変化。いやぁ、楽しいではないですか。想像以上の展開に、すでのテンションは最高潮。
チェックイン時に渡された案内図を片手に先へと進みます。階段を上がりきると、森の中を緩やかにカーブする道に。
その姿は何となく林鉄跡を思わせるような線形で、林業が盛んだったころは、全国にこんな林鉄がいくつもあったんだろうなぁ、などと思いを馳せながら、爽やかな木漏れ日の中歩きます。
そしてたどり着いた、白滝の湯。こちらが一番山奥に位置し、夕食後は清掃のために入れなくなるというので、一番最初に味わっておくことに。
階段を上がると、掛け流しのお湯を湛える石造りの湯船。山の秘湯を体現したかのような佇まいに、浴衣を脱ぐのももどかしくなるほど。
ずっと来たかった中房温泉での初めての湯。丁度よい温度のお湯に体を沈めれば、お湯と新緑を眩しいほどに纏った光に全身が包まれる感覚に襲われます。この景色は初夏ならでは。
山のいたるところから温泉が湧き、その山全体に渡り展開されている中房温泉。この白滝の湯も宿から10分近くの道のりがありましたが、なにもロケーションのためだけにこの場所に湯船が造られている訳ではありません。
湯船に注がれる源泉は、この山肌の上の方で湧いている模様。岩を滝のように落ちてくる源泉には白い湯の花が付着し、まさに白滝のよう。源泉の位置に合わせて湯船が造られる、なんと贅沢なことでしょう。
のっけから圧倒された中房温泉のスケールの大きさ。白滝の湯を味わい、次の温泉に向かいます。
山全体が宿というのは大袈裟では無く、もらった案内図に書かれた移動に掛かる所要時間も結構なもの。中には運動靴で行かなければならないような場所もあります。
その場所というのが、この焼山。で、何でこのタイミングで写真が来るのか。そう、山道を間違えてここまで来てしまったのです。
道中は本当にハイキング状態で、道も狭く前日までの雨で土も滑りやすい状態。浴衣でゴム草履の僕は、一旦部屋に戻って着替えてからここへ来る予定でした。いやぁ、心細かった。宿で遭難してしまうんじゃないか、熊が来たらどうしよう。不安だらけでした。
一旦迷ったら、素直に来た道を引き返した方が良い。地図が読めると自負する僕ですが、その過信がいけません。秋の土湯で学んだはずなのになぁ。自分の学習能力の無さにがっかりですよ。
それでも、僕がここへ来てみたいと思うようになったきっかけのひとつである焼山を目にし、すっかりご機嫌に。砂地からは蒸気がもくもくと上り、触ると地球の発する熱をダイレクトに感じられます。
ここ焼山では、ござを敷いての地熱浴はもちろん、砂を掘って食材を埋めれば美味しく蒸し焼きにされるそう。宿でも食材が売られているのでそれを埋めて楽しむことができます。
残念ながら、この旅食べてばかりの僕は満腹状態だったので断念。次は連泊し、お昼は焼山料理を食べなければ。また次にここへ泊まりに来る理由が出来てしまいました♪
滑りやすいサンダルに注意しながら、ゆっくり山道を下ります。焼山からの帰路は展望が開け、この清々しい眺め。
この写真だけ見たら、ハイキングの思い出にしか見えません。これがたったひとつの宿の温泉を巡っている道中だと言っても、中房温泉を知っている人でなければ信じないでしょう。
無事に「下山」し、再び宿へ。宿の屋根が見えてきたときは本当にほっとしました。
宿へと戻る道すがら、見慣れない装置がいくつも設置されています。ここ中房温泉の源泉は熱いため、このように源泉を噴水状態にして空冷しているそう。だからこそ、水で薄めることの無い温泉そのままを楽しむことができます。
予想以上にスケールの大きい中房温泉。途中思いがけないタイミングで焼山に行ってしまうというハプニングはありましたが、身を以ってそのスケールを体感しました。
まだこれまで入ったのは白滝の湯だけ。ここ中房温泉にはいくつものお風呂が点在しています。無事に下山できた今、これからが湯巡り本番。待ち構えるお風呂の数々を思う存分楽しんでやることにします。
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