干支を一周し、ちょっとだけ大人になった僕に、さらなる魅力を教えてくれた金沢の街ともお別れのとき。この旅行、金沢ありきで行程を組んだため、既にメインディッシュのひとつを平らげてしまったかのようなちょっとした寂しさを覚えます。
それでも、この先にはまだまだ見たいものが沢山待っている。今回の旅のテーマは、今自分がやりたいことを繋いで結んでゆくこと。まだ見ぬ旅路への期待を胸に、バスへと乗り込みます。
金沢駅前のバスロータリーから、『北陸鉄道』と濃飛バスが共同運行する白川郷・高山線に乗車。要予約なので、行程が決まったら『発車オ~ライネット』で予約をした方が良いでしょう。切符の受け取りは駅前の案内所でできます。
次なる目的地白川郷を目指し、のんびりバスに揺られます。先ほどお昼を食べたお寿司屋さんの板前さん曰く、今走る東海北陸自動車道が開通するまでは、白川郷は本当に遠いところだったとのこと。今では1時間とちょっとで金沢から訪れることができます。
まだ見ぬ白川郷。眼前に見え隠れする残雪をかぶった山に、膨らむ期待を抑えることができません。
金沢からバスに揺られることたったの1時間と少し、あこがれの地である白川郷に到着。早速大小さまざまな合掌造りの建物たちがお出迎え。ここで降りる人、高山へ向かう人、それぞれがその光景を目の当たりにし溜息を漏らします。
バスの到着した場所は、せせらぎ駐車場という大きな駐車場の一角。駐車場の脇に架かる長い吊り橋を渡り、いよいよ合掌造り集落の中へと向かいます。
先ほど目にした合掌造りだけでもかなりのインパクト。この先、人々の暮らしに溶け込む「生」の合掌造りが観られるかと思うと、弥が上にも胸は高鳴るばかり。
逸る気持ちを何とか抑え、景色を楽しめるよう努めてのんびり歩きます。吊り橋を渡り切って振り返れば、そこには建ち並ぶ合掌造りと、それを見守るかのような初夏の雪山。
いよいよ合掌造り集落、荻町へと入ります。
今回は結論から先に。僕にとってここ白川郷を包む空気感は圧倒的なものでした。感動に次ぐ感動で、一体どう表現して良いのか分かりません。なので、これからしばらくは、写真を主体にお伝えしたいと思います。
鮮やかな紫と合掌の競演。この時期ならではの美しい山里の風景。
合掌造りは、ひとつひとつ「顔」を持つという。それぞれ違う表情を見せるその顔は、見る者に何かを訴えかけるかのよう。
長きに渡りここに佇む合掌造りと雪をかぶった山。昔話の絵本から、そのまま切り取られたような世界。
いくつも並ぶ大小さまざまな合掌造り。その用途も様々で、古くから人々の暮らしと密接にかかわり続けてきたことが窺えます。
渋い佇まいの合掌造りに、彩りを添える畔に咲く花。風に吹かれるその姿は、揺れる速度まで心なしかのんびりしています。
並んで建つ大きな合掌造り。比べてみても、やはり違った顔を持っています。
茅葺の特徴的な鐘楼門を持つ明善寺。初めて見る独特の姿に圧倒され、しばし言葉を忘れ見入ります。
鐘楼門と共に、茅葺の屋根を持つ大きな本堂。江戸時代に建てられたという2つの建物は、白川郷の歴史を見続けて来たに違いありません。
僕のお気に入りの一枚。これがセットでもテーマパークでもなく、紛れもない現役の集落であることが信じられないほど。
季節は丁度田植え前。田んぼに張られた水に映る逆さ合掌は、この時期にしか見ることのできない貴重な姿。
仲良く3軒並ぶ合掌造り。真ん中の家の屋根は葺きかえてまだそれほど経たないのでしょう、明るい色をしています。
合掌造りの軒下をちょと拝見。分厚い茅葺の屋根と、それを支える丸太組み。木、茅、紐と言った自然の素材だけで、白川郷の厳しい冬を乗り切る合掌造り。古くから受け継がれてきた人々の智恵が詰まっています。
水田と、それを囲むように建ち並ぶ合掌造り。ここだけ時が止まったような集落の姿。奇跡の集落、そのひと言に尽きます。
合掌造りとトラクター。山里のイメージを具現化したような長閑な一枚。
訪れたものにとっては新鮮で、感動を覚える白川郷も、ここの方々にとってはごく当たり前のふるさとの姿。飾らずに暮らしに溶け込み残される姿に、人々の注いできた愛情が伝わってきます。
ここに紹介しきれないほど写真を撮った白川郷。そのひとつひとつが絵になり、記憶に残る姿に感動しきり。そんな白川郷を一望のもとに収めようと、荻町城跡に位置する城山展望台を目指します。
2つある徒歩ルートのうち、健脚向きの山道を登ること10分程。息を切らせつつ視界の開けたところへと進めば・・・。もう説明不要、いや、不可能なこの眺め。
この感動は、言葉でも、写真でも決して伝えることは出来ません。実際に訪れ、合掌造りに触れ、白川郷の空気に包まれて初めて味わえる、圧倒的なその力。自然と、歴史と、人々が造り上げ守り続けて来た大切なものが、この眺めに凝縮され詰まっています。
写真では良く目にした展望台からの眺め。実際に訪れてみると、それまでテレビや写真で見てきた美しさなんて視覚的なものだけだったということを、改めて思い知らされました。
身体の様々な感覚から伝わってくる白川郷の魅力。その感触があって初めて感じることのできる、この土地の美しさ。本当に来て良かった。心から満たされる感覚に包まれ、展望台を後にします。
下山途中、葺き替え中のおうちが。こうやって、昔から人々に手を掛けられ、愛情を注がれてこの集落は守られて来たのでしょう。だからこそ、他には無い唯一無二の美しさ、空気感に満ち溢れている。白川郷は、そんな不思議な魅力に包まれていました。
明るいうちの白川郷散策はひとまず終わり。すぐ近くにある今宵の宿をめざし、山道を下ります。
白川郷泊を決めた一番の理由、メインイベントまであと少し。白川郷での夜はただでは終わりません。その時を心待ちにし、軽い足取りで坂を進むのでした。
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