大王わさび農場を訪れたら食べておきたいのがこれ、わさびソフト。初めてここへ来た際に食べて以来、すっかりお気に入りの逸品となりました。
視界を埋め尽くす、木々と水草の若い緑と調和するかのような、薄緑色をしたソフトクリーム。一口頬張れば、ミルクのこくと共にわさびの心地よい青い香りが広がります。
こちらのわさびソフトは本当に美味しい。わさび製品にありがちな辛味を前面に押し出したものでは無く、わさびの香りを主体に楽しませてくれるこの味は、ここならではの美味しさです。
新緑の中爽やかなわさびソフトを楽しみ、再び自転車で走りだします。進は田植えしたばかりの田んぼの中を進む一本道。その先には雪を残す高い山々が雲の合間に見え隠れ。あぁ、本当に気持ちが良い。
貸し自転車屋さんでくれた地図を頼りに、電車までの時間に丁度良さそうなコースをのんびり走ります。
途中、マップに描かれた道祖神を発見。以前ドラマのロケ地になった道祖神のようで、水色の時道祖神と名付けられています。
安曇野と言えば、わさびと、そばと、道祖神。小さい頃から抱いていた信州安曇野のイメージの代表である道祖神との対面に、何となく心が温まるような感覚を覚えます。きっと、仲の良さそうな柔和な表情をした道祖神と、その背景に広がる信州の雄大な自然がそうさせるのでしょう。
田んぼとわさび田がいくつも並ぶ道を抜け、穂高川の堤防へと上ります。そのまま気持ちの良い川沿いを進むと、すぐに大きな石碑が目立つ場所に到着。早春賦公園と名付けられたこの一角は、その名の通り、唱歌の早春賦の歌碑が置かれています。
誰もが耳にしたことがあるであろう早春賦は、ここ安曇野の遅い春を待ちわびる心を歌ったものだそう。すでに桜の時期は過ぎていますが、残雪の山々とまだ若い緑に包まれる安曇野の空気に触れ、穏やかで郷愁を誘う歌詞とメロディーが、自分の中で一層具体性を増してゆきます。
穏やかに滔々と流れる穂高川。その先には日本アルプスの山並みが広がり、サイクリングをするにはこの上なく爽快な場所。大海原も眺めとして好きですが、僕はきっと山を望む場所が好きなんだろうなぁ。こんな眺めはいつまで見ていても飽きることがありません。
日本の故郷、言い古された言葉でしょうが、そんな表現がぴったりなこの空気感に、心の底から癒されてゆくのを感じます。
さらさらと流れる穂高川に別れを告げ、穂高駅を目指して市街地へと戻ります。途中では、立派な蔵の前にこれまた立派な石塔が並ぶのを発見。道祖神の他に、庚申塔、二十三夜燈と並んでいます。
これまで安曇野へは数度来たことがありましたが、どれも車で来るばかりで、道祖神を見ることはありませんでした。今回、電車を1本遅らせて本当に良かった。自転車でのんびり走れば、安曇野の自然だけではなく、古くからの人々の暮らしが胸の奥へと沁みてゆきます。
予定になかった安曇野サイクリング。ほんの1時間程度の短いものでしたが、雄大な景色と優しい表情を浮かべる道祖神に触れ、安曇野ののんびりとした空気を存分に胸に吸い込みました。
次は最後の目的地である松本へ。大糸線にのんびり揺られつつ、安曇野に別れを告げるのでした。
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