初めての上高地と、初めての河童橋。これまで見たことのない大自然の姿に感動しつつ、付近をのんびり散策したところでお昼を食べることに。今回は河童橋のすぐ目の前に位置する『河童食堂』にお邪魔。
おそばや山賊焼といった長野名物が並ぶ中、何となく惹かれて注文した豚汁定食。この食堂を運営する五千尺ホテルの創業当時からの味を引き継いだメニューと謳うだけあり、見るからに具だくさんで美味しそう。
早速おつゆを飲んでみると、これぞ豚汁というほっとするような温かみのある美味しさ。豚や野菜から出た旨味やコクが、信州の味噌と合わさり説明不要の旨さ。
上高地からアルプスへ向かう人、アルプスから上高地へ戻ってきた人、そんな人々の身体と心を昔から温めてきたことでしょう。シンプルだけど美味しい。これとご飯があればもう何もいりません。
そして豚汁を一層美味しくしてくれるのが、この景色。窓側にはカウンター席がずらりと並び、そこへ腰掛ければ目の前には河童橋と残雪を抱く山が一望のもとに。
この景色を眺めながら食事が出来る、それだけでもここへ来た甲斐があるというもの。贅沢この上ないロケーションにうっとりとしてしまいます。
美味しい豚汁でお腹の底から温まったところで、再び河童橋周辺の散策開始。今度は梓川上流方面へと足をのばしてみることに。
梓川本流は降り続く雨に濁ってしまっていますが、そんなことは無関係と言わんばかりに思い切り澄んだ水を注ぎこむ、大きな支流を発見。その清冽な流れに誘われるように、その流れに沿って舵を切ります。
橋の上から下を覗けば、一面に広がり流れに身を任せる水草の群れ。きつねのしっぽを思わせるようなしなやかなその姿に思わず釘づけ。絶えず形を変える緑のビロードを眺めていると、底のさらに奥へと吸い込まれてしまいそう。
雨が降っていることなど全く感じさせないほどに澄んだ流れ。川底のすべてが見えるほど水は清らかさを極めています。
澄み切った流れの下に描かれた、水草と川底の岩の織り成すマーブル模様。川面からは川霧が立ち上り、その奥には白い残雪が。下界とは季節が違うことを実感させます。
今日の天候では清らかな流れを見ることは出来ないだろうと諦めていたところに現れたこの流れ。
偶然見つけたその流れを辿るうちに、どんどん緑と川霧は濃くなり、得も言われぬ幻想的な世界へ。最後の最後に上高地の清らかな水の姿を見せてくれたこの川に、何となく誘われたような不思議な気持ちに満たされるのでした。
人通りも少なく、水と雨と木々の葉の音のみに包まれた不思議な一角。迷い込むようにして足を踏み入れたその地で、思い描いていた上高地の清らかな流れと出会うことができました。
もうすぐバスの時間。そろそろターミナルへと戻らなければなりません。その前に、もう一度上流側から河童橋を眺めます。
そして今一度、この雄大な眺めを目に焼き付け、この地を去ることに。
ずっと、ずっと憧れ続けて来た上高地。僕の初めての上高地は雨に濡れた姿の想い出となりましたが、その分緑は活き活きと輝き、川霧に包まれた幻想的な姿を思う存分楽しむことができました。
山登りをしない僕にとって、この地で見たもののすべてが新鮮ですべてが美しい。ありがたいことに、新宿からここまでバス一本で来ることができるという便利な立地。こうなったらやっぱり晴天の清々しい上高地も見てみたい。この日の景色が胸に焼き付くと同時に、リベンジへの想いが胸に湧き上がるのでした。
コメント