白川郷での穏やかな夜が明け、爽やかなお目覚め。昨日は早めの夕食だったので、もうお腹はぺこぺこ。美味しそうなおかずが並び、お腹が今にも鳴ってしまいそう。
焼き鮭やなめたけおろし、煮物やきんぴらなどのこれぞ和の朝食、という品々。どれももちろん美味しかったのですが、やっぱり飛騨といえば、の朴葉味噌でしょう。こんなの出されたら、ごはんをお腹一杯食べない訳にはいきません。
小さい頃に飛騨を訪れた時に初めて味わった朴葉味噌の美味しさ。ひと口食べた瞬間、当時の記憶が鮮明に蘇りました。なぜこれほど美味しいのだろうか。シンプルな美味しさを、幸せと共に噛みしめてしまいます。
美味しいお食事と、ナイトツアーというかけがえのない時間を味わわせてくれた城山館ともお別れの時間。
こちらのお宿のクチコミでナイトツアーを知らなければ泊まることが無かったと思うと、こんな貴重な経験をさせてくれた偶然に感謝せずにはいられません。そして、もちろん宿の方々にも。本当にありがとうございました。
まだ観光客の姿の少ない、静けさに包まれた合掌造り集落。今日は天気が崩れるようですが、背後にそびえる白さの残る山々はくっきりきれいに見えています。
白川郷は午後の出発予定。それまで、残りの時間をのんびり、ゆったり過ごすことに。やっぱりもう一度、城山展望台から合掌造り集落を望みたいと、昨日とは別の舗装された道をてくてく登ります。
途中、花と緑の額縁に見え隠れする集落を楽しみつつ、再び城山展望台へ。日の加減のせいか、昨日とはまた違った印象に映る合掌造り集落。柔らかい緑に包まれる姿は、新緑の時期に訪れて良かったと心から思わせてくれる美しさ。
今一度、展望台からの眺めを記憶に焼き付け、集落へと戻ります。下へと辿りつけば、茅葺屋根の小屋と、それを彩る紫が鮮やかなあやめ達。
建物だけを敢えて残しているのではない、人々の暮らしの息遣いが伝わってくるかのような白川郷。民家園などでは決して味わえない。「生の集落」の姿が、ここ白川郷の一番の魅力なのでしょう。ここを訪れなければ、絶対に味わえない感覚。
世界遺産、一大観光地のイメージのあった白川郷ですが、お土産屋さんの並ぶ通りを外れれば、地元の人々との距離の近さに驚きます。その分、訪れる側も絶対にマナーを守らなければなりません。庭先を歩かせて頂いているということを忘れずに、邪魔にならないよう歩きます。
そんな人々の暮らしをもう少しよく見たいと、国の重要文化財に指定されている『和田家』を見学することに。江戸時代に名主や番所役人を務めたという、歴史あるお宅です。
拝観料を支払い、早速中へお邪魔することに。現在も住居として使われている合掌造りの内部は、磨かれた木が放つ鈍い光に覆われ、思わず息を呑む荘厳さ。
合掌造りの内部は複層構造。その階を繋ぐ階段は、昔の建物らしく細くて急なもの。今でもここへ暮らし、守り続けることの大変さに思いを馳せながら、ひとつひとつ登ってゆきます。
階段を登りきると、まず眼に飛び込んでくるのが合掌造りの窓から覗く白川郷の姿。昔からの姿を保つ合掌造りの内部から眺める光景は、これまで見た姿とも違った魅力を感じさせます。
後ろを振り返ると、広々とした空間が広がる二層目。屋根を支える太い丸太の数々が目を引きます。
間近で見る合掌造りの骨組み。釘などは一切使わず、丸太と縄といった自然のものだけで組み上げ、豪雪にも耐える強度を備える合掌造り。古くからの人々の智恵と経験が造り上げた独特なその姿は、今でも人々の心を捉えて放しません。
釘を使わず自然の素材だけで巨体を支える合掌造り。その強さの理由のひとつが囲炉裏の煙。一族数十人と大家族の暮らした合掌造りの囲炉裏からは大量の煙と熱気が出ます。それらが木や縄をいぶして乾燥させ、補強や防虫の効果を生むそう。
その熱は収入源として行われていた養蚕にも必要なものだったそう。囲炉裏の上部はこのように格子状になっており、如何に機能的な建物なのかを物語ります。
白川郷の中でも最大規模を誇るという和田家。三層目も覗くことができますが、一番上でもこの広さ。合掌造りの屋根裏がいかに巨大なものかが分かります。
その巨大な屋根を支える丸太たち。それぞれが人の字のように支えあい、豪雪や地震から住人を守ってきました。
内部を見終え、もう一度合掌造りの大屋根の軒下から眺める白川郷。合掌造りには顔があるというように、中を見るとより一層ただの建物、家だと思えなくなる。
これを造り上げた人々の智恵と力と、そこへ住まい守り続ける人々。そんな人々の想いが染み込み、建物までもが息づいているかのような合掌造りに触れ、白川郷を訪れることができた喜びを今一度噛み締めるのでした。
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